第十三章 第一話 目覚め
城の中にある医務室、そこで俺は椅子に座りながらベッドで寝ているエミを見ていた。
鬼たちとの戦いから三日が経ったが、あれからエミが目を覚ますことはない。
「デーヴィッドよ。今日もエミの様子を見ておるのか?心配なのはわかるが、今の状況も考えるべきであるぞ」
まだ目を覚まさない仲間の様子を見に来たのだろう。
レイラが扉を開けて医務室に入ってきた。
「わかっている。だけど、こうなってしまったのは俺のせいだ。ヘラクレスのときは光に包まれて消えたのに、酒吞童子のときは首を刎ねても消えることはなかった。あのとき可笑しいと思うべきだったんだ。だけど疲れで判断力が鈍っていたせいで、そのことを忘れていた」
「何をいう。デーヴィッドの知識がなければエミは死んでいた。そなたは彼女の命を救ったのだぞ!もっと胸を張るべきである。落ち込むのはお門違いというやつだ」
「ただ知識があっただけで、エミを救う力はなかった。あれもライリーがいたからこそできたことだ」
「それが何だという。ならば知識もない、ただの魔力の量が多いだけの余は役立たずということになるではないか!」
「そんなことは言っていないだろう!」
「いや、言っておる。少なくとも余がそう捉えた」
「それは被害妄想というやつだ」
「ならばその言葉をそのまま返す。そなたにも当て嵌まるからな」
お互いに言葉の攻防が続く。
このままではエミのときのように、仲違いをしてしまいそうだ。
彼女の言うとおり、俺は言った言葉がブーメランになっている。
だけど、もしあのとき敵をしっかりと確認していたら、エミは今も元気でいたかもしれないと考えてしまうのだ。
自分自身を責めることで、心を保とうとしている。
俺は現実から目を逸らすように顔を俯かせて視線を下げる。
「仕方がないなぁ」
床に視線を向けていると、レイラの足が映し出される。
そして頭に柔らかいものを感じると、髪を撫でられた。
「そんなに自分自身を責めるではない。あのときは皆疲れて判断力が鈍っていたのだ。三日前のことは余も悔やんでおる。もし、余が気を緩めていなければ、酒呑童子の頭が健在だったことに気づけたのではないか、エミが大けがをすることはなかったのではないかとな」
レイラは俺が心の中で思っていたことと同じことを言う。
彼女の口調は優しく、まるで子どもをあやす母親のような囁きだった。
レイラも同じ気持ちだったのだ。
それを俺は、自分一人の責任だとかってに思い込んで責められるのを待っていた。
責められることで、罪の意識を軽くしようとしていた。
「デーヴィッド、そなたは余に言ってくれたよな。レイラが一人で抱え込む必要はない。俺も一緒に考えてやるから、不安の半分を分けてくれないかと」
「ああ、言ったな」
「それと同じである。そなた一人で抱え込む必要はない。余も一緒に罪の意識を持っておるから、そんなに自身を責めるな」
「ごめん。それとありがとう」
俺はレイラに謝罪とお礼を伝える。
俺は少なくとも一人ではない。
罪の意思を共有してくれる仲間がいる。
「あのう、そろそろイチャイチャするのは止めてくれない?二人の青春ラブコメを見ていると、あたしはイライラするのよ」
「エミ!目が覚めたのか!」
三日ぶりにエミの声が聞こえ、俺は直ぐにベッドに視線を向ける。
幻聴ではない。
ベッドに寝ていた薄い水色のセミロングの女性が起き上がり、ジト目で俺たちのほうを見ていた。
「目が覚めたことは喜ばしいが、エミよ。少しは空気を読むべきではないのか?今は余がデーヴィッドを慰めているところであるぞ」
「だから逆の意味で空気を読んだのよ。レイラが逆の立場でもそうするでしょう?」
「うぬぬ、そこは否定できぬ」
目が覚めるなり、二人は楽しそうに会話をしているが、俺は内容を理解することができなかった。
「それよりも早く、デーヴィッドを放しなさいよ。あなたもそのままでいないで抵抗しなさい!」
エミが顔を赤くして抗議してくる。
確かに立ち直ったのだから、いつまでもレイラに甘えているわけにはいかない。
レイラの両肩に手を置き、俺は彼女を引き離す。
俺の行動が気に食わなかったのか、レイラは頬を膨らませた。
「なんだか騒がしいわね。何かあったの?」
廊下で城の兵士が慌ただしくしている声が聞こえてくる。
「そういえば、エミは意識を失ったあとのことを知らないよな」
「当然でしょう。もし知っていたら超能力者よ」
「それもそうだな」
俺はどこから話したものかと考える。
「ゾム兵士長が裏切った。いや、そもそもゾム兵士長ではなかったのだ。あやつのせいでこの国は戦争をすることになった」
俺の代わりにレイラが説明するが、要約し過ぎて大事な部分が抜け落ちてしまっている。
「なるほど、わかったわ」
「今ので、わかるのかよ!」
俺はあまりにも理解の速さに驚き、相手が患者であることを忘れてツッコミを入れる。
「まぁ、仮定はともかく、結果としてはこの国は戦争をすることになった。だから兵士がその準備のために慌ただしくしているってことよね」
「そんなところだ」
「現状は理解したわ。なら、次はどうしてこんなことになったのかを一から説明しなさい」
「やっぱり知りたいんじゃないか」
「当たり前でしょう。どうしてそんなことになったのか、その過程を知らなければ解決策を見出すことができないじゃない。戦争は回避したいはずでしょう。それともデーヴィッドは戦争をしたいの?」
「そんな訳がないだろう。分かった。三日前に何が起きたのかを今から話す」
俺は三日前のできごとを思い出しながらエミに語った。
今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字や文章的に可笑しな箇所などがありましたら、教えていただけると助かります。
また明日も投稿予定なので、楽しみにしていただけたら幸いです。




