☆第四章のあらすじ☆
これから読まれるものは、俺が仲間と協力して魔王と戦った記録だ。
ランスロットから魔王城に招待された俺たちは、討伐の準備を行う。
俺はアイテム屋で買い出しに、ライリーは新しい武器を探しに、カレンは山に幻惑草の採取に向かった。
必要な分のアイテムを購入した俺は、住民の話していた鍛冶屋を訪れた。
先日倒したワイバーンが運ばれているらしく、素材を使って剣に加工しているらしい。
鍛冶屋に来た俺はライリーと合流し、剣が完成するのを待つ。
剣が完成すると、金額を聞いたが、目を疑う金額だった。
正直に言って、いくらこの世にふたつとない代物であったとしても高すぎる。
ぼったくりにもほどがあった。
このとき、俺の心の中では天使と悪魔が現れ、購入するべきかどうかの葛藤をしていた。
だって高すぎるんだもん!
でも、これでライリーが更に強くなるなら必要経費として割り切るしかないじゃん。
一振りで剣の魅力に引き込まれてしまったんだよ。
高いから買ってあげないとか言えないって!
そんな訳で、俺はワイバーンの尾で作られた剣を、ライリーに買ってあげることにした。
そのあと宿屋に返ってカレンの帰りを待ったが、夕方になっても彼女が戻ってくることはなかった。
俺の脳内では、ゴブリンやオークなどの魔物や、山賊などのに襲われているのではないかと思ってしまった。
ゴブリンやオークといった魔物は女が壊れるまで侵すと聞くし、山賊も男なら欲情してしまうかもしれない。
口に出しては言えないが、カレンは可愛い自慢の義妹だ。
絶対に幸せになって欲しい。
もし、彼女に彼氏のような存在が現れようものなら、義兄としてカレンに相応しい男なのかをしっかりと確認させてもらうつもりだ。
俺の認めるような男ではない限り、嫁にはやらせん!
こんなふうに想っていることが仲間に知られれば、シスコンと言われて蔑まれるかもしれない。
いや、これって普通だよな!
妹をもつ兄として当然のことであって、行き過ぎた想いではないはず!
そうだよな!
そうだと言ってくれよ!
いかん、いかん。
つい熱が入ってしまった。
これ以上カレンの話をするのは止めておこう。
もしこの手記を見られたら、顔を合わせた瞬間にゴミを見るような目で見られるかもしれない。
話を戻そう。
日が暮れそうになったころ、カレンが帰ってきた。
身体は傷だらけであり、痛々しかった。
事情を聞くと、幻惑草以外にも採取をして遅くなったらしい。
安心した俺は、先に二人を食事に向かわせ、俺は一人で幻惑草を磨り潰して白い粉の作成に入った。
翌日、ロードレスの街を出ると、霊長山に向かう。
数日かけて霊長山に辿り着き、山を登ると城が見えた。
まさか山の中に城があるとは思わなかった。
門を潜るとどこからか声が聞こえ、魔物の大群が姿を現す。
だけど、不思議なことに魔物は俺たちを攻撃するどころか、道を作って待機していた。
これは何かの罠だろうか?
一抹の不安を感じながらも、先に進む。
城内に通じる扉の前に、ランスロットと見知らぬ男が立ちふさがっていた。
話を聞くと、招待されているのは俺だけであって、カレンたちは城の中に入れないとのことだ。
言うことを聞かなければ、城に集められた魔物たちが一斉に襲いかかってくる。
俺は条件をのみ、一人で城の中に入ると玉座の間に向かう。
そこで現れた魔王は、俺の故郷を襲撃した際にランスロットの隣にいた女の子、レイラだった。
魔王が俺の前に立つと、城に住んでくれれば面倒を見てくれると言い出したのだ。
そんなにうまい話しがある訳がない。
どこかに裏があるはずだ。
そう思った俺は彼女の提案を拒否した。
すると、予想外にもレイラは食い下がらず、理由を尋ねると彼女は俺に好意をもっていたという。
俺は驚いた。
だって今まで告白をしたことはあっても、逆はなかった。
正直嬉しかったので俺という存在と引き換えに、魔物が人間を襲わないようにしてくれと頼んだ。
だが、それはむりだと判明すると、俺は戦う意思を見せる。
交渉決裂すると、レイラは予想のできなかった攻撃を俺に仕掛けた。
魅了だ。
まともに喰らってしまった俺は、自分の意志とは関係なく、彼女のことが好きになり、お互いの唇を重ねる。
あのときは魅了されていたとは言え、本気でレイラのことが好きになっていた。
もっと彼女に気に入ってもらいたい。
そう思って俺の出せる全力の気持ちで応えてあげた。
しかし運が良いことに、レイラは恋愛において男にしてはいけない禁忌を冒した。
そのお陰で俺は我に返り、レイラに攻撃を始める。
一度した失敗を取り戻そうと、レイラは魔物を生み出し、俺を拘束しようとしてきた。
俺は現れたゴーレムに身体を拘束されて身動きが取れなくなる。
敵にチャンスを与えてしまい、レイラが再び魅了の魔法を仕掛けようとする。
だけど、レイラが魔法を発動するよりも早く、カレンたちが乱入してくれた。
そのお陰で、俺は拘束から解放されたが、そのまま意識を失う。
気がつくと、俺は暗闇の中にいた。
ここはどこなのだろう?
