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第一章  第四話 襲われた学園

 晩酌をしていたら投稿が遅くなりました。


 楽しみにしてくださった読者の方には申し訳ありません!


 ワード説明

 クラスター……数えられる程度の複数の原子・分子が集まってできる集合体。個数一〇~一〇〇のものはマイクロクラスターと呼ばれ,特殊な原子のふるまいが見られる。

「デーヴィッド、ここはあたいに任せな。あんたはあの黒煙のほうに向かってくれ」


「分かった。ライリーも油断してヘマをするなよ」


「あたいをなめないでおくれよ。この程度の敵に遅れを取るほど、やわな身体はしていないつもりさ。もし、あっちに本隊がいるのなら、統率しているリーダーがいるはずだ。デーヴィッドのほうこそ、力に溺れるんじゃないよ」


 お互いの健闘を祈りつつ、俺は黒煙が舞い上がる方角へ走って行く。


 しばらくすると場所の特定ができた。


 予想どおりラプラス学園だ。


 頭の中でカレンや生徒たちが魔物に襲われ、傷つくビジョンが浮かび上がっていくが、俺は脳裏に過った映像を払いのけ、学園の門を潜る。


 グラウンドには複数のゴブリンが徘徊し、視界に入ったと思われる生徒を追いかけ、得物を振るっていた。


 必死に走り続け、疲労がピークに達したのかもしれない。


 女子生徒の一人が転倒し、彼女に追いついたゴブリンが手に握っている斧を振り上げる。


 このままでは彼女があの斧で斬殺されてしまう。


 だけど、今からでは遠距離系の魔法は間に合わない。


 スピードが命だ。


(まじな)いを用いて我が契約せしフラウとノームとウンディーネに命じる。その力の一部を我に貸し、言霊により我の発するものを実現せよ。フロストカラムウォール」


 (まじな)いのつながりにより、三体の精霊の力を借りて言葉どおりの現象を起こす。


 すると、女子生徒からゴブリンを遮るようにして氷の柱が彼女の周囲に出現。


 敵の振り下ろした斧をはじき返す。


 どうにか間に合ったようだ。


 女子生徒に殺意を向けていたゴブリンに対して、攻撃系の魔法は距離があって間に合わない。


 そこで、地面から飛び出す霜柱で身を守ることを考えた。


 霜柱を生み出すには五つの条件がある。


 最低気温がゼロ度以下、火山灰を含む土地、大きい土粒と微小な土粒があること、土が柔らかい、土に適度な水分、この条件がなければ霜柱を生み出すことができない。


 大昔この村の近くには火山があり、常に火山灰が降っていたというのを村の歴史で聞いていた。


 なら、この村の地面ならどこでも火山灰を含んでいる。


 そこでノームの力でグラウンドの一部を柔らかくし、ウンディーネの力で地面に三十パーセント以上の水分を送り、フラウの力で地表の温度をゼロ度以下に下げた。


 三属性の精霊の力が融合し、一部のグラウンドに影響を与えたことで、地表近くの水分を含む地面を凍らせた。


 そして凍結していない少し下の地中の水分が、凍った土の粒の狭い隙間から、地面に向かって上がって行く。


 それにより冷たい空気に触れたことで凍結し、氷の柱を生んだのだ。


 何の前触れもなく、突然現れた巨大な霜柱にゴブリンは困惑している。


 今が攻撃のチャンス。


 そう判断すると、すかさず次の手を打つ。


(まじな)いを用いて我が契約せしジャック・オー・ランタンに命じる。その力の一部を我に貸し、言霊により我の発するものを実現せよ。ファイヤーアロー」


 一本の炎の矢を出現させると、斧を持つゴブリンに向けて放った。


 炎の矢はゴブリンに直撃し、すぐに全身を包み込む。


 肉を焼く高熱から逃れようとしているのだろう。


 ゴブリンは暴れてはいたが、途中で力尽きたのか、その場で倒れて動こうとはしなかった。


 魔物が倒れた位置が、霜柱の近くということもあって、炎の熱が氷を溶かす。


 氷の柱が消えると、女子生徒の姿が見えた。


「大丈夫か!」


 助けた女子生徒に駆け寄る。


 彼女は恐怖で顔を引きつかせており、青ざめていた。


 むりもない。


 魔学や精霊学の授業で、精霊の力を言霊に乗せて実現させる力を身に着けていたとしても、危険が伴う状況下では咄嗟に身を守るものを出現させることは難しい。


 女子生徒に手を差し伸ばし、彼女を立たせると周囲を窺う。


