魔獣肉を食べてみようと思います
ジビエ食べてみたい
月日は流れ、セレスト・エヴァ・シャロン、六歳になりました。
珍味が食べたい今日この頃です。というわけでジビエ求む。この世界のジビエと言えば魔獣肉。きちんと処理すればかなり美味しく保存も利くとのこと。
猟師さんたちは、魔獣肉を日々の糧とし、皮や骨、魔石と呼ばれる魔力の詰まった…内臓にあたるのかな?そんな感じの石を売って生計を立てている。ただ、自分達の必要な分だけを狩るので魔獣肉が市場に出回ることはあまり無い。
だからジビエはとても高価なのだけれど…私にはお小遣いがたくさんあるので問題ない!
ということでシャロン家の領内の一番魔獣がはびこる区域にお触れを出した。今なら少しの間だけ、通常の三倍の値段でジビエを買い取る、と。
結果、お触れを出した区域…フォルクロール村にシャロン家の領内に住む猟師が集まり我先にと魔獣を狩りまくったらしい。おかげで今まで放置されて増えすぎた魔獣が本来の適切な数まで減り、魔獣の被害が減ったとか。ジビエを食べたかっただけなんだけど、なんか役に立った様子でなによりです。
で、魔獣肉が我がシャロン家に適切に処理され保存も利く状態にされて運ばれてきたんだけど、これがすごい量。しばらくは食事がジビエ祭りになること間違いなし。
せっかくなので、リシャール様とフェリベール様、パトリックとアンナ、イネスも呼んでみんなでジビエ料理の食べ放題をやることにした。
「ご機嫌よう、素敵なお嬢さん。今日はお誘いありがとう」
「よう。今日はお誘いありがとな」
「リシャール様、フェリベール様、ご機嫌よう。こちらこそお忙しい中、来てくださってありがとうございます」
「セレスト。自腹を切ってフォルクロール村の魔獣問題を解決したんだって?さすがは僕の将来の花嫁だ。よく頑張ったね」
リシャール様に頭を優しく撫でられる。そんなつもりでやったわけじゃないけど、褒められるのは嬉しい。
「あ、ありがとうございます…」
褒められてほわほわしていると、後ろから声を掛けられた。
「セレスト、今日はお招きありがとう!」
「パトリック!こちらこそ来てくれてありがとう!ゆっくり味わっていってね!」
「ジビエなんて初めてだよ、楽しみ!」
パトリックと話していたら、ちょうどアンナも来てくれた。
「お嬢様、お招きありがとうございます!」
「アンナ!ジビエ美味しいらしいよ!いっぱい食べよう!」
「はい!」
ふと視界が暗くなる。手のひらで目を覆われたみたい。
「…だーれだ」
「イネス!」
「正解!」
「来てくれたんだね!ありがとう!」
「こちらこそお招きありがとう!ジビエ楽しみだね!」
「ね!」
みんなとわちゃわちゃしていると、シリルが私のドレスの袖を引っ張った。
「お姉様…じゃない、姉上。僕もいますよ?」
「うんうん、シリルはいい子だね」
なでなでと頭を撫でると嬉しそうなシリル。可愛い。
「お嬢様、準備が整いました」
「いつでも食べ放題を始められますぞ」
「お嬢様。楽しんでね」
リリーとプラム、グレイが知らせてくれる。では早速!
「これより食べ放題を開始します!みんな大いに楽しんで味わっていってください!いただきます!」
「いただきます!」
みんなでジビエ料理を囲む。いやぁ、美味しい。お金をかけた甲斐があった。
「美味しいね、セレスト。…ああ、口元にソースがついているよ。仕方のない子だね。貸してごらん」
「は、はい」
リシャール様がハンカチで私の口元を拭ってくれる。
「よし。これで大丈夫だよ」
「ありがとうございます、リシャール様」
「可愛いセレストを見られたから、役得さ。気にしなくていいよ」
ウィンクするリシャール様。やっぱりメインヒーローだけあるなぁ。かっこいい。
「セレストー、これも美味いぞ。食えよ」
「フェリベール様、ありがとうございます!」
フェリベール様が私のお皿にお肉を盛る。それはもう、盛る。しかし私も負けじと食べる。
「おーおー、いい食いっぷり」
「フェリベール様も食べて食べて!」
「おう」
フェリベール様のお皿にもお肉を盛る。食べ放題だからね。いっぱい食べよう。
「パトリックは食べてるー?」
「食べてるよー。これ美味しい!最高だね!」
「わかるー!こっちもおすすめ!」
「じゃあ食べてみようかな!」
パトリックももしゃもしゃ食べる。いい食べっぷり。ぐっど。
「アンナ、どう?美味しい?」
「は、はい。とっても美味しいです!」
「でも、あんまり食べてないね?大丈夫?」
「あ、すみません。あの、皆様の笑顔を目に焼き付けて油絵に挑戦したくて。ジビエはとても美味しいです!もっと食べますね!」
「そっかそっか。油絵、楽しみにしてるね!」
「はい!」
アンナの笑顔はやっぱり可愛いなぁ。
「イネス、真顔で食べてるけど美味しい?」
「美味しい。小説の参考になりそうだから、覚えておこうと思って」
「あー。研究熱心だね」
「これでもお抱え作家ですから」
むん、と胸を張るイネス。可愛い。
「グレイとリリーとプラムも後でゆっくり食べてね」
「ええ。他の使用人達と共に楽しませていただきますね」
「ありがとうございます、お嬢様」
「お嬢様は本当に優しいですなぁ…プラムはとても嬉しいですぞ」
こうしてジビエの食べ放題は大成功!いやぁ、有意義なお金の使い方が出来て何よりです。
牡丹鍋やりたいなぁ