独り言を呟くと、背後から女性の声が聞こえて振り返る。
背後には見知らぬ女性が立っていた。
話を聞くと彼女は水の精霊ウンディーネであることを知り、他の精霊たちも姿を見せる。
初めて精霊と顔を合わせたが、文献通りの容姿をしており驚いた。
だが、一番驚くべきことは、ウンディーネは昔レイラと契約した精霊であり、レイラも元は人間であったことだ。
これで話しは繋がった。
特定の条件を満たした人間が死後精霊となり、精霊が消滅するとその残留思念が集められて魔物になる。
皮肉なものだ。
人間がよりよい暮らしをするために、精霊と契約して魔法を発動する技術を生み出したのに、便利さを求めたばかりに脅威となる生物を誕生させたのだから。
レイラの過去を聞き、彼女を助けてくれとウンディーネに頼まれる。
俺は受託したが、正直自信はなかった。
だって、倒すのでも難しい存在なのに、過去のトラウマと苦しみから救ってあげなければならない。
俺には具体的な解決策を見出すことができなかった。
どんな美女でも二度見するようなイケメンでもないし、モテた記憶もない。
それに成人しているのに俺はⅮTだ。
男として魅力があまり感じられない存在が、女の子の心の傷を癒してあげる方法を思いつくはずがない。
だけど、ウンディーネや他の精霊にはいつも世話になっている。
可能な限りはお願いごとを叶えてあげたかった。
時間が訪れ、現実世界に意識が戻った俺はレイラと再戦する。
彼女の攻撃を全て無力化し、自分はお前よりも上の存在だとアピールして虚勢を張った。
このときは正直怖かった。
全力を出して常に様々なパターンを考えなければいけなかったし、俺が少しでも怖気つくような態度を見せれば、カレンたちも安心して見守ることができないと思ったから。
互角の戦いをしていると、レイラは魔物を生み出して総攻撃を仕かけた。
一人で無双するのはむりと判断した俺は、カレンとライリーにも手伝ってもらい、掃討戦に入る。
この数を普通に相手にしていては、こちらが先に力尽きてしまう。
この戦いに勝利するための鍵は、幻惑草を粉末にしたあの白い粉だ。
だが、一体ずつに浴びせていては時間もかかるし、数が足りない。
やっぱり、塵旋風で一気に広範囲に白い粉を撒き散らせるしか、効率のいい使い方はできない。
どうするべきかを考えていると、ライリーが破壊した床の一部が俺の前に転がり、それが石でできていることに気づく。
石で作られた床にゴーレム、それにガーゴイル。
これらを見て、俺は光明が見えた。
ダストデビルが使える。
だけどこの方法は時間軸を強引に捻じ曲げるようなもので、その代償は大きい。
俺だけではなく、カレンたちにも被害がでかい。
しかし、この方法を使わなければ俺たちは全滅するだろう。
そう判断をした俺は決断し、ファイヤーボールとアイシクルを交互に使って寒暖差による風化を齎した。
石である床とゴーレム、それとガーゴイルは砂に代わり、地面を作り上げる。
そして大きめのファイヤーボールでプチ太陽を作り、条件を満たすとダストデビルを発動。
それに白い粉を投げ込み、部屋中に撒き散らすと魔物達は同士討ちを始める。
この瞬間、俺は勝利を確信した。
もう、魔王は動くことができない。
レイラ以外の魔物が全滅すると、降参するように彼女に促す。
だが、魔王ゆえのプライドだからか、レイラは負けを認めようとはしなかった。
そこで俺は、魔王は既に負けていると言える説明をすると、ようやく彼女は敗北を認めてくれた。
そこにランスロットたちが乱入したが、レイラが敗北したことを告げ、彼女の許可なしに人を襲わないことを宣言してくれた。
こうして、俺の職を失った復讐は終わりとなり、平穏な日々が続いた。
そう、あの事件が起きるまでは…………。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
誤字脱字や文章的に可笑しな箇所がありましたら、お手数ですが教えていただけると助かります。
明日は第五章を投稿します。
デーヴィッドの手記に書かれたように、次の話から新たな冒険が始まります。




