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第十四章 第三話 持たざる者の悩み

 エミに石化魔法を唱えられそうになったあと、俺は床に正座をさせられた。


 一応王都オルレアンの王子なのだけど。


 俺がエルフの女性のことを考えていたことが他の女性陣に知られ、彼女たちの無言の圧力に負けて身体が自然と正座してしまった。


「それで、デーヴィッドはどうして女性のエルフのことを考えていたのかしら?もちろん聞かせてくれるのよね」


 エミは今大会で優勝したのにも関わらず、機嫌がわるそうだ。


 信じてもらえるかはわからないが、俺はアリスがエルフの耳と胸のことをお題として残していたこと、仮にあのまま問題が続行されていたとしたら、その説明を考えていたことを語る。


「そうなのです。フォーカスおじいちゃんが出て行ったので、続きができなかったのです」


 俺の弁明の一部が事実であることを、アリスが指摘してくれた。


 本当に彼女がいて助かった。


「わかった。デーヴィッドの言い分を信じよう。余は寛大な女である。これぐらいで目くじらを立てては女が廃るというもの」


「まぁ、デーヴィッドが嘘を言っていないのは雰囲気で分かるわ。そもそもエミが大袈裟に言うから、話が肥大化したんじゃないの?」


「あたしのせいっていうの!」


「まぁ、まぁ、その辺にしておきなよ。因みにあたいは楽しいほうにつくだけだったけどね」


 アリスがすぐにサポートに回ってくれたお陰で、これ以上は追及されることはなさそうだ。


「それで、耳のほうは置いておくとして、どうしてエルフの胸は小ぶりなの?」


 突然カレンがエルフの胸のことについて問うてきた。


「知りたいのか?」


「あ、あくまで後学のためよ。別に他意はないわ」


「本当にそうなのかい?もっと別の意味があるんじゃないのかい?」


 自分の知識を増やすために知りたいというカレンに対して、ライリーが珍しく彼女をからかう。


「後学のために決まっているでしょう!意地悪しないでよ!」


 カレンが顔を赤くしながら声を荒げる。


「あたしも知りたい。カレンと同じで後学のために」


「余は別にどうでもよい」


「あたいとレイラは知る必要はないって、既にあるのだから」


「ライリー、もしかして喧嘩を売っているの?」


「わかった。わかった。教えるから喧嘩をしないでくれ」


 今にも喧嘩に勃発しそうなカレンを宥めつつ、俺は先ほど考えていたことを皆に披露する。


「思春期から成長期にかけての女性ホルモンの減少かぁ」


「それって人間で言うところの十二歳から二十歳までの期間ってことよね」


「まぁ、そんなところだろう」


「まだ成長する可能性は残されている。あとは規則正しい生活を送って、ストレスをためないようにしないと」


 カレンがぶつぶつと何かを呟いているようだが、声が小さすぎてよく聞こえない。


「胸っていうと、やっぱりデーヴィッドも男だから、大きいほうが好きなのかい?」


 何の前触れもなしに、ライリーがいきなり俺の性癖について聞いてくる。


 さっきまでカレンを弄っていたので、急に方向転換してくると思っていなかった俺は、自然と吹き出してしまう。


「い、いきなりなんなんだよ」


「胸の話で盛り上がっていたから、次いでに聞いておこうと思ってよ。興味のない胸なら夜這いされる心配はないだろう?デーヴィッドも男だ。普段味わえない環境の中で興奮して、性的な意味で襲ってくるかもしれないだろう?」


「そんなことするか!そもそもこんな環境で興奮したら、それはただの変態ではないか!」


 俺は声を大きくして否定する。


 自身では確認することができないが、おそらく顔を赤くしているだろう。


「アハハハ。いい反応だよ、デーヴィッド。期待を裏切ってはくれない」


 彼女の予想どおりに俺が反応したからか、ライリーは楽しそうに笑いだす。


「デーヴィッドを弄るのはその辺にしておくのだ。それよりも、余が知りたいのはそなたの性癖である。ここにいる者は皆バラバラの膨らみを持っておる。口に出して言うのは恥かしかろう?ならば、指差しで構わぬ」


