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第二十三章 第七話 決着メフィストフェレス

 今回のワード解説


 読む必要がない人は飛ばして本文のほうを呼んでください。


 本文を読んで、これって何だったかな?と思ったときにでも確認していただければと思っています。


アルギニン……天然に存在するアミノ酸のひとつ。


異所性骨化……本来、骨の形成が起こらない軟部組織(筋肉、腱、靭帯、臓器、関節包)に、石灰が沈着して骨のようになることがある。これが異所性骨化で、異所的骨形成ともいう。


海馬……大脳辺縁系の一部である、海馬体の一部。特徴的な層構造を持ち、脳の記憶や空間学習能力に関わる脳の器官。


間葉系幹細胞……中胚葉性組織(間葉)に由来する体性幹細胞。間葉系に属する細胞への分化能をもつ。


GABA……脳内でGABAは「抑制系」の神経伝達物質として働いている。GABAは正反対の働きをしている。脳内の神経伝達物質は、興奮系と抑制系がほどよいバランスをとっていることが大切である。興奮系が適度に分泌されると気分が良く、元気ややる気にあふれ、集中力やほどよい緊張感がある。


GAGA受容体……イオンチャネル型受容体 および イオンチャネル内蔵型受容体 の一つである。 リガンド は主要な 中枢神経系 の抑制性 神経伝達物質 である γ-アミノ酪酸 (GABA)である。 活性化されると、GABA A 受容体は Cl − を選択的に イオンチャネル を透過させることにより、 神経細胞 に過分極が生じる。 これにより、活動電位が生じにくくなり 神経伝達 の阻害効果を引き起こす。


血管内皮細胞……文字通り 血管の内皮を構成し、血液が流れる内腔と接している扁平な細胞 である。 心臓、動脈、静脈、毛細血管など、全ての血管に存在し、血管収縮や血液凝固、血管新生、炎症等に関係する。 細胞の間隙を通じ、血管内外の物質をやり取りする機能がある。


腫脹……身体の一部が膨らみ隆起することであり、腫れ物を形成する。 原因には先天性、外傷性、炎症性、新生物などがある。


神経伝達物質……ニューロンと細胞との間で信号を伝達する脳内の化学物質です。少なくとも 100 の神経伝達物質があり、それぞれ異なる機能を持ちます。


塵旋風……つむじ風のこと。


脳回路……脳の中のネットワークのようなもの。脳の機能は神経細胞のネットワーク(神経回路)により担われており、神経回路は胎生期に遺伝的プログラムにより大まかに形成されたのち、主に出生後に使われながら再編され、成熟した回路になっていく。赤ちゃんの驚異的な成長スピードはこの回路再編機構のなせるわざであり、また回路再編が適切に進まないことが自閉症などの発達障害の一因となることも示唆されている。


脳内神経伝達物質……神経伝達物質とは、脳内で神経細胞から次の神経細胞へと情報を伝達するための物質です。これは別名「脳内物質」と呼ばれることもあり、すでに数100種類が見つかっています。それらの脳内物質の中でも特に“精神活動”の面で重要視されているのはドーパミン・ノルアドレナリン・セロトニンの3つ。


ヒスチジン……アミノ酸の一種でプロピオン酸のこと。


ヒッグス粒子……「神の子」とも呼ばれ、宇宙が誕生して間もない頃、他の素粒子に質量を与えたとされる粒子。


鼻腔……鼻のあなの中。鼻孔から咽頭(いんとう)までの、空気の通路。内面は粘膜で覆われ、嗅覚器がある。吸気を暖め、またちりなどを防ぐ。


迷走神経……12対ある脳神経の一つであり、第X脳神経とも呼ばれる。副交感神経の代表的な神経 。複雑な走行を示し、 頸部と胸部内臓 、さらには腹部内臓にまで分布する。脳神経中最大の分布領域を持ち、主として副交感神経繊維からなるが、 交感神経とも拮抗し、 声帯 、心臓 、胃腸 、消化腺の運動、分泌 を支配する。多数に枝分れしてきわめて複雑な経路を示すのでこの名がある 。延髄 における迷走神経の起始部。迷走神経背側核、 疑核 、 孤束核を含む。迷走神経は脳神経の中で唯一 腹部にまで到達する神経である。

(まじな)いを用いて我が契約せしフラウとノームとウンディーネに命じる。その力の一部を我に貸し、言霊により我の発するものを実現せよ。フロストカラムウォール」


 俺は呪文を唱えると、アルテラ王の前に巨大な霜柱が現れ、先の尖った杖を弾く。


 どうにか間に合ったことに、俺は安堵の息を吐いた。


 霜柱を生み出すには五つの条件がある。


 最低気温がゼロ度以下、火山灰を含む土地、大きい土粒と微小な土粒があること、土が柔らかい、土に適度な水分、この条件がなければ霜柱を生み出すことができない。


 セプテム大陸は活火山のある大陸だ。


 活発な時期は周囲に火山灰を降らせている。


 なので、この大陸であればほとんどの場所で霜柱ができる。


 ノームの力でグラウンドの一部を柔らかくし、ウンディーネの力で地面に三十パーセント以上の水分を送り、フラウの力で地表の温度をゼロ度以下に下げた。


 一部の地面に影響を与えたことで、地表近くの水分を含む地表を凍らせた。


 そして凍結していない少し下の地中の水分が、凍った土の粒の狭い隙間から地面に向かって上がって行き、そして冷たい空気に触れたことによって凍結して氷の柱を生んだ。


「そういえば、デーヴィット王子もこの場所におりましたな。衝撃的過ぎて一時的にあなたがいたことを忘れておりましたよ」


 メフィストフェレスが無表情で俺のほうを見る。


 俺は窓から外に飛び出ると、モードレッドの横を通り過ぎ、アルテラ王の前に立つ。


 二つの魔法を同時に展開させておくのはキツイ。


 霜柱のほうを消し、道化師の男と対峙する。


「デーヴィット王子、あなたが私の前に立つのは結構ですが、勝てると思っているのですか?私の魔法の前に手も足も出なかったというのに」


 あざ笑うかのように、メフィストフェレスが言ってくる。


「もちろん勝てると思っているからお前と対峙しているんだ」


「ほほう、それは楽しみですね。ではお手並み拝見といきましょう」


 彼はパチンと指を鳴らす。


 すると霜柱に弾かれて地面に落ちていた杖が、メフィストフェレスの手元に引き寄せられる。


「では問題といきましょう。私何人に見える?」


 彼は自分が何人なのかを問うてきた。


 しかし、俺の視界に映る人数は一人しかいない。


「何人って一人だろう」


「残念、正解は五人でした」


 俺の答えた人数が不正解だと言うと、彼はニヤリと笑みを浮かべる。


 しかし、俺の目には本当に一人しか映っていない。


 どこかに隠れているのだろうか。


 周囲を見渡すも、どこにも残り四人のメフィストフェレスは見当たらない。


「この一撃で終わらせてあげましょう」


「「デーヴィット逃げて!」」


 建物の中からカレンとエミが逃げるように叫ぶ。


 しかし、目の前にいるメフィストフェレスは、佇んでいるだけで何もしてこない。


「デーヴィット!いや――!」


 建物の中にいるカレンが泣き叫ぶが、特に俺には何も起きてはいなかった。


「そうか。事前に対策を取っていたから、俺には彼女たちが見えているものが見えていないんだ」


 敵の術中に嵌っていないことを自覚すると、俺は淡々と呪文を詠唱する。


(まじな)いを用いて我が契約せしケツァルコアトルに命じる。その力の一部を我に貸し、言霊により我の発するものを実現せよ。ダストデビル」


 直射日光により、温められた地表面から上昇気流が発生し、周囲から強風が吹きこむ。


 すると渦巻き状に回転が強まった塵旋風が誕生し、メフィストフェレスに向けて突き進む。


「何!」


 塵旋風を放つと、メフィストフェレスは驚いた顔をして横に飛び、巻き上げる風を躱す。


「これはどういうことだ。まさか、本当に魔法が効いていないとでも言うのか!」


 俺が標的を間違わないで攻撃をしてきたのが、相当精神的ダメージを与えたようだ。


 彼は余裕がなくなったようで、語気を強めている。


「俺はずっとお前の魔法について考えていた。認識阻害系の魔法は、対象者を視認していなければならない。だけどお前は一人の対象者だけではなく、広範囲で多くの人々を欺かせていた。俺はお前が魔物だから、人間の常識が通用しないと思っていた。だけどそれは違う。俺なりに考えて理論を立てた。そしてそれを元に対策を立てたが、過程はともかく結果から言えば正解だったようだ」


 俺は右手をメフィストフェレスに向ける。


「俺の立てた理論はこうだ。まず、お前は魔力を微小な粒子に変えて周囲に放つ。それを人が鼻腔から吸引し、鼻の粘膜から吸収して血液に混じると、摂取した成分が脳へと送り込まれる。それにより脳は、負荷によって脳内神経伝達物質の過剰分泌で生じた脳回路の異常が発生。脳回路上を制御、抑制されない情報が駆け巡るという暴走状態に陥った脳は、情報のつながりが統合できなくなって混乱してしまう。フィルターのかからない、あらゆる刺激情報が直接脳に入力されることになり、脳の海馬に架空の記憶を植え付けた」


 俺が頭の中で考えた理論を説明すると、メフィストフェレスは顔を引きつらせる。


 どうやら俺の見立ては正しかったようだ。


 俺は最後まで語り、やつの度肝を抜く。


「これにより魔力の影響を受けた悩は、お前の都合のいいように情報の処理をする。例え目や耳から入った情報と異なっていたとしても、最終的に決めるのは脳だからな」


 俺はニヤリと笑みを浮かべて、メフィストフェレスを見る。


 彼は目をぴくぴくさせていた。


「魔法の種さえわかればこっちのものだった。ライリーにお願いして、俺の脳内で異常な興奮が起きたときに、それを押さえてくれる働きをする神経伝達物質のGABA(ギャバ)を、脳神経のGABA受容体に結合するようにした。その結果、脳回路が抑制されて余計な情報を遮断できた俺は、お前の認識を阻害する魔法を無力化させたというわけだ」


 どうして俺だけが彼の魔法が効かないのかを説明すると、一歩前にでる。


 このとき、俺は何とも言えない感動に包まれていた。


 レックスとの戦闘で、俺がウエポンカーニバルを魔法で再現することができたときに感じた、あの感情に近い。


「さぁ、俺には効かないと分かったところでどうