*私を見つけてくれた人
友達がまた一人
私の小説を見つけてくれた彼女に、私は全力で応えよう。
イネス・バルバラ・ベルナデット。子爵令嬢である私は、アマチュア小説家として活動している。今は幼さ故かまだあまり売れていないけれど、逆にその年齢から物珍しさで注目されることはある。ただ、実力を評価される機会には恵まれていない。
そんな私に、小説家として用があると声を掛けてくれたのは、シャロン公爵家のご令嬢であるセレスト・エヴァ・シャロン様。仲良くしてくださるだろうか?
「ご機嫌よう、イネスさん。セレスト・エヴァ・シャロンです。今日は来てくれてありがとう」
「ご、ご機嫌よう、セレスト様。イネス・バルバラ・ベルナデットです!」
「本題に入る前に、まずは紅茶でも飲みませんか?お茶菓子もありますよ」
「は、はい!」
それからしばらく、紅茶を飲みつつお茶菓子を摘みながらお話しする。紅茶のカップが空になる頃には、私達はすっかり打ち解けていた。
「それでね、イネス。実は私、貴女に書いて欲しいお話があるんだけど。あ、もちろんお金は充分払うよ?これくらいでどう?」
セレストは私にお金の入った袋を渡す。中身を確認すると、私は目を丸くした。
「え?こんなに…!?つ、つまり、私をお抱え作家にっ…!?」
「そう。どう?」
「…いえ、お断りします」
今度はセレストが目を丸くする番だった。
「え、ごめん、お金足りなかった?」
「違う。そうじゃないの。セレストとお話しして、セレストが優しいのはわかった。けど、同情されてお抱え作家になるなんてやだ。今は売れないけど、いつか実力で成り上がってみせる。だから、今回はごめんなさい」
頭を下げる私。しかし、私はセレストを見縊り過ぎていたようだった。
「ねえ、イネス。私、イネスに声をかける前にちゃんとイネスの小説を読んだんだよ」
「え?」
「すごく面白かった」
「あ、ありがとう、セレスト。それはすごく嬉しい。でも…」
「聞いて、イネス」
「…」
好きなシーンや感動したシーン、思わず泣いちゃったシーンなど。私の小説の、特にお気に入りの本について語るセレスト。セレストは私の小説を好きになったから声を掛けたんだよ、と私に気付かせてくれた。
「…本当に、読んでくれたんだ。それも流し読みじゃなくて、何度も繰り返し読んでくれたんだね、セレスト」
「うん。すごく面白かった。だから、イネスに私のお抱え作家になって欲しい。私の好みの小説を、イネスに書いて欲しい。だめ?」
「…わかった。私頑張る!頑張ってセレストの理想の世界を忠実に再現して見せる!」
「イネス、ありがとう!」
「セレストこそ、ありがとう!」
こうして私はセレストのお抱え作家になった。彼女の望む以上の小説を書いて、彼女に恩返しできるよう努めよう。私は固く誓った。
またセレストの周りが賑やかになりました