☆第十四章あらすじ☆
今回の内容は、セプテム大陸に向かう道中である、海の中での話を中心とする。
出立の日、俺たちは父さんたちと最後の別れを告げた。
餞別として二十四金の金塊を貰い、女性陣は金塊に興味深々だった。
ヤッホー!これで豪遊して遊びまくれる!…………そんな風に能天気に考えられたのならよかったのだが、実際はそんな気持ちではない。
形のある資産はありがたかったのだが、金の扱いはデリケートだ。
国の情勢によっては価値がゼロとなることもあり、換金する際にはタイミングが最も重要となる。
ありがたいが、せっかく金をくれるなら、紙幣のほうがよかった。
まぁ、もらえるだけありがたいことだから、文句は言えない。
金塊入りの麻袋をアイテムボックスの中に入れると、ラ・シャリテの岬に向う。
道中の平原でジルとランスロットと合流して灯台を目指す。
歩いていると、大きな船が見えた。
船首は母さんがモデルとなっており、名前もその見た目どおりアリシア号という。
父さんの母さんへの愛が形となっており、なんだか気恥ずかしさを覚えた。
船に近づくと、甲板で働いている人に声をかけるが、誰も振り向いてはくれない。
チッ、無視かよ。
王子の言葉を無視するとはいい度胸だ。
あとでお灸のひとつでも据えてやろう。
どうやって声をかけるのかを考えていると、後ろから声をかけられ、俺は振り向く。
そこにはスキンヘッドの男が立っていた。
太陽の光に頭部が反射し、眩しかった。
正直直視できない。
禿と太陽光のコンビネーションは、目くらましにはちょうどいい天然の武器になり得る。
彼に近づいたことで、太陽光の反射する角度が変わったようで、眩しさは軽減された。
しかし、彼の頭は光輝いていることには変わらない。
俺は失礼だと思いつつも、笑いが込み上げて我慢することで必死だった。
スキンヘッドの男の名はフォーカス、アリシア号の船長だ。
お互いに自己紹介をすると、船に乗せてもらい、寝室に案内される。
父さんの趣味で、寝るのはベッドではなくハンモックとなっていた。
カレンの実家で暮らしていたときに、時々使っていたこともあったので、寝ることに対しては抵抗がなかった。
進路についての説明をフォーカスさんから聞くと、そのまま真直ぐに進むのではなく、迂回して大陸の北側から上陸することになっている。
その理由を尋ねると、普通の進路ではガリア国の兵士に見つかり、攻撃をされるおそれがあるかららしい。
説明を聞き、俺は納得した。
しかし、セプテム大陸の北側にある森は、エルフの森と呼ばれ、エルフたちが暮らしている。
迂回するだけなら、別に北側ではなくともいいのではないかと考えたが、それにもちゃんとした理由があった。
エルフは長寿で、長年蓄積された知識も豊富だ。
彼らから話を聞き、セプテム大陸の魔王の情報を得ようというのも含まれている。
上手く交渉できるだろうか。
ちょっとした不安に駆られていると、アリスがエルフに知り合いがいることを教えてくれる。
彼女がいて助かった。
これなら特に問題なく無事に交渉できるだろう。
当時の俺はそんな風に楽観視していた。
エルフたちの抱えている問題に、巻き込まれるとも知らずに。
エミがエルフの特徴についてアリスに尋ねた。
彼女は特徴を上げると、どうやらエミのいた世界に伝わっているエルフと同じようだ。
エミがアリスにお礼を言うと、今度は俺に対して、どうしてエルフは長寿なのかを聞いてきた。
いきなり質問の矛先が俺に向ってきた!
急な質問に俺は焦る。
別に知らないわけではない。
知識はもちろんあるが、上手く説明できる自信がなかったのだ。
そのことをエミに話すと、彼女は説明が下手でもいいから教えろと言い、エミの含みのある言い方に、カレンとレイラが対抗してきた。
別に張り合うようなことではないと思うのだが。
こうして、第一回誰が俺の説明を一番理解し、わかりやすく説明できるのか大会が開催されることになった。
え?何だよそんなふざけた大会は!って?
そんなこと俺が知るわけがないだろう!
命名はアリスだ!
だけど彼女には文句を言うな!
俺が許さん。
そんな訳で意味不明な大会が幕を開け、審査員と参加者の説明が行われ、俺はどうしてエルフは長寿なのか説明をした。
説明が長くなるし、書くのも面倒臭いので、その説明は今回省略させてもらう。
気になった人は個人で勉強してくれ。
因みに今回エミたちに説明したものは、必ずとも事実とは限らない。
様々な資料を集め、得た知識を総合的に考えて導き出したものに過ぎないのだ。
そもそもエルフに関して研究をしている学者が少なすぎるんだよ!
