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第二十八章 第一話 ご飯にする?お風呂にする?そ・れ・と・も……引っ張られる?

 今回のワード解説


 読む必要がない人は飛ばして本文のほうを読んでください。


 本文を読んで、これって何だったかな?と思ったときにでも確認していただければと思っています。


横隔膜……胸腔と腹腔との境をつくる膜状筋で,腰椎部,肋骨部,胸骨部の3部から成る。それぞれの部から出る筋束は,全体として円蓋のように胸腔に向って盛上がっており,その中央部は腱膜から成る。


杆状体……脊椎動物の目の網膜にある、棒状の突起をもつ視細胞。弱い光に鋭敏に反応する視紅 (しこう) を含み、光の明暗を感知する。


交感神経……交感作用を媒介する神経という意味で、副交感神経とともに自律神経系を構成し,脊髄から出ておもに平滑筋や腺細胞を支配する遠心性神経のこと。


視細胞……光受容細胞の一種であり、動物が物を見るとき、光シグナルを神経情報へと変換する働きを担っている。脊椎動物の網膜においては、視細胞はもっとも外側にシート状に並んで層を形成している。


錐状体……網膜の視細胞の一。円錐状の突起をもつ細胞。昼行性の動物に特に多く、色彩を感じる物質を含む。


セロトニン……生理活性アミンの一。生体内でトリプトファンから合成され,脳・脾臓・胃腸・血清中に多く含まれる。脳の神経伝達などに作用するとともに,精神を安定させる作用もある。


