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☆第九章あらすじ☆

 今回あなたに呼んでもらうものは、とても悲しい話からだ。


 俺は人生で二度目の失恋をした。


 そのことをここに記そう。


 別に興味がない人は読み飛ばしても構わない。


 え!そんなに思い出すのが辛いなら、書かなければいいだろうって!


 確かにあなたの言うとおりだ。


 だけど俺はこの手記を書くとき、嘘偽りのない事実だけを記すと決めたのだ。


 例え思い出したくない恥ずかしい記憶でも、今まで俺が経験してきたものを今更なかったことにはしたくない。


 前置きはこの辺にして俺の体験した失恋話第二弾といこう。


 ドンレミの街にあるギルドで依頼をこなした帰り道、俺はレイラたちと別れて先に宿に帰った。


 俺の部屋の外にはリピートバードが待ち構えており、鳥を部屋の中に入れてメッセージを聞く。


 ナコさんからのメッセージは何だろう?


 昨日の話の続きかな?


 ワクワクした気持ちで俺はリピートバードのメッセージに耳を傾ける。


 しかし、鳥から伝えられた言葉に、俺は動揺して一瞬何も考えられなくなった。


 リピートバードはナコさんが他の男とやり取りをしていることを告げ、その男のせいで嫌な目に遭ったようで退会することにしたという内容を彼女の代わりに伝える。


 鳥から返信をするかを聞かれ、俺は即答してメッセージを伝えるとリピートバードは部屋から去っていく。


 突然のできごとで俺は頭の中が真っ白になり、上手く言葉が出なかったせいで、本当に言いたかったことを伝えることができなかった。


 俺は色々な意味で落ち込み、元気を失う。


 すると再びリピートバードが俺の部屋を訪ねてきた。


 なんだよ、こんなタイミングで宣伝かよ。


 新聞や牛乳の配達はいらないって!


 相当落ち込んだようで、俺は意味の分からないことを心の中で叫ぶ。


 鳥に対して鬱陶しく思うも、知らせを伝えないと離れない性質がある以上は、声を聞くしかない。


 俺は重い腰を上げてリピートバードの話を聞くことにする。


 どっこいしょ!


 今、俺の心の声を聞いて年寄りくさいと思ったやつは出てこい!


 俺だって言いたくって言った訳じゃないからな!


 自然と言葉が出て来てしまったんだよ!


 え!それは精神年齢がオッサンだからだって?


 ぐぬぬ、反論できない。


 とにかく俺はリピートバードから話を聞くとナコさんからのメッセージであることを知る。


 な、何だって!


 お別れのメッセージだったので、どうせ返信をしても返事はくれないだろうと思っていただけに衝撃は強く、俺は興奮した。


 言っておくが興奮したからと言って、あっちは何も変化していないからな!


 もし変化が起きていたら、それはただの変態だ。


 ナコさんからのメッセージはたった一言だった。


 リピートバードが返信をするかを尋ね、俺はこれが最後のチャンスだと思い、さっきは言えなかった思いを伝えることにする。


 恋愛を諦めてほしくないこと、今夜は酒でものんで知り合いにでも愚痴を聞いてもらって、気持ちをスッキリしてもらいたいことを鳥を通して伝えてもらう。


 俺のメッセージを聞いたリピートバードは飛び去って行くが、それからはお知らせ以外であの鳥が俺の前に現れることはなかった。


 ベッドに横になると、俺は何故か目から涙が流れて止まらなくなる。


 失恋は初めてではない。


 モモさんにフラれて初めて失恋を経験したときでさえ、涙を流すことはなかった。


 別にナコさんが特別で本気だったわけではない。


 モモさんのときも本気で、自分の出せる最大限の努力をして当日に挑み、そして振られたのだ。


 あのときと今回のことを比較すると、俺はどうして涙が出たのか、その理由に気づく。


 モモさんのときは俺の実力を出し切ったうえで振られた。


 だけどナコさんとはメッセージのやり取りをしただけで、実際には会うことができないまま、どこの馬の骨とも知らない男の妨害に遭い、連絡を取るのを断念せざるを得ない状態になった。