 ライリーの弄りを止めてくれたレイラが、好みの胸に近い人を選べと言ってきた。


 彼女の提案に俺は冷や汗を掻き、鼓動が激しく高鳴る。


 実際には俺の好みに近い胸をしている人物はいる。


 だけど、その人を選んでしまった場合は、何かと今後の人間関係に影響を及ぼしそうな気がしてならない。


「何をぼーとして固まっているのよ。ただ指差しをすればいいだけじゃない」


 中々行動に出ない俺に業を煮やしたのか、カレンが早くするように催促してきた。


 そんなことは言われなくとも分かっている。


 俺がもっと堂々として男らしかったら、彼女たちを困らせるようなことはしなかっただろう。


 どうにかして逃げ道を作れないか、思考を巡らせる。


 すると、いいアイディアが頭の中に浮かんだ。


「そうだな、わかったよ。ここは男らしく、指差しではなく言葉で言おう。俺が好きなバストサイズは……」


 好みの大きさを言おうとすると、女性陣全員がのどを動かしたのが見えた。


「胸であればどれも好きだ!」


 よし、これならば全員に当て嵌まって、ある意味誰も当てはまらないような微妙なラインに話を持っていくことができる。


 一仕事を終えたようなほっとした気分になり、女性陣に視線を向ける。


 その瞬間、俺は顔が強張った。


 状況を楽しんでいるライリーと、あまり状況を飲み込めていないアリスを除いて、残りの女性陣がゴミを見るような視線を送っていた。


 どうして彼女らはそんな目で俺を見る?


 ちゃんと質問に答えたじゃないか。


「胸なら、どれでもいいのなら、デーヴィッド自身の胸を弄っていなさいよ、変態」


「デーヴィッドのことを少しは見直していたのに、今後アリスちゃんとお風呂には入らせないから、このロリコン」


「デーヴィッドよ。そなたがおっぱい魔人だとは思わなかったぞ。余が見初めた男がそんなに節操なしだとわな。取返しのつかないことになる前に、大きい胸でしか興奮できないように調教してやろうぞ。魔王らしくな」


 カレンたちの圧力に、俺は血の気が引く思いに駆られる。


 どうやら俺の策は失敗に終わったようだ。


 二頭を追う者は一頭も得ずというが、全員が平和的に納得する道を選ぼうとしたのが悪かったようだ。


 こうなっては仕方がない。


 ここは正直に話して、俺の性癖を暴露するしかない。


「待ってくれ!今の冗談だ。本当のことを言う!」


 言うんだ!例え俺の性癖が皆に知られて、笑われることになったとしても、今の状況よりかは遥かにマシ。


「俺は小さいより、大きいほうが好き!……あれ?」


 てんぱってしまったからか、俺は一番肝心な部分が抜け落ちていることに、言い終わってから気づく。


 今言った言葉の間には、本来言うはずだった俺の性癖が隠されている。


「ふーん。デーヴィッドは大きいのが好きなんだ。変態」


「まぁ、大きいほうと言うとロリコンではないのよね。よかった。アリスちゃんが穢されることがなさそうで」


「それでこそ、余が見初めた男というもの、その答えが聞けて余は満足である」


 しかし、大声で叫んだからか、皆は納得してくれた様子だ。


 何とか危機を脱したようで俺は安堵する。


 ほっとして皆を見ると、カレンは急に俯き、ジッーと足下を見ているように見えた。


「エミ、ちょっとこっちに来て」


「急にどうしたのよ」


「どうせあなたも似たようなことを考えているのでしょう」


「そ、そんなわけないじゃない」


「嘘つかなくても私にはわかるわ。発展途上同士、今後の方針を一緒に考えるわよ」


 エミの腕を握り、カレンは俺たちから離れていく。


「カレンのやつ急にどうしたんだ?」


「ハハハハ、まぁ、デーヴィッドにはわからないよ。女の悩みのひとつだからね」


 ライリーが笑いながら、カレンのあの行動は悩みによるものだと教えてくれた。


「カレンに悩みがあるのか、相談にのってやったほうがいいよな?」


「いいんじゃないのかい。半殺しにされる勇気があるのなら」


「それってどういうことだよ」


 彼女の言葉の意味が分からず、俺は聞き返す。


「ライリーの言葉は無視するがよい。あやつはただ状況を楽しんでいるだけである。デーヴィッドがカレンの悩みに対して相談にのれば、おそらく逆上することになるであろう。とくにそなたには言えない悩みであるからな。そっとしておくがよい」


 ライリーとは逆に、レイラはカレンの悩みを聞かずに、そのままにしておくことを勧めてくる。


 確かに普段のライリーを見る限り、俺を弄って楽しんでいることが多い。


 あまり彼女の言葉を鵜呑みにしないほうがいいだろう。


 俺はレイラの言葉を信じ、カレンのほうから相談しにくるまでは、そっとしておくことにした。


 今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。


 誤字脱字や文章的に可笑しな箇所などがありましたら、教えていただけると助かります。


 そして、今日で三ヶ月間連続投稿の実績を解除しました!


 百日連続投稿の実績解除が目の前に来ました。


 これも毎日読んでくださっているあなたのお陰です。


 次は百日連続投稿の実績解除の報告ができるように執筆活動も頑張っていきます。


 明日も投稿予定なので、楽しみにしていただけたら幸いです。

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