婚約者の弟が意地悪を言うので喧嘩しました
可愛い喧嘩
今日は王宮でのお勉強はお休みの日。…なのですが、なぜか第二王子殿下が我が家に遊びに来ました。
フェリベール・レノー・イストワール。金の髪に深い青の瞳の第二王子。乙女ゲーム『聖女は星の夢を見る』の攻略対象。リシャール王子とは腹違いで同い年。側室の子なので王位継承権は低い。本来なら、兄と婚約していながら自分に粉をかけてくるセレストを忌み嫌う。基本的にツンデレ。…らしいのだが、どうして自分から私のところにくるのです?
「お前!聞いたぞ!テストで全教科満点だったらしいな!」
「魔術学以外は、まあ」
「ズルしたんだろう!」
「…はい?」
「その歳で貴族学園卒業生レベルの知識があるとかおかしいだろ!正直に答えろ!」
「いや、してませんけど」
するわけないでしょ?何言ってるの?あんたのお兄様は素直に私を褒めてくれましたけど?だいたい急にやらされたテストでズルってどうやんのよ。
「俺は頑張って頑張って、それでも兄上に及ばないのに!お前なんかが兄上より優秀だなんて絶対に嘘だ!」
「…そう、そこまで言うならなにか問題を出して見なさいよ」
「は?」
「魔術学以外はどの教科でもいいわよ。複合問題でもよし。さあ、かかってきなさい!」
「…っ!じゃあ、じゃあこの問題は!?」
ー…
「…気が済みました?」
「嘘だ…本当に貴族学園でのテストの問題も解けるなんて…」
「だから言ったでしょうに」
「…るかった」
「え?」
「悪かったな!勝手に勘違いしていちゃもんつけて!」
悔しくて涙目になりながらも、しっかりと私の目を見て謝るフェリベール様。…うーん、もう一声!
「ごめんなさいは?」
「…ごめんなさい」
よし!
「大丈夫です。私、もう気にしてません」
「え?いや、でも、俺が悪いのに」
「今回のことは水に流しましょう。それより、私とお友達になってくださいませんか?」
「…いいのか?俺はいつも事あるごとに兄上に突っかかって、兄上から嫌われてるぞ?」
「おや、僕がたった一人の可愛い弟を嫌ったって?それは初耳だなぁ」
「…兄上!?」
突然のリシャール様の登場に驚くフェリベール様。私は私でびっくりです。
「フェリがシャロン家に向かったと聞いて急いで馬車を出したんだ。セレストに迷惑をかけるんじゃないかなと思ってね。でも、もう遅かったようだけど」
「はい。解決しちゃいました」
「あはは。さすがはセレスト。…フェリ、お前とは一度きちんと話をしないとね」
「…なんだよ」
「フェリ。まず一つ言っておくが、お前は無能なんかじゃない。お前はきちんと努力しているし、その歳にしては非常に優秀だ。ただ、兄である僕が余りにも才能に溢れるから霞んで見えるだけだよ」
「…それ、自分で言うか?あと、霞んで見えるのが俺は嫌なんだよ!」
「なら今以上に努力する他ない。それは僕とフェリの問題ではなく、フェリの問題だ」
「…っ、わかってるよ、わかってる!だから俺はいっぱい努力して!」
「けれども、だからこそセレストの才能に嫉妬して今回、セレストに迷惑をかけてしまったんだろう?それはいけないことだね?」
「…うん、それは反省する。もう短気は起こさない」
「それはいい心がけだ。…フェリ。よかったら僕が勉強を手伝おうか」
「…は?」
「僕ならフェリが躓くところをきちんと理解してわかりやすく教えてあげられるし。ほら、今フェリについてる先生ってさ、ちょっと説明が下手くそじゃない?」
「…まあ」
「もしかしたら、外野から僕のおかげだなんて言われる可能性も無くはないけど。それでもよかったら、フェリの才能を伸ばしてあげる。どうする?」
「…兄上を超えるような素晴らしい王子になるために、兄上を利用してもいいか?」
「もちろん。思う存分僕を利用しなさい」
リシャール様が微笑み手を差し伸べると、フェリベール様はその手を取り深い握手を交わした。なんか知らないけど、仲直りできたならよかったね?
基本的に良い子ばかり