副交感神経……交感神経とともに自律神経系を構成する末梢神経で、脳から出るものと脊髄の仙髄から出るものとがある。

 アリスを無事に見つけることができた俺たちは、村に帰ることにする。


 レックスには一足先に帰ってもらい、レイラたちにアリスが見つかったと報告をしてもらう。


 アリスが連れていった馬も無事だったが、彼女は馬の操作ができないはず。


 どうやって馬を歩かせたのかを尋ねると、少女はお馬さんが背中に乗せ、行きたい方向にお願いをしたら連れて行ってくれたと言う。


 そんなことが実際にあるんだと思いつつも、山の入り口に戻った俺はアリスを馬に乗せた。


 さすがに自分一人で二頭の馬を操ることはできない。


 馬の手綱を引いて歩いて帰ることにする。


 アナスタシアは自分の馬に跨り、カレンとエミも歩くのは嫌だと言ったので、馬に乗ってもらった。


 徒歩なので時間がかかったのだが、夕方になるころには村に辿り着く。


 村の入り口で再び馬を木に括りつけ、俺たちは村の中に入る。


 レックスの報告を聞いていたからか、宿屋の前にはレイラたちが待っていた。


 俺たちに気づいたようで、タマモが駆け寄ってくる。


 そしてすぐにアルビノの少女に視線を向けた。


「アリスさん!皆心配したのですよ。どうして何も言わないで勝手に出かけるのですか」


 いきなり叱りつけたタマモに驚いたのか、アリスは咄嗟にエミの後ろに隠れる。


「ごめんなさいなのです」


 アリスは小さな声で彼女に謝る。


「まぁ、まぁ、アリスちゃんが無事だったし、今はそんなに叱らないでよ。あたしがタマモの分まで注意をしたから」


「そうですか。なら、これ以上は何も言いません。ですがアリスさん、本当に皆さん心配していたので、後で謝っておいてください」


「はいなのです」


 再びアリスは小さい声で謝る。


 この光景を見た俺は、どうしたものかと思った。


 アリスは皆の力になりたい想いで、危険を冒してまで山に登った。


 彼女はあくまでも、善意の気持ちからの行いだ。


 けれどタマモからすれば、これも教育の一環なのだろうと言うことがわかる。


 例え皆の役に立ちたいという気持ちの表れだったとしても、心配と迷惑をかけてはならない。


 自分かってな大人にならないために、敢えて厳しく接することも時には大事だ。


 親の心子知らずと言うが、アリスが彼女の気持ちが分かっていてくれればいいのだが。


「アリスが帰ってきたことだし、飯にしないかい?あたいは腹が減っちまったよ」


 なんとも言えない空気に包まれていると、雰囲気をぶち壊すようにライリーがお腹を押さえて空腹であることを告げる。


「そうだな。皆お腹を空かせていることだし、ご飯を食べに行こうか」


「私は先にお風呂に入りたいわよ。山の中に入って汚れてしまったもの」


「あたしも」


「そんなの後回しでいいだろう。あたいは先に飯を食いたい」


「あんたねぇ、それだから女子力が低いのよ」


 カレンとライリーが、どちらを先にするのかで言い合う。


 義妹が一言余計なことを言ったのが原因なのだろう。


 ライリーの褐色肌の額には青筋が立っていた。


「それじゃあ二手に別れよう。ご飯とお風で分ければ互いに文句はないだろう」


 このままでは別の喧嘩が始まりそうな気がしたので、俺は妥協案を出した。


「そうね。そうしましょう」


「わかったよ。デーヴィットが言うのならそうしようじゃないか」


「「それじゃあ」」


 二人が提案を受け入れた瞬間、彼女たちは俺の腕を握る。


「カレン、その手を放しな!デーヴィットがいないと飯が食えない」


「何を言っているのよ。デーヴィットも山に入って汚れているわ。不衛生な状態で店に入れるわけにはいかないわよ」


 互いに腕を引っ張り、その影響で俺の腕は痛みを感じる。


「いててて。痛いから手を放してくれ」


「デーヴィットが痛がっているじゃない。離しなさいよ」


「それはあたいのセリフだよ。力では勝てないのが分かっているだろう」


「だからと言って、不潔な状態で店に連れて行かせる訳にはいかないのよ」


 互いに譲ろうとはせず、二人は引っ張る力を緩めない。


 それどころか、カレンは更に腕に力を入れたようだ。


 俺は鋭い痛みに、思わず目に涙を溜めてしまう。


 このままでは、マジで年甲斐もなく泣いてしまいそうだ。


「頼むから手を放してくれ!」


『アハハハハ。いいぞ!もっと苦しめ。苦しむお前を見て、俺は気分爽快だ』


 苦しんでいると、俺の状況を見てレックスが笑い声を上げる。


 このやろう。


 他人事だと思いやがって。


 お互いが譲ろうとしない以上は、どうにかして妥協案を出さなければ。


 思考を巡らせるとアイデアが浮かぶ。


 どうしてすぐに出なかったのだろうかと不思議に思うほどのものだ。


 おそらく空腹に加え、山での疲れにより思考力が落ちていたのだろう。


「ライリー、お金を上げるからそれで食べて来てくれ。それなら問題ないだろう」


 お金を渡すと言うと、いきなりライリーは俺の手を放した。


 しかし、カレンは俺の手を引っ張ったままだ。


 彼女が手を放した反動で、俺はバランスが崩れて転倒をしてしまう。


「いたた。カレン大丈夫か?」


 俺が倒れたのだ。


 彼女も一緒に転んでいるはず。


 そう思って義妹に声をかけながら、俺は反射的に閉じていた瞼を開く。


 すると目の前が真っ暗だった。


 いったい何が起きた?


 そう思っていたが、直ぐに目の視細胞である錐状体が杆状体に切り替わったようで、目の前の光景が広がる。


 俺の視界には、白いパンツと肌色の太腿が見えていた。


 その光景を見て俺は悟った。


 どうしてこうなってしまったのか、俺のほうが聞きたい。


 転倒した際に、どうやら義妹のスカートの中に顔を突っ込んでしまっていたようだ。


「キャー!」


 直ぐにカレンの悲鳴が聞こえてくる。


 その瞬間、俺の顔はカレンの太腿に挟まれた。


 ビックリした衝撃で足に力が入ってしまったのだろう。


 俺の頬は、彼女のぷにぷにとした柔らかい太腿の感触が伝わり、少し気持ちがいい。


 だけどこのまま堪能しているわけにもいかない。


 彼女のホールドから逃れなければ、色々な意味でやばくなる。


「カレン、足に力を緩めてくれ」


「ひゃん!」


 足の力を緩めるように義妹に言うと、彼女は変な声を出して更に足に力を入れてきた。


 どうしてこうなった!