 ここだけの話を聞いて、あなたは客観的に見ればサクラだったのではないかと思うだろう。


 しかし、恋活婚活センターは正規の会社で、サクラだと思われる人物は常に排除をされている。


 このことを考えると、その可能性は薄い。


 詳しいことはプライバシーに関わることなので、話すことはできないが、このとき俺たちは会いたくとも会うことが難しい環境の中にいたのだ。


 なのでそれを知っている俺たちはどちらからも会おうとは言いださなかった。


 全力を出したものとそうでないものは、後者のほうが悔いが残る。


 だから俺は悔しくてあのとき泣いてしまったのだ。


 泣き疲れて眠ってしまうと、俺は夜中に目を覚ます。


 どうせ今から二度寝したところで眠れそうな感じがしない。


 俺は夜中の街を散歩することにした。


 道を歩いていると反対側からエミが歩いて来ており、合流した俺たちは一緒に散歩することとなる。


 二人で歩いていると、俺はエミのことをもっと知るべきではないのかと思い、俺は彼女に尋ねた。


 しかし、俺の言いかたが悪かったらしく、誤解を招いて彼女の機嫌を損なってしまった。


 エミはその場から走り去って行き、俺は彼女を追いかけるも見つけることができない。


 しかたなく、今は諦めて俺は宿屋に帰る。


 翌日、部屋を出るとエミが前を通り過ぎ、俺は彼女に声をかける。


 一応返事は返してくれたが、気持ちのいい返しではない。


 やっベー!昨日のこと相当怒っているよ!


 早くなんとかしないと、今後の俺たちの旅に影響が出てしまう。


 俺はどうにかして仲直りをするきっかけを作ろうと試みるも、最初の試練が訪れる。


 テーブルの空いている席には、エミの正面しか空いてはいなかった。


 て、敵対だと!


 エミはそこまで俺のことを拒絶してくるのか!


 心理学において、正面とは敵対を意味する。


 もし、彼女がこのことを知ったうえで、あの場所に座っているとしたら話しを聞いてはくれないだろう。


 だが、このまま引き下がるわけにはいかない!


 勝負だエミ!絶対に会話をしてやるからな!


 俺は意気込むも、蓋を開ければ俺のKO負けだった。


 エミはアリスとばかり話し、俺の声掛けはスルーされる。


 さすがは無敵貫通の魔法の持ち主、容赦なく俺の心を抉ってきやがる。


 結局このときは、一度も会話が成立することはなかった。


 食堂を出るとアリスが話しかける。


 どうやら彼女は俺とエミの様子が可笑しいことに気づき、心配してくれているようだ。


 アリスちゃんマジ天使!


 だけどこんな小さな子にまで心配をさせる訳にはいかない。


 どうにかして仲直りをするきっかけを作らなければ。


 考えごとをしているとアリスにいいアイディアが思い浮かんだようで、俺は彼女の指示どうりに見晴らしの丘に一人で向かった。


 街を出て丘を登り、眺めを楽しんでいるとこの場にエミが訪れた。


 彼女に話を聞くと、アリスから探し物を頼まれたらしい。


 俺も手伝うことになり、探し物のローマンカモミールを探す。


 しかし、見つかる物は全てジャーマンカモミールやノンフラワーカモミール、それにダイヤーズカモミールだけであり、ローマンカモミールは見つけることができない。


 カモミール多すぎ!


 カモミールがカモミールで、カモミールだからカモミールなのだから、カモミールのせいでゲシュタルト崩壊が起きそうになってくる。


 おそらくこの一文を読んだあなたは意味が理解できないだろう。


 だが、それは正しい。


 あのときの俺の気持ちが第三者に分かってたまるか!


