奴隷の子を見つけました
暴力良くない
ある日、私とシリル、リシャール様とフェリベール様、パトリックのいつもの五人で屋敷の外で遊んでいると、奴隷の子供がおそらくご主人様であろう大男に思いっきり殴られるところを見つけてしまいました。リリーとプラム、リシャール様とフェリベール様とパトリックの侍従は私達の目を塞いでさっさと別の場所に移動しようとしましたが、私は暴れてリリーの手を抜け出します。それに気を取られた侍従達から、シリルとリシャール様とフェリベール様とパトリックも抜け出します。
「お嬢様、いけません!」
「坊ちゃん、危険ですぞ!」
「リシャール様、いけません!」
「フェリベール様!戻ってください!」
「パトリック様、お怪我をされては大変です!どうかおやめください!」
私はおそらくご主人様であろう大男と奴隷の子供の前に滑り込みます。シリルとリシャール様とフェリベール様とパトリックもそれに続きます。大男は一瞬目を点にしますが、私達の格好を見て貴族の子供だと分かったのか横柄な態度は取りません。慎重に、私達の機嫌を損ねないように話しかけてきます。
「すみません、お貴族様。それはうちの奴隷でして、躾をしなければならないのです。どうか見逃してはいただけませんか?」
リリーとプラム、リシャール様とフェリベール様とパトリックの侍従が私達を庇うように前に出ます。
「大丈夫です。なにも俺はお貴族様に逆らおうなんざ思っていません。お貴族様にはなにもしませんよ、本当です」
へらへらと笑う大男に、リシャール様が言います。
「へえ。僕達に逆らわない、というなら、この奴隷の子供に暴力を振るうなと命令すれば手を出さないのかな?」
「え?…え、ええ。もちろんですとも。ですからあまり大ごとにはしないでいただきたいです。どうでしょう?」
フェリベール様が鼻で笑います。
「うそつけ。俺たちが居なくなったらまた暴力を振るうんだろ。それとも、それよりももっと酷い仕打ちをする気か?」
「い、いえ。そんなつもりはありませんよ、はい」
そんな不毛な会話をしている私たちの後ろで、奴隷の子は瞳を揺らして震えていた。私は羽織っていたカーディガンをその子に被せる。彼は私を見つめる。奴隷の扱いなんて、どこでもこんなものだろう。氷山の一角でしかなくて、この子を助けても別の子が代わりに迎えられるだけだろう。けれど、だからって、手が届く範囲にいる子を見捨てたら…貴族として生まれた意味がない気がする。
「…買います」
「え?」
「この子を、私が買います」
セレスト、思い切ります