誰か知っている人がいたら紹介してくれ!
とまぁ、この話は置いておくとして、話を戻すが色々とあった結果、優勝候補のエミが優勝をした。
まぁ、最初から分かりきっていたけどね。
大会が終わったと判断したフォーカスさんはこの場から離れていく。
しかし、アリスからしたら、まだ第一問が終わったばかりだったらしい。
因みに第二問はエルフの耳はどうして長く尖っているのか、第三問はどうして女性のエルフの胸は控えめなのかというものだったらしい。
そのことを聞き、途中退席してくれたフォーカスさんには感謝した。
耳のことならともかく、胸に関して真面目に演説していては、皆から変態扱いされるかもしれないからだ。
そんなことを考えていると、エミが目の前に現れて俺の顔を覗き、何か変なことを考えているのではないかと言い出した。
別に変なことは考えてはいない。
女性エルフの生態について考えていただけだ。
それなのに、エミは俺が答えないことを理由に『失神魔法にする?認識阻害の魔法にする?それともせ・き・か』と言い出し、俺は瞬時にエルフの女性のことを考えていたことを告げる。
何だよその選択肢は!
新妻の御飯にする?お風呂にする?それともワ・タ・シ!的なノリで言うなよ!
しかも正直に答えたにも関わらず、エミはご褒美として俺に石化魔法をかけようとするし!
そんなのご褒美ではなくてただの罰じゃん!
そんな目に遭っていると、俺が女性エルフのことを考えていたことが女性陣に伝わり、皆の威圧に負けて俺は正座をするはめになった。
俺、何も悪いことはしていないのに。
これを読んでくれているあなたには、この理不尽さが分かってくれるだろうか?
え!リア充爆発しろだと!
あなたまでそれを言うのか!
俺に味方はいない……とほほ。
まぁ、こんな感じになっていると、俺はもっと詳しく、先ほどされなかったお題の回答を考えていたことを伝える。
すると、カレンとエミがエルフの胸が小ぶりな理由について興味を持ちだした。
どうしてそこまで気になるのだろうか?
彼女たちは後学のためだと言っていたが。
質問されたのなら答えないわけにはいかない。
俺はエルフの胸が小ぶりな理由を教えると、カレンは小声で何かを呟く。
本当にあのときは、何を言っていたのだろうな。
そんなやり取りをしていると、ライリーがいきなり俺の性癖について聞いてきた。
彼女は、誰の胸が好みなのかを把握していれば、夜間に襲われる対象から外れて安心できるからだと言ってきたが、そもそも誰も襲いはしない。
もし、そんな甲斐性があったのなら、今ごろ俺はⅮTではないはずだ。
しかし、そんなに信用がないのか、女性陣たちは俺の性癖を聞きだそうとしてくる。
正直、俺の好みの胸に近い人物はいる。
だが、バカ正直に答えるわけにはいかなかった。
俺の性癖を知られれば、冒険するうえでの人間関係に支障が出そうな気がしたからだ。
どうにか抜け道がないかを模索していると、いいアイディアを思いつく。
これなら平和的にことを治めることができるだろう。
俺は覚悟を決めたように装い、虚偽の性癖を暴露した。
『胸ならどんな大きさでも好きだ!』
声を大にして叫ぶ。
これなら誰にでも当てはまり、誰にも当てはまらないという状態へと持ち込むことができる。
そう思ったが、何故か女性陣が白い目で俺を見てきた。
そして各々に俺を罵倒してくる。
いったい何が悪かったんだ?
今の回答では皆納得してくれないのだろうか。
彼女たちの言葉のひとつひとつが、俺の胸に突き刺さり、心が折れそうになる。
このままではいけない。
そう考えた俺は正直に答えることにした。
背に腹は代えられない。
この先どうなろうと神様の導きのままに従うまでだ。
『小さいのよりも大きい胸が好き!』
大声で答えるも、どうやらテンパっていたようで、肝心な部分が抜けていることに途中から気づく。
本当は『小さいほうが好きだが、気持ち程度大きい胸がちょうどいい感じで好き』と言いたかった。
何?よく意味が分からないって?カップで説明してくれって?
はいはい、わかった。
俺が好きな胸はおそらくⅮカップだ!