 思い出しただけで頭痛がしてくる。


 とにかく、最終的にはローマンカモミールを見つけることができた。


 まさか、魔物の背に生えているとは思わなかったが。


 ローマンカモミールは亀の魔物であるグラウンドタートルの背に生えていた。


 あの魔物は外敵から姿を隠すときや狩りをするために、背中の甲羅に草花を生やしている。


 エミと協力してグラウンドタートルを行動不能にさせるも、正直あまり嬉しくはなかった。


 最終的にはエミが失神魔法を使い、手柄を取られてしまった。


 何度も言うが、無敵貫通ってずるいだろう!


 俺は彼女が契約している精霊が羨ましかったが、エミのほうは複数の精霊と契約できているほうがいいと言い出す。


 隣の芝生は青いというが、やはり自分の持っていないものほど欲しがってしまうものなのだろうか?


 これを読んでいるあなたはどう思う?


 量より質をとるのか、質より量をとるのかという問題に近いかもしれない。


 脱線はこのぐらいにして話を戻すが、押し潰されて萎びれたローマンカモミールをグラウンドタートルから採取させてもらう。


 まぁ、萎びれたキノコじゃないだけマシだろう。


 って、話をもとに戻すと言った途端にすぐ脱線しているじゃないか!


 だから最近は過去話を手記に書くだけなのに、五時間以上普通にかかってしまうんだよ!


 だけど少しは面白く書かないと、これを読んでくれているあなたに途中で飽きられるじゃないか!


 なんで毎回手記を書くときに頭を悩ませないといけないんだろうか?


 早く書き終えてカレンたちと出かけなければならないのに。


 だけど手記のクオリティを落とせば途中で読まれなくなるし、どうしたものか。


 とにかく悩んでいても時間をムダに浪費するだけ、とにかく書き進めなければ。


 ローマンカモミールを持って帰ると、宿屋の前でアリスが待ってくれていた。


 俺たちは彼女にお願いされたものを渡すと驚かれる。


 どうやらこの世界ではローマンカモミールは貴重な品らしい。


 花に詳しくない俺は、その貴重さがわからないが、あれだけ苦労して手に入れたのだから納得することはできる。


 カモミールの花言葉は仲直り、アリスはエミにこれを探させることで、早く仲直りをしてほしいと訴えていたのだ。


 その日の夜、エミが俺の部屋にやって来た。


 夜這いだったのなら嬉しかったが、現実は物語のようにはいかない。


 彼女は俺に過去話をしに来たと言った。


 俺は緊張を感じる中、彼女の言葉に耳を傾ける。


 この話は長くなるので纏めると、彼女は地球という星にいたころ、突然神により天界に転送された。


 そして異世界に転送することになったが、とんとん拍子に話が進み、エミは現実とは思えなくなった。


 そこで彼女は、これは明晰夢という自身が見ている夢だと思い込むことにしたとのことだ。


 話を聞き終わると、俺は信じられない思いだった。


 だってエミの言っていることが本当なら、俺は彼女の作り出した空想の人物だということになる。


 俺の行動は彼女の無意識で動いている、そんなことは否定しなければならない。


 そんなことは認められない!


 だってそうだろう!


 俺がDTなのは、エミがそういう設定にしたからということになってしまうじゃないか!


 それではエミを恨むことになる。


 彼女ができないのもエミのせいになってしまうから。


 俺はこの事実を否定しようと試みるが、さすがにある意味ラスボス的な存在であるエミだ。


 一筋縄ではいかず、俺の言葉は全て論破されてしまう。


 ゲームオーバーになりかけたところで、エミが真実を知る方法を教えてくれた。


 それは彼女を殺すことだ。


 エミが死ねば、この世界が彼女の明晰夢によるものなのかが分かるという。


 エミは覚悟を決め、俺に彼女を殺すチャンスを与えてくれた。


 彼女が寝ているその間に心臓を破壊すれば真実を知ることができる。


 少しの間葛藤していたが、俺は覚悟を決めると魔法を発動させて標的を殺す。


 エミの身体は血で染まっていた。


 疲れた俺は最後にするべきことをして眠りにつく。


 翌朝、悲鳴と共に俺は叩き起こされ、目を開ける。


 目の前には血塗られたエミがいた。


 ギャー幽霊!頼むから成仏をしてくれ!


