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第三章 第五話 魔王軍

 今回はランスロットがメインの話しになっています。


 そのため、三人称で書いています。

「魔王様、謁見を宜しいでしょうか?」


 玉座の間の前に立ち、扉をノックして部屋の中にいると思われる魔王に、ランスロットは声をかけた。


「よい、謁見を許可しよう」


 扉越しに魔王の声が聞こえ、ランスロットは扉を開けると玉座の間に入る。


 視界に入ったのはローブを身に纏い、猫背姿の男だ。


「何だ、ジルじゃないか。魔王様はどこにおられる?」


 猫背の男は無言のまま右手で上を指す。


 どうやら魔王は、玉座の間の奥にあるテラスにいるようだ。


 テラスに向かおうとランスロットはそのまま歩き、玉座の横にある階段を上り始める。


 自分以外の他に、もうつひとの足音が聞こえた。


 どうやらジルもついて来ているようだ。


 緩やかなカーブを描いた階段を上り、上のフロアに辿り着く。


 テラスとの境界線にカーテンが設置され、シルエットしか見えない。


 しかし、少々小柄な体格に長い髪。


 その特徴を考えるに魔王で間違いないだろう。


「ランスロット、どうであったか。余が見込んだ男は」


 魔王の言葉が耳に入り、ランスロットはすぐに腰を屈めると片膝をついて頭を垂れる。


「ははぁ! 申し訳ございませんでした。魔王様の予想どおり、あの男は貴方様の相手にふさわしいお方でございました。精霊の力を借りなければ我々と対峙することができない人間にも関わらず、知恵と勇気、それに信頼関係につきましても問題ありませんでした。まさか俺の軍が全滅させられるとは」


「な、なんですと!」


 ランスロットの言葉に、今まで黙っていたジルが驚愕の声を上げる。


 彼は大きな目を更に見開き、目の血管が見えていた。


「何、それは本当か?」


 ジルとは対極に、魔王は冷静を感じさせる口調で問うてきた。


「はい、それは事実でございます」


「そ、そんなバカな! ランスロット卿に進言した軍略は勝率が高かった! 仮に撤退をすることになったとしても、被害は最小限に留められるはずだ! いったい何が起きたらそういう結果になる!」


 頭を抱えながら、ジルは目を大きく見開いたまま嘆く。


「軍師であるジル殿の策略は素晴らしかった。俺も最初は勝利しか感じられなかった。だけどデーヴィッドが大量の幻惑草を粉状にしてばら撒いた途端に、俺の部下は同士討ちを開始した」


「なるほど、幻惑草はそのまま使用すると毒になる。粉状にしたことで鼻などの粘膜に付着し、脳に幻覚を見せられたのでしょう」


 流石はストラテジスト級の魔物だ。


 相手が使用したものと状況を説明しただけで、すぐに何が起きたのかが理解できたらしい。


「これはデーヴィッド殿の知略を甘く見ていた私の責任です。どうか処罰は私に」


「何を言う! ジル殿の策は完璧だった。悪いのは状況が傾きつつあることを理解していたのに、撤退を言えなかった俺の責任だ」


「よい、二人はよくやってくれた。処罰はせぬ。だが、これであやつが余にふさわしい相手であることは二人も理解できたであろう」


「はい、なのでデーヴィッドをこの城に招待いたしました」


 ランスロットがデーヴィッドを招待したと告げると、カーテン越しに見えるシルエットがわずかに動いた。


「ほう、では盛大に出迎えなければならないな。ジルよ。そなたは配下を使い準備をしろ。それとランスロット卿、失った部下は今夜にでも余が産み落とし、失った戦力の補給をしてやろう。あやつを招待した功績だ」


「ありがとうございます。ですが大丈夫なのですか? お身体にはそれなりの負担がかかるかと」


「むろん身体を壊すような無茶はしない。あやつが来たときに弱っていては呆れられるだろうからな。魔王としての威厳は保つ」


「流石は魔王様です。明日の朝にはランスロット卿の軍勢がある程度は復活できるのですね。人間、精霊、そして我々魔物、このサイクルがある限り、魔族は種を絶滅されることはない。人間は愚かな生き物、過去の愚行を改めない限り、我々魔物は何度でも人間共に復讐の牙を突き立てましょう」


「そう、例外を除いた人間全だ。ジル軍師」


「す、すす、すみません魔王様! デーヴィッド殿を除いた人間でありました。すぐに今の発言を訂正させていただきます」


 ジルの発言に魔王は低い声を出す。


 言葉の意味を理解した彼は、すぐに先ほど口に出したことを訂正し、頭を下げる。


「で、では私はこれで失礼いたします。すぐに準備に取りかかりますので」


 そう告げるとジルは逃げるようにしてこの場から去っていく。


「ランスロット卿、そなたも下がれ、余はもう少しだけ風に当たっている」


「分かりました。では失礼いたします」


 ランスロットは立ち上がると軽く頭を下げ、この場から離れると階段を降りる。


「これで自分が魔王様にしてあげられることは全てやっただろう。いや、まだやり残していることがあった。デーヴィッドと一緒にいた人間のメス二匹だ。きっとあいつらもついてくるはず。魔王様とデーヴィッドが対峙できるようにするには、あの障がいを排除しなければならない。あいつらを引き離す方法を考えなければ」


 邪魔者を如何にして排除するのかを考えながら、ランスロットは玉座の間から出て行った。


 最後まで読んで頂きありがとうございます!


 これで第三章は終わりです!


 明日は第三章の振り返りとして、あらすじを書く予定です。


 また明日投稿予定ですので、読んでいただけたたら嬉しいです! 


最新作

『Sランク昇進をきっかけにパーティーから追放された俺は、実は無能を演じて陰でチームをサポートしていた。~弱体化したチームリーダーの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る~』が連載開始!


この作品は、今回の反省を活かして執筆しております。


なので、面白くなっていることが間違いなしです。


興味を持たれたかたは、画面の一番下にある、作者マイページを押してもらうと、私の投稿作品が表示されておりますので、そこから読んでいただければと思っております。

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