そもそも、どうしてⅮカップなのかと言うと、前に大人のおもちゃ屋さんに行ったことがあるのだが、そこに本物のおっぱいに近づけたおもちゃのおっぱいが展示されてあったのだ。
CカップとHカップのサイズがあり、俺は引き寄せられるかのようにおもちゃのおっぱいに触れてしまった。
Cカップは俺の手に収まる感じだったが、揉んでみた感じは物足りなさを感じた。
そしてHカップのほうは当たり前だが、俺の手では収まらなかった。
触り心地は弾力はあるものの、ズシリとした重さが感じられ、揉んだ感触はあまり好ましく思えなかったのだ。
俺的にはCカップのほうがよかった。
だけど、何かが物足りない。
なので、俺はⅮカップぐらいの女性の胸が好みなのではないかと思っている。
まぁ、あのオモチャが本当に本物にそっくりにしてあった場合だけどね。
話を戻すが、大事な部分が抜け落ちていたとは言え、女性陣は俺の回答に納得してくれたようだ。
俺としては、なぜか不完全燃焼している気がしてならなかったのだが。
そんなこともありつつ、ついにアリシア号が出航した。
船旅を楽しみ、甲板から海を眺めていたときだ。
レイラと海の魔物について話していると、突如船が動かなくなるというトラブルが発生してしまう。
船の中にいた皆が甲板に出てくると、俺の頭上に影が差し、顔を上げる。
真上には、巨大な触手があった。
で、でけー!
驚きで身体が一時硬直し、すぐにその場から離れるという行動に移れなかった俺は、触手に拘束されてしまう。
抜け出せないでいるとライリーが触手を攻撃し、俺を救出してくれる。
斬られた触手が甲板の上で飛び跳ねて蠢いていると、触手に赤い液体がついていることに気づく。
嫌な予感がした俺は、自分の身体に視線を向ける。
掴まれた部分の衣服は破け、肉体からはドクドクと血が流れていた。
いって―!痛い痛い!死んでしまう!
ああ、今思えば短い人生だった。
心残りがあるとすれば、ⅮTのまま死にたくはなかったなぁ。
自分の身体が真赤に染まっていくのを見て、俺は気を失いそうになった。
だが、ライリーが回復魔法を唱えて、失った血液を補充してくれたお陰で俺は死ぬことはなかった。
触手との戦闘に入ると、あの触手の正体はイカの魔物、スプラッシュスクイッドだということが判明する。
皆と協力し、スプラッシュスクイッドを撃退すると、急いでこの海域から脱出したのだった。
スプラッシュスクイッドとの戦闘を終えた翌日の朝、俺は悪夢にうなされる。
それはエミが大事にしていたおやつを俺が食べてしまい、殺されるというものだった。
いくら夢だったとは言え、夢の中の俺は現実に起きているように感じてしまう。
石化されて身体が動かせない恐怖は、本当に怖い体験だったといえる。
もう二度と、同じ夢は見たくない。
嫌な気持ちで目覚めた俺は、起こしてくれたアリスと一緒に食堂に向かう。
すると、エミが大事にしていたお菓子がなくなったと聞かされ、何か知らないかと尋ねられる。
あの夢を見ていただけに、俺は恐怖を感じた。
まさか正夢にはならないよな。
そんなことを考えつつも、俺は何も知らないことをアピールした。
カレンのフォローもあり、どうにか無実を勝ち取ることができると、そこに起きたばかりのライリーがやって来た。
彼女の口元には黒い物体が付着しており、甘い匂いを漂わせていた。
そう、エミのおやつを食べた犯人はライリーだったのだ。
激怒したエミは魔法を唱えようとする。
皆で一斉に止めようとしたが、俺はバランスを崩してしまい、俺の手はエミの胸に触れ、揉んでしまったのだ。
服越しだったが、柔らかい感触が手に伝わる。
ラッキーではあったが、瞬時にアンラッキーに移り変わった。
怒りの矛先が俺に向けられ、殴る蹴るの暴行を受けることになる。
エミが魔法を発動しようとしたときは、女性陣も止めようとしてくれたが、俺が暴力を受けているときは誰も助けようとはしてくれなかった。
理不尽にもほどがある。
これがラッキースケベの代償というものなのだろうか。
今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字や文章的に可笑しな箇所などがありましたら、教えていただけると助かります。
あらすじを最後まで読んでいただいたあなただけに、第十五章の内容の一部をご紹介します。
オルレアン大陸の北側に上陸すると、エルフの森に足を踏み入れたデーヴィットたちは、エルフのはった罠を作動させてしまい、エルフたちから攻撃を受ける。
この騒動でランスロットとジルと逸れてしまい、再びハーレムパーティーとなった。
アリスの知り合いであるエルフの一人と運よく接触したことにより、彼らはエルフたちから攻撃をされることはなくなるも、あまり歓迎されていない。
話を聞くと、町に住む伯爵がエルフを攫っているとのことだ!
セプテム大陸の魔王の情報を得るために、デーヴィットたちは伯爵の魔の手から、エルフたちを救出することを決める。
こんな感じの内容になっています。
第一話は明日投稿予定です。