 今ので、完全に注目の的になってしまったようだ。


 グラウンドにいた全てのゴブリンがこちらを見ている。


 さすがに守りながらの戦闘は経験がない。


 予期しない事態に陥る可能性も十分ありえる。


 だからといって焦りは禁物だ。


 冷静に判断ができなければ、精霊の力を借りて言霊に乗せて実現させる際に、失敗してしまうリスクが高くなってしまう。


 冷静にゴブリンを観察していると、敵は遠距離武器を持ってはいない。


 なら、距離を詰められる前に、こちらが遠距離で仕留めればいいだけだ。


(まじな)いを用いて我が契約せしウンディーネに命じる。その力の一部を我に貸し、言霊により我の発するものを実現せよ。ウォーターカッター」


 ウンディーネに向け、実現させる言葉を放つ。


 すると空気中の水分が集まり、知覚できる量にまで拡大する。


 そして今度は水の塊が加圧により、直径一ミリほどの厚さに形状を変えると、俺の合図と共に飛ばす。


 勢いのある水が敵の右腕にヒットすると、水流が当たった部分を吹き飛ばし、切断された箇所から鮮血が噴き出していた。


「心臓を狙ったはずなのに、狙いが逸れてしまった。もう少し照準の修正が必要か」


 目標ではない箇所に当たってしまったが、それでも牽制するにはいたったようだ。


 警戒をしているようで、ゴブリンの歩行が止まっている。


 これなら狙いが外れることはないはず。


「もう一度だ!」


 再び狙いを定め、ウォーターカッターを放つ。


 今度は標的の心臓を吹き飛ばしたようで、胸から大量の血液が飛び散ると、ゴブリンは仰向けの状態で倒れた。


「よし、次だ!」


 敵は戸惑い、動きが鈍くなっている。


 今のうちだ。


 敵に向けて吹き飛ばす力のある水を連続で射出。


 ほとんどのゴブリンは、心臓を破壊されて倒れている。


 だが、一体だけが攻撃を逃れていた。


 連続でウォーターカッターを放ったことにより、疲れが生じて狙いを誤ってしまったのだろうか。


 ならば、今度こそ命中させる。


 もう一度狙いを定めて一撃で仕留めようとしたが、俺の攻撃は躱されて肉体に振れることすら叶わない。


 このゴブリン、他のとは何かが違う。


 違和感を覚えていると、俺は敵の正体に気づいた。


「もしかして、ハイクラスのゴブリン!」


 人間に職業や階級があるように、魔物にもそれが存在する。


 ほとんどが今まで倒したゴブリンのように、ノーマル種である。


 だが、この枠から脱け出して一段階進化した魔物が、ハイクラスの階級を保有するのだ。


 ありふれたノーマル種と見た目がまったく同じであるため、区別が難しいが通常よりも優れた能力をもつ。


 もし、あのゴブリンがハイクラスならば、こちらの攻撃を躱され続けているのにも納得がいく。


 こちらの攻撃を回避できるほどの瞬発力があるのなら、それを封じ込めばいいだけの話だ。


 今、頭の中で考えている氷による束縛を実行すれば、敵の動きを止めたうえで、ハイゴブリンにダメージを与えることは可能のはず。


 しかし、先ほどまでウォーターカッターを連発した代償として、ウンディーネの消耗が激しい。


 これ以上、言霊の実現を行わせればウンディーネは生命力を使い果たし、消滅してしまう可能性だってある。


 一度消滅してしまった精霊の力は借りることができないのだ。


 一度休ませて回復に努めてもらわないといけない。


 だが、ジャック・オー・ランタンに切り替えて攻撃をすることはむりだ。


 拘束後に炎を飛ばせば、その熱の影響でハイゴブリンを束縛から解放してしまうことにつながってしまう。


 敵の素早さを考えれば、例え一瞬のできごとであったとしても回避される可能性が高い。


 それではむだに精霊の生命を削るだけだ。


 敵の討伐と精霊の命を天秤にかけていると、動かないことを好機と判断したのだろう。


 ハイゴブリンが瞬発力のある走りでこちらに向かってくる。


 思ったよりも早い。


 回避行動に移ったとしても間に合わない可能性が出てくる。


 迷っている時間はない。


 今はウンディーネの生命力を信じるしかない。


 歯を食い縛り、敵の動きを止めるための現象を生み出す。


(まじな)いを用いて我が契約せしウンディーネとフラウに命じる。その力の一部を我に貸し、言霊により我の発するものを実現せよ。シャクルアイス」