 原因がわからない。


 いったいどうすればこの状況から解放される。


(まじな)いを用いて我が契約せし知られざる生命の精霊に命じる。その力の一部を我に貸し、言霊により我の発するものを実現せよ。スタビライティースピリット」


 頭の中がこんがらがっていると、ライリーが呪文を唱える声が聞こえた。


 その瞬間、カレンの足の力が弱まり、俺は彼女のスカートの中から脱出をする。


 ライリーが唱えた魔法は、精神を安定させる効果がある。


 交感神経が集中している腹部の横隔膜を大きく動かすことで、副交感神経を刺激し、セロトニンと呼ばれる物質を分泌させる。


 分泌されたセロトニンが作用することで、心拍数や呼吸数が下がり、落ち着いた状態にさせるのだ。


 落ち着いたことでカレンがリラックスした状態となり、足の力が緩んでくれた。


「サンキュー助かった」


 起き上がると、魔法を使ってくれたライリーに礼を言う。


「いいってことよ。あたいのせいみたいなところがあるし、今の魔法でカレンも……悪いデーヴィット。あたいが思っていた以上に、感情が高ぶっているようだ」


 言葉の途中で、いきなりライリーが褐色の顔を引き攣らせる。


 彼女の態度を見た瞬間、悪寒が走る。


 俺はゆっくりと身体を振り向かせた。


 すると、俺の身体は石化したかのように動けなくなる。


 カレンが自分のスカートを抑えながら、熟れたトマトのように顔を真っ赤に染め上げ、赤い瞳で俺を睨む。


「この!ラッキースケベ野郎!」


 義妹が右手を大きく振り上げ、渾身の一撃を俺の頬に打つ。


 彼女の手が触れた瞬間、パーンと音が響き、頬に痛みが走った。


 右の頬を殴られたら左頬も差し出せと言う言葉があるように、俺は動かないでいる。


 すると、カレンは反対側の頬まで手の甲を使って叩く。


 しかし、それだけでは彼女は満足しなかったようだ。


 何度も頬を叩かれ、往復ビンタへと変わっていく。


「はー、スッキリした。ほら、さっさと行くわよ」


 気が済むまで俺を叩いたことで、上手く発散することができたようだ。


 カレンは宿屋のほうに歩いて行く。


 叩かれたことで頬が軽く熱を持ち、ジンジンとした痛みを感じた。


 これもラッキースケベの代償として割り切るしかない。


 背負っていたリュックを肩から外すと、チャックを開ける。


 そして中に入っている瓶から、一万ギル札を一枚取り出してライリーに渡した。


「これで食べて来てくれ。足りなかったら、俺が後から払うから」


「なんかすまないな。あたいの魔法の効果が小さくなるほど、あそこまで怒るとは思っていなかった」


 褐色の手で紙幣を受け取りながら、ライリーは申し訳なさそうな表情で俺に謝る。


 いつもの彼女なら、面白がって笑いそうなのだが、そんな余裕がないようだ。


 俺の顔面がそれほどエグイことになっているのだろうか。


『最初は面白がっていたが、さすがに今のお前の顔を見ては笑う気が起きない。今はゆっくりと休め』


 珍しくレックスが優しい言葉をかけてくる。


 それほど俺の顔は酷いことになっているのだろうか。


 自分の顔を見るのが怖くなる中、俺はエミたちと一緒に宿屋に帰ることにした。


 今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。


 誤字脱字や文章的に可笑しな箇所などがありましたら、教えていただけると助かります。


 今回はブックマーク登録はありませんでした。


 陰でこっそりとしていたブックマーク登録連続チャレンジは、何と六日間連続です!


 たぶん新記録ですね。


 この連続登録により、目標ポイントの二百ポイントを超えることができました。


 登録してくださったかた、そして毎日読んでくださっているあなたには感謝しております。


 今後も時には面白く、時には勉強になり、そして読みやすい文章を目指して頑張っていきます。


 物語の続きは明日投稿予定なので、楽しみにしていただければ幸いです。

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