 殺せと言ったのはお前じゃないか!


 と、本当に殺していたのならこのようなことを思っていただろう。


 あのとき俺が殺したのはエミではなく、部屋に入ってきた吸血コウモリであった。


 彼女が浴びた血は吸血コウモリのもの。


 俺は彼女が眠ったあとのことを説明し、これが明晰夢ではないことを証明した。


 エミも怖かったのだ。


 憧れていたとは言え、実際に魔物と戦うのは勇気がいる。


 その弱さを彼女が打ち明けると俺の中で決心が着いた。


 彼女を守り、そしていつかはエミを元のいた世界に返してあげようと、俺に新たな目標まで授けてくれた。


 俺は女将さんに謝るために彼女を探す。


 このときの俺は相当ビビッていた。


 普段は優しそうな女将さんだが、部屋を血で染めたうえに魔物臭くしてしまったのだ。


 絶対に怒られる!


 さ、最悪の場合は買収してでも女将さんの機嫌を直さなければこの宿に居られなくなる。


 まだ温泉を楽しみたいし、ワンチャンまたみんなで混浴に入るイベントが起きるかもしれない。


 この宿のボスを見つけ、言葉による戦闘に入る。


 先手必勝!


 食らえ必殺ジャンピング土下座!


「すみませんでした!」


 突然の奇行に走った俺の行動に女将さんは驚いたが、事情を話すと納得してくれたようで、部屋の掃除だけで赦してもらえた。


 おばちゃんマジ天……あ、危ない。


 あやうくマジ天使と言いかけてしまった。


 彼女は天使のように優しいが、天使という言葉を使うには年齢からしてふさわしくはなさそうに見える。


 俺の価値観になってしまうが、天使という言葉を使う対象者は、穢れを知らない純粋なアリスのような少女にこそ使う言葉なのではないかと真面目に考えているのだが、みんなはどうだろうか?


 とにかく罰則金などを払わずにすんだ俺は、皆で買い出しに出ると中央噴水で人だかりができていることに気づく。


 集まった人に話しかけると、どうやら王都オルレアンで兵士を募っているとのことだ。


 その話を聞いた俺たちは急いで王都に向かうことに決めた。























 ふぅー。


 やっと書き終えた!


 これでやっとカレンたちと出かけることができる…………って!


 こんなことを書いているから余計に時間がかかってしまうのだろうが!


 余計な雑談もあったが、長いのに最後まで読んでくれてありがとう。


 まさか王都オルレアンについた直後、俺はお城に連行されることになるとは思わなかった。


 言っておくが何も罪を犯していないからな!


 濡れ衣だ!だれか弁護士を読んでくれ!

 今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。


 誤字脱字や文章的に可笑しな箇所がありましたら、教えていただけると助かります。


 あらすじを読んでいただだいたあなただけに第十章の内容の一部を少しだけ教えます!


 王都オルレアンについたデーヴィッドたちは、城下町の住人が彼らを見てひそひそ話をしていることに気づく。


 そして彼らの前に兵士が現れ、何故かデーヴィッドだけが連れて行かれてしまった!


 連れていかれた場所はお城の中、そこでデーヴィッドはついに出生の秘密を知ることになる!


 デーヴィッドの正体とはいかに!


 そして彼の本当の両親が現れるが、食事のあとに父親と大喧嘩をしてしまうぞ!


 とまぁ、こんな感じの内容となっております。


 今回も何話構成になるかは分かりませんが、是非第十章も楽しんでいただけたら嬉しいです。


 第一話は明日投稿予定です。

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