☆第二十八章あらすじ☆
今回のワード解説
ノンレム睡眠……レム睡眠以外の、深い睡眠の時期。非レム睡眠。徐波睡眠。
レム睡眠……睡眠の一つの型で、身体は眠っているが、脳は覚醒に近い状態にある睡眠をいう。
今回は、群山から帰ってきたところから、アームレスリング大会に出場したところまでの記憶を、この手記の書いていこうと思う。
山から帰ってきた俺たち捜索班は、待機班と合流した。
俺たちを見るなり、タマモが駆け寄ってくる。
彼女はアリスを叱りつけた。
エミが庇ってくれたお陰で、あまり酷い叱りかたにはならなかったが、これも彼女なりの教育だったのだろう。
アリスの件が片づいて安心したからか、ライリーが腹が減ったから飯を食いに行こうと言い出した。
確かに朝から何も食べていなかった状態だ。
ご飯を食べに行くことにすると、カレンが一度風呂に入ったほうがいいと言い出す。
俺としたことが、清潔感のことを忘れていた。
カレンの言うとおりだ。
不衛生なままで食事をするわけにはいかない。
お互いが自分の意見を優先しようとする中、俺は妥協案として、それぞれが分かれてやりたいことをすればいいのではないかと提案をした。
二人はそれに納得してくれたのだが、なぜか俺の腕を握ってきたのだ。
何で?どうして彼女たちは俺の腕を掴む?
疑問に思っていると、ライリーは俺がいないと飯の代金が払えないと言い出し、カレンは先ほどと同じように不潔のまま店に向かわせる訳にはいかないと主張する。
お互いが俺の腕を引っ張り、俺は綱引きの綱状態となった。
普通に考えれば、ライリーのほうが腕力が上なので、カレンのほうが力負けしてしまう。
しかしライリーは手加減をしていたようで、力は拮抗していた。
二人に引っ張られたことで、俺の腕は悲鳴を上げ、涙まで出てしまう。
しかも、この状態を見て助けてくれる人はいなかった。
得にレックスは、この状況を楽しみ、俺にもっと苦しめと言ってくる。
あのときは本当に痛かった。
腕がもげるかと思ったよ。
名前は忘れて思い出せないが、こんな物語がある。
二人の女が一人の子どもを自分の子だと言い、子どもを引っ張りあった。
その結果、その子どもは二つに裂けてしまったと言う。
さすがに現実ではそんなことは起きないと思うが。
あまりにも痛かったので、俺は更に妥協案を出す。
ライリーにお金を上げるからそれで食べに行ってくれと言った。
しかし、それがラッキースケベにつながるトリガーになるなんて、当時の俺は予想すらしていなかった。
俺の言葉を聞いたライリーはいきなり手を離す。
けれどカレンのほうは、まだ俺の腕を引っ張ったままだ。
そのせいで力の進行方向がカレン側だけとなり、俺は彼女に引っ張られて倒れてしまった。
咄嗟に目を瞑ってしまったので、どうしてこうなったのか経緯がわからない。
なぜか俺は、義妹のスカートの中に頭を突っ込む形になっていたのだ。
俺は思わず声を上げてしまうと、ビックリしたカレンが足に力を入れ、俺の頭を押さえつける。
太腿の柔らかい感触が俺の両頬に感じるが、早く脱出さなければならない。
力を緩めるようにカレンに言う。
しかし、どういう訳か、逆に締め付ける力が増したのだ。
どうしてこうなった!
わけがわからずに頭の中が混乱していると、ライリーが呪文を唱える。
その瞬間、カレンの力が抜けたようで、締めつけが弱くなると、俺はその場から脱け出した。
けれど、これでぶじに終わるなんてこはなかった。
ラッキースケベの代償は、絶対に払わされる。
俺は鬼の形相となったカレンから往復ビンタをされ、顔が大ダメージを受ける。
因みに洗面所で顔を確認したが、とてもひと様に見せられないほど、赤く腫れていた。
本気で怒ったカレンなら、素手でオーガを倒せそうな気がする。
翌日、俺は老犬の家を訪ね、アンリーを目覚めさせようとした。
タマモたちにも手伝ってもらい、俺は刺激茸のエキスで作った飲み薬をケモノに飲ませる。
しばらく待ってみると、俺の予想どおりに彼女は目覚めてくれた。
刺激茸には、睡眠時に行われるレム睡眠とノンレム睡眠のサイクルを上手くさせることができるのだ。
しかし、ここまでたどり着いた俺は少しだけ後悔する。
原因が分かっていたのなら、普通に魔法をライリーにお願いしたほうが早かったんじゃないの!
そうすれば、アリスが一人でむちゃな行動には出なかったはずなのに。
だけどまぁ、そのお陰でエミとアリスが仲直りができたのだし、結果オーライということでいいのだろうか。
アンリーが目覚めたことで、お礼に馬車を貰うことになった。
俺は馬車に取りつける馬をつれてくるために、アナと一緒に村の入り口に向かう。
彼女と会話していると、俺は目的地であるカルデラ城下町に向かうことを話す。
すると、アナはエスパーなのかと言って驚いてきた。
これまでの情報から推察したにすぎないのだが、彼女の言うとおりだ。
エスパーなんて力があれば、色々と便利だと思う。
例えば、物語なんかで薬を飲んだら相手の考えていることがわかるなんていうのもあるが、どういう原理でそのようなことが可能なのだろうか。
肝心な部分の説明が抜け落ちているお陰で、俺には不明なままだ。
どうすれば、相手の頭の中で考えていることを知ることができるのだろうか。
それを知ることができれば、今後の戦いにもやくに立つのに。
村の入り口につないでいた馬をつれてくると、馬車に取りつけてケモノの村から出る。
次に向かうのは、この国の首都であるカルデラ城下町だ。
アームレスリング大会の前日に、俺たちは城下町に辿り着くことができた。
たくさんのケモノを見て、タマモが興奮する声が耳に入る。
アナの案内のもとに馬車を進ませると、城の前で一旦止めるように彼女が言う。
指示に従って馬を止めると、アナはどうして城の前に停めたのかと思うのかを尋ねてきた。
無言でいると、アナは答えを言い、自分はこの国の姫だとカミングアウトをした。
気づいていた俺は言葉では驚くも、感情がこもっていない。
最初から予想を立てている以上は、このような反応になってしまう。
俺が驚かなかったことに対して、アナはショックを受けた。
馬車を預けると、俺とアナは別行動をすることを言う。
すると、レイラがついて行きたいと言い出した。
俺は脳内シミュレーションを行うが、レイラがついて来ると大変な目に遭うという結果になった。
レイラではなく、カレンについて来てほしいと告げると、レイラはそのことに不満を抱く。
話し合いをした結果、カレンとレイラが勝負をすることになった。
対戦方法はアリスがお題を出し、それに合っている行動をとったほうが勝ちというもの。
最初のお題は、妹として相応しい起こしかたは?
勝負が始まり、カレンは普通に俺を起こしてくれた。
しかし、レイラは普通ではない起こしかたをしたのだ。
それは目覚めのキスだ。
ちょっと、待ってくれ!
気持ちは分かるが、この手記を投げ捨てるような真似はしないでくれ。
二人の行動が終わり、審査に入る。
結果はカレンの圧勝だった。
まぁ、キスで起こそうとする妹は、現実世界にはいない。
仮に存在したとしてもそれは物語の中だ。
断言してしまっているが、いないよな!
いや、待てよ。
世の中にはブラコンという人がいるという言葉を聞いた。
もしかしたら世界中を探せば、いるのかもしれない。
もし実在するのなら、一度この目で見てみたいものだ。
第二問が始まった。
二つ目のお題は、兄が病気にかかってしまった。妹として相応しい看病の仕方は?
俺は病人になったつもりで演技を行う。
カレンの場合は、前回同様に普通だった。
手で熱を測り、背中の汗を拭いてもらい、ご飯を食べさせてもらうという流れだ。
続いてレイラの番だが、おそらく絶対に妹はしないだろうと思うような行動に出た。
身体を擦りつけ、自分の舌を使って俺の身体を舐め回すと言うものだ。
た、頼むから、もう一度この手記を捨てるような動作はしないでくれよ!
俺はあった事実を書いているだけだ!
これはけして妄想ではないからな!
よし、話しを戻そう。
レイラの行動を見たエミが、演技を中断するように言い、レイラのターンは強制終了させられる。
二回目の結果も、カレンが圧勝だった。
そのあともいくつかお題があったのだが、どれも似たような結果に終わったのだ。
最終的には、カレンの全勝に終わった。
勝者のカレンが同行することになり、俺たちはカルデラ城に向かう。
城の門に向かうと、二人の門番が俺たちを怪しみ、城に入れないと言ってきた。
アナはなぜかお面を被り、素顔を隠している。
普通に顔を出していれば、何事もなく平和に入ることができたはずだ。
門番に対してアナは挑発する。
それに乗った二人のケモノが、跳躍して槍の棒を振り下ろした。
すると、アナはいきなりお面を外す。
今から攻撃をしようとしている人物が、この国の姫であることに気づいた二人は、互いに相方を攻撃する。
その光栄を目の当たりにしたアナは、お腹を抱えて笑い出した。
門番を倒し、城の中に入ると俺たちは謁見の間に通される。
アナのご両親と面会し、姫様をつれてきた褒美をくれると言ったので、俺はアナのお見合いを白紙にしてくれないかとお願いをしようとした。
しかし、俺よりも先にアナが口走る。
彼女は、俺の望みはアナだと言い、俺たちが恋人関係であると両親に言う。
ちょっと待て!どうしてそんなことを言ってしまう!
俺が言いたかったことと違うし、それだとお見合いをなかったことにするまでの手順が多くなるだろうが!
俺は心の叫びを上げる。
アナの言葉に、この場が騒めく。
ほら、皆俺に注目しているじゃないか。
王様の顔を見てよ、鋭い視線を向けているよ。
目力だけで人を殺せそうな圧力を感じるじゃないか。
いったいどうしてくれるんだよ。
心の中で愚痴を言っても意味はほとんどない。
俺はアナの恋人の演技を続行するはめになる。
アナの父親と話し合った結果、俺がアームレスリング大会に出場し、優勝することができれば関係を認めてくれることになった。
お城から離れると、俺はカレンと一緒にレイラたちを探す。
商店街を歩いていると、いい匂いが漂ってくる。
店の店主と目が合い、声をかけられた。
匂いの発信源は、鶉の肉だった。
買ってくれるののなら、焼きたてを売ってくれるとのことだったので、俺たちは鶉の丸焼きを買うことにする。
あの鶉は本当にうまかった。
また機会があればもう一度食べたい。
お土産の分も買い、仲間たちを探すのを再開する。
歩いていると、路地裏で言い合いをしている声が聞こえ、そちらに向かう。
俺の予想どおり、言い合いをしていたのはエミたちだった。
仲間と合流した俺は、何があったのかを訊く。
どうやらわざとぶつかったらしく、足が当ったのに腕が痛いと言うのだ。
俺はコントをやっているのかと思った。
ショートコント!路地裏のガラの悪い男たち。
頭の中で、コントをしているところを映像化してみると、俺は笑えた。
しかし、実際はコントではなかったようで、ケモノたちが襲ってきた。
俺は社交ダンスのステップで、男たちの攻撃を躱し、同士討ちにさせる。
しかし、ケモノの男たちは運が悪いことに、互いの唇を重ねる結果となったのだ。
その光景を見た瞬間、腐女子であるドライアドとウンディーネが興奮する。
ケモノたちは逃げ出し、俺たちはケガもなくぶじに済んだ。
俺は仲間たちに城でのできごとを語った。
翌日、俺はライリーと一緒にアームレスリング大会に出場した。
一回戦の相手は、前日路地裏で熱いキスを交わすことになったケモノの一人だった。
レフリーの合図とともに、俺は一瞬で勝負を決める。
けれどそれはひっかけだったことを知り、もう一度やり直すことになった。
対戦相手は何も知らない俺に大笑いをしていた。
くそう、今に見てろよ!
レフリーのひっかけに気をつけながら、もう一度勝負を行う。
その結果は俺の圧勝だった。
アームレスリングは腕力の勝負だと思われているが、実際には腕力ではなく、テクニックで勝負するものだ。
中には、全然筋トレをしないアームレスラーもいると言う。
俺はライリーとともに勝ち進み、準決勝に進んだ。
準決勝の相手は、アナのお見合い相手だったケモノだ。
彼とは、開会式のあとに一悶着あり、負けたほうはアナを諦めるという約束をした。
まぁ、彼女が優勝賞品になっている以上は、優勝するしか道はない。
王様も考えたものだ。
まさかアナを優勝賞品にするとは思っていなかった。
勝負が始まり、激しい攻防が続く。
負けそうになるが、俺はモードレッドの暗示を使い、逆転して勝ことができた。
モードレッドには感謝しなければ。
俺は決勝に進み、対戦相手はライリーに決まる。
だが、いくら待ってもライリーが決勝の舞台に現れることはなかった。
彼女は腹痛により、勝負を辞退した。
その結果、俺が不戦勝で優勝したのだが、観客たちは納得することができずに物を投げてくる。
俺はどうすることもできずにただ立ち尽くしているだけだった。
今日はこの辺にしておこう。
続きはまた今度、時間ができたときにでも書くとするか。
今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字や文章的に可笑しな箇所などがありましたら、教えていただけると助かります。
ブックマーク登録してくださったかたありがとうございます。
今日も一人のかたに登録してもらい、ありがたく思っております。
この調子で増えてもらえるように、今日の執筆活動も頑張っていきます。
そして、今回の投稿で、七ヶ月間連続投稿の実績を解除しました!
ここまで書き続けられたのも、毎日読んでくださっているあなたのお陰だと思っております。
本当にありがとうございます。
更に、今回の話でオケアノス大陸編は完結しました。
明日からは、オケアノスの魔王編に突入します。
あらすじを読んでくださったあなたに、第二十九章の内容の一部をご紹介!
アームレスリング大会に優勝したデーヴィッド、再び王様と面会することになった。
この機会を逃したらチャンスはないと判断した彼は、思いきってアナがお見合いを嫌がっていたことを王様に告げる。
そして、彼女との婚約もなかったことにするが、それでは民のほうは納得がいかない。
民たちにも納得させるために、デーヴィッドは死ぬと言い出した。
彼の死とは、どういう意味なのか。
もちろん主人公が死んだらこの物語は終わってしまうので、死ぬことはありません。
翌日、王様が魔王の情報を得るために、部下を引き連れて森の中に入ったが、王様が行方不明になった。
デーヴィッドたちは森の中を捜索する。
しかし彼らを待ち受けていたのは、セミラミスの配下の魔物たちだった。
こんな感じの内容になっています。
二十九章は内容が短めになっています。
おそらく四話ぐらいで終わります。
物語の続きは明日投稿する予定です。