 現実に起こすための言葉を言うと、空気中の酸素と水素が磁石のように引き合い、電気的な力によって水素結合を起こす。


 これにより水分子間がつながり、水分子のクラスターが形成され、水の塊が出現。


 水の一部を切り離し、蛇のようにハイゴブリンに向けて飛び出すと、敵の足首に巻きつく。


 すると今度は巻きついた水に限定して気温が下がり、水分子が運動するための熱エネルギーが極端に低くなる。


 それにより、水分子は動きを止めてお互いに結合して氷へと変化した。


 分子同士の間にできた隙間の分だけ体積が増えたからだろう。


 氷の拘束具はハイゴブリンの足に密着し、バランスを崩した敵はその場で転倒。


 起き上がることすら困難な状況に陥っていた。


「これで終わりだ!」


 残った水を加圧し、一ミリの細さに変えるとハイゴブリンに向けて放つ。


 放たれたウォーターカッターは、敵の頭部に振れると首から上を吹き飛ばした。


 断面から赤色の鮮血が噴き出す。


 予想外の強敵を倒したことに安堵をしつつも、不安が拭えない。


 精霊が消滅していないかの確認のために、しばらく様子を窺う。


 心臓が痛むような発作が起きなかった。


 どうやらウンディーネは消滅していないようだ。


 このあとも戦いは続くだろう。


 もう、ウンディーネの力を借りることはできない。


 先ほどのように、水を使った言霊の実現が使えなくなる。


 水の力に頼らない戦いをしなければ。


 敵の親玉の居場所と、助けた女子生徒の避難場所をどうするのかを考える。


「デーヴィット!」


 自身の名を呼ばれ、声がしたほうに顔を向ける。


 金髪ミディアムヘアーの女子生徒が、こちらに向けて走って来ていた。


「カレン、無事だったか」


「うん……逃げ遅れた……生徒……以外は……全員校舎内に……避難している。私が風の魔法で……時間を稼いでいる……けど、なぜかオーガが怯まないで……入口を破壊しているの」


 全速力で走って来たからだろう。


 カレンは荒い息を吐きながらも説明をしてくれたが、上手く状況が呑み込めない。


 そこで彼女の呼吸が元に戻ってから、もう一度聞き直す。


 オーガと呼ばれる魔物がゴブリンを引き連れて学園に攻めて来た。


 そこでカレンが正面玄関入口の前に風を生み出して進路妨害を図った。


 けれど、風圧に負けることなくオーガは扉を破壊しているとのことだ。


「私が生み出した風の壁も、そんなにもたない。扉を破壊されれば魔物の集団が校舎内に入ってしまうわ」


「分かった。今すぐ向かう。悪いがこの子を頼んだ」


 急いで教えてもらった場所に向かいながら、俺は思考を巡らす。


 オーガとは体長二メートルを超える巨大な魔物だ。


 体格がでかいため、強風が吹いたとしてもあまり動じることはない。


 しかし、これは自然に発生した強風に限ってだ。


 精霊の力を借り、言霊に乗せて実現させた現象であるならば、オーガであっても苦戦するはず。


 そうならないのであれば、先ほどのゴブリンのようにハイクラスの階級をもっているのか。


 そうであった場合は、何に特化しているのかを見極める必要がでてくる。


 戦術を考えながら直進していると、正面玄関の前に一体の緑色の巨体をもつ生物が拳を振り上げている姿が見えた。

 最後まで読んでいただきありがとうございます。

 

 また晩酌をして投稿が遅くなることがあるかもしれませんが、そのときはまた晩酌かよ!と笑っていてください。


 誤字脱字などがありましたら是非教えていただけると嬉しいです。


 また明日投稿する予定なので、見てもらえるとありがたいです。


最新作

『全知全能に近い能力【魔学者】を得た俺だが、無能だと偽っていたせいでパーティーから追放!追放したリーダーである令嬢を助けたからと言って、押しかけ女房のようになられても困るのだが!』が連載開始!


この作品は、今回の反省を活かして執筆しております。


なので、面白くなっていることが間違いなしです。


追記

この作品はジャンル別ランキング、ハイファンタジー部門でランキング入りしました!


興味を持たれたかたは、画面の一番下にある、作者マイページを押してもらうと、私の投稿作品が表示されておりますので、そこから読んでいただければと思っております。


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