☆第二十三章あらすじ☆
今日、この手記に書く内容は前回に引き続き、ガリア国との戦いのことについて書く。
エミたちと別れた俺は、一人で敵本陣に向けて走っていた。
敵兵たちは俺の進行を止めようとして近づくが、俺は風魔法でガリア兵たちに尻餅をつかせる。
どうやら騎士団長クラスの敵は、最前線に出ているようで、俺の行方を妨げる敵は雑魚しかいない。
そのお陰で、俺は苦戦をすることなく、敵本陣に侵入することに成功した。
天幕の中に入ると、そこにはガリア国の王であるアルテラと、彼の護衛が二人いた。
しかし、モードレッドの姿は見当たらない。
どうやら挟撃作戦はまだ行われていなかったようだ。
それもそうか。
もし、彼女が襲撃を行っていたら、敵本陣はもっと慌ただしくなっている。
護衛の兵士は俺の姿を見るなり、槍をこちらに向けてきたのだが、アルテラ王は槍を収めるように言う。
どうやら彼は、俺に攻撃する意思がないことに気づいたようだ。
これなら上手く話し合いにもち込み、和解することができるかもしれない。
俺は誠心誠意、事情を説明して彼の理解を得ようとする。
俺はこれまでの経緯を語ったが、アルテラ王はいきなり笑いだしたのだ。
な、何がそんなに可笑しい!俺は別に変なことは言っていないぞ!
人が真面目に話している最中に笑うやつがいるか!
あ、目の前にいた。
どうして急に笑い出すのか、俺は問い質す。
すると、アルテラ王はメッフィーのことを話した。
どうやら完全にアルテラ王は、メッフィーの操り人形となってしまっているようだ。
俺は歯を食い縛る。
笑われたことが悔しかった。
え!そっち!
交渉は決裂、もう戦争を終わらせるには彼を倒すしかない。
そう考えていると、アルテラ王は俺たちの本陣に工作部隊を送り、火計を行う計画を企んでいることを暴露した。
俺は心配になり、現状を確認するために外に出る。
すると、オルレアン軍の本陣のある方角には煙が上がっていた。
本陣が焼かれた!もうお終いだ!
お、おお、落ち着け俺!まだ煙が上がっているだけで本陣が焼かれているとは限らない。
きっと、兵士の誰かが焚火をしているんだ。
うん、きっとそう。
たく、誰だよ戦争中にあんなに煙が出るほど、大きな焚火をするやつは。
そんな風に当時は考えたかった。
しかし、現実はそうはいかず、俺は焦ってしまう。
敗北したあかつきには、オルレアンはガリア国の傘下に入るようにアルテラ王が要求してきた。
誰がお前のようなオッサンの下につくかよ!
配下になるのなら、お美しいお姉さんのほうがいい。
まぁ、冗談なのだがな。
焦りを感じていると、俺たちのところに一人のガリア兵がやってくる。
彼は相当大変な目に遭ったのか、顔色が悪く、活舌もよくなかった。
アルテラ王は兵士に落ち着くようにいい、男が落ちつきを取り戻したのを見計らって、何があったのかを問う。
すると、彼はモードレッドが城下町で殺戮の限りを尽くしていると言うのだ。
ちょっと、ちょっと、話しが違うじゃんか!
何でモードレッドは本陣ではなく、城下町を襲撃しているんだよ!
目的を間違っているって!
兵士が詳細を言う。
何の前触れもなく、突然魔物が城下町に現れたらしい。
それを退治しに彼女が向かったが、気がつくとモードレッドは敵味方関係なく、目につく人間に刃を振るうようになったとのことだ。
認識を阻害されている。
これはメッフィーの仕業だと俺は考えた。
こんな芸当は、あいつにしかできない。
本陣の火計にモードレッドの乱心、どっちに向かうのか、俺の脳内に選択肢が現れる。
どちらを選ぶべきかを考えていると、今度はカレンとエミがガリア国の本陣にやってきた。
彼女たちは、オルレアン側の本陣にはライリーが向かっていることを告げてくれた。
ライリーが向かっているのなら何とかなるだろう。
そう判断した俺は、城下町に向かうことを決める。
城下町に向かうことを知らせると、きっと二人はついて行くと言いだすだろう。
けれど、二人はここまで走って来ており、体力の限界に来ているはずだ。
念のために尋ねてみると、俺の予想どおり、二人は一緒に城下町に向かうことを告げる。
俺はどうしたものかと悩む。
すると、一頭の馬が俺の視界に入った。
少し無茶をするが、これなら全員が早く移動をすることができるだろう。
ガリア国の馬を借り、三人乗りをして城下町に向かう。
城下町は以前に来たときとは違い、変わり果てていた。
モードレッドたちが暴れたせいなのだろう。
周囲に警戒をしつつ、前進していると、裏路地から一人の男性が現れ、俺に救助を求めた。
しかし、彼はいきなり倒れ、鮮血を地面に垂れ流す。
背後から何者かに斬られたのだ。
男の身体を踏みながら、銀の鎧を民の血で染めた金髪ポニーテールの女性が顔を出す。
で、出たー!
まるで幽霊でも目撃したかのように、俺は心の中で叫ぶ。
彼女はメッフィーの魔法にかかっているようで、俺たちのことを認識していなかった。
この国の民と勘違いし、俺たちに剣を向ける。
俺はどうにか彼女の動きを封じる方法を考える。
すると、エミが睡眠魔法を唱え、モードレッドを眠らせようとした。
だが、彼女は自身の頬を叩き、眠気を吹っ飛ばす。
さすが血塗られた堕天使と言われ、恐れられるだけのことはある。
すかさずエミは、彼女の動きを封じるために失神魔法を放つ。
今度は少し効果があったが、それでもモードレッドの動きを封じることにはいたらない。
こちらが攻撃を行っていると、モードレッドが反撃に出る。
自身に暗示をかけ、彼女の動くスピードが上がった。
俺は優れた動体視力でモードレッドの動きを捉えていたが、カレンたちには目で追いつくことが難しい。
接近してくる彼女の動きに注視していると、狙いはエミだと言うことがわかった。
どうやら先ほどの攻撃が、モードレッドを怒らせたようだ。
俺はエミに飛びつき、そのまま抱きしめて横に飛ぶ。
身体を反転させて俺が下になったことで、どうにか彼女はケガをすることがなかった。
実はこのとき、俺は頭を強く擦りつけてしまったのだ。
そのせいで頭の一部の髪が抜け、円形脱毛症のようになってしまった。
エミにケガはなかったが、俺の毛がなくなった。
え?寒い?
話を戻すが、俺は起き上がるとエミが立っていた場所を見る。
予想どおり、モードレッドが剣を振り下ろしていた。
とにかく接近されてはまずい。
俺は風魔法で塵旋風を生み出し、モードレッドとの距離を空ける。
彼女に勝つには、遠距離からの攻撃しかない。
魔法で地面から岩を取り出して、俺はモードレッドに投擲する。
そんな中、モードレッドは逃げる素振りをみせずに立ち向かってきたのだ。
彼女は再び自己暗示をかけ、強化した肉体で剣を振り下ろす。
俺の投げた岩は豆腐を切るかのように、簡単に真っ二つにされる。
何か別の方法を考えなければならない。
カレンに指示を出し、足場の地面を音の力で破壊してもらった。
土煙が上がると、俺たちは建物の中に避難する。
どうするべきか、皆で話し合っていると、モードレッドのところに誰かがやってきた。
アルテラ王だ。
彼は、モードレッドと話す。
しばらく様子を窺っていると、モードレッドがアルテラ王に斬りかかろうとする。
俺は咄嗟に呪文を唱え、アルテラ王の前に霜柱を生み出すと、彼を守った。
すると、今度は俺が標的になる。
窓越しの戦いだ。
モードレッドが接近すると、俺はウエポンカーニバルで鎖を生み出し、ウエポンアローで彼女を拘束しようと試みる。
だが、モードレッドは桁外れの身体能力で跳躍すると、鎖を躱す。
空中では身動きが取れないことを見越した俺は、ダガーを生み出して彼女に飛ばす。
しかし、小さいダガーでは威力が弱い。
俺の攻撃は彼女の鎧に弾かれてしまった。
モードレッドは剣を振り下ろそうとする。
だが、俺は全然怖くなかった。
本当だからな!嘘ではないから!
いや、少し嘘を吐いた。
本当は少しだけ怖かった。
だって相手は血塗られた堕天使だよ!
まったく怖くないわけがないじゃないか!
モードレッドは剣を振り下ろそうとしたが、彼女の一撃は俺に届かなかった。
攻撃が当るよりも早く、俺の鎖による拘束のほうが早かった。
肢体を拘束されたモードレッドは、身動きを取ることができない。
彼女の動きを封印すると、アルテラ王が礼を言い。
メッフィーに姿を見せるように言う。
すると、驚いたメッフィーが姿を現した。
彼は、アルテラ王が魔法にかかっていないことに驚く。
どうやら、アルテラ王は最初から魔法にはかかっておらず、演技をしていたらしい。
あのメッフィーを欺くとは、アルテラ王はなかなかのやり手だ。
メッフィーは先端の尖った杖を取り出すと、アルテラ王に投げる。
俺は彼を守ろうと、先ほどと同じように霜柱による守りの壁を生み出す。
敵の放った杖は弾かれて地面に落ちると、メッフィーは俺の存在を思い出す。
おいおい、忘れていたとはいい度胸ではないか!
そんなに俺は存在感が薄いって言うのかよ……。
俺って存在感が薄いってことはないよな?
何だか心配になってきた。
自身の存在感がどうなのか気になるが、とにかく今は執筆作業だ。
アルテラ王に離脱をするように言い、俺はメッフィーと対峙する。
すると、彼は自分が何人いるのか問うてきた。
俺の目には一人しか映らない。
正直に一人だと答えると、メッフィーは不正解と言い、正解は五人だと言う。
だが、どこにも残りの四人がいなかった。
そんな中、カレンが俺の名を呼んで泣き叫んだ。
しかし、俺の肉体には何も起きてはいない。
何が起きたのかがわからず首を傾げていると、メッフィーまでもが驚く。
彼の態度を見て、俺はすべて理解することができた。
そう、俺は事前にメッフィー対策をしていたのだ。
その効果が発揮され、俺には認識阻害の魔法が効かなくなっている。
俺はどうして魔法にかからないのかをメッフィーに説明する。
このとき俺は「ねぇ、ねぇ、どんな気持ち?お得意の認識阻害の魔法が通用しない相手が現れて、どんな気持ち?悔しい?」と聞きたかったが、そんなことを言えば俺の評判が悪くなりそうだったので自重した。
悔しそうな表情を見せるメッフィーを見て、俺は達成感を覚える。
俺は強気になって、何か対抗策があるのかと問う。
すると、メッフィーは余裕がないのか、荒げた口調で対抗策を出してきた。
カレンとエミの認識を変え、同士討ちをしようとしてきたのだ。
二人を相手にすることになり、俺は防戦一方になる。
中々決着がつかないでいると、メッフィーはカレンたちに自殺をするように命令を出し、俺に選択肢を与えてきた。
俺が自ら命を絶てば、二人の命を助ける。
だが、俺が生き残る道を選べば、二人を殺すというものだった。
魔物らしい選択肢だ。
けれど、俺が死んだところで二人の命を助ける気がないことは最初からわかりきっている。
必死になって作戦を考えていると、メッフィーは早く決断するように言ってきた。
この短気野郎め。
俺は自分の命を助けるために、たくさんの武器を生み出す。
そして、二人の逃げ場を失くすように範囲攻撃をした。
俺の攻撃はカレンたちを真っ赤に染め上げた。
その攻撃を見たメッフィーは高笑いをするが、それは長くもたなかった。
彼はたくさんの武器に、肉体を貫かれていたのだ。
俺の魔法が当ったメッフィーは、その場で倒れて絶命する。
彼が死んだことで、皆にかかった魔法が解けた。
遠くで様子を見ていたアルテラ王が俺のところにやってくると、直ぐに戦争を止めさせることを言う。
その瞬間、彼の身体は氷の塊に体を貫かれた。
そして上空から聞いたこともない女性の声が聞こえ、俺は驚いた表情で上を向く。
そこには見知らぬ女性が空中浮遊をしていた。
アルテラ王を攻撃した女が何者なのか、それは次の機会に書くとしよう。
今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字や文章的に可笑しな箇所などがありましたら、教えていただけると助かります。
あらすじを読んでくださったあなただけに、第二十一章の内容の一部をご紹介!
空中浮遊をしていた女性は、オケアノス大陸を支配する魔王だった。
父親を攻撃された光景を目の当たりにしたモードレッドは、魔王に戦いを挑む!
戦闘中に魔王がデーヴィットに気づくと、彼女は彼の母親であるアリシアのことを言い、意味深な言葉を残してこの場を去った。
彼女の言葉の真意を知りたいデーヴィットは、オケアノスに向かうことを決めるが、魔法の副作用により、三日間眠ることになった。
目が覚めると、デーヴィットはペンドラゴン王と話し、セプテム大陸に向かうことを告げる。
セプテム大陸には、獣人族が住んでおり、彼らは辛い歴史を持つ。
そのせいで、人族に対して風当りが悪いのだ。
デーヴィットたちは獣人族を刺激しないで、話し合いにもち込むために、獣人族に変装することを決める。
アイテムを揃えるために、ガリア国に向かうが、町は当然ながら以前来たときとは雰囲気が変わっていた。
ガウェインと会い、彼らは城に招かれると、モードレッドから金書庫に案内された。
そして、ガリア国の裏の歴史を知ることになる。
その裏の歴史には、獣人族が多くかかわっていたのだ。
モードレッドのお陰で獣人族のことを学んだデーヴィットたちは、彼女の母親の墓参りにいく!
こんな感じの内容になっています。
淡々と流れを書いただけですのね、急に話が飛んでいる箇所もあります。
明日は第一話を投稿する予定なので、楽しみにしていただけたら幸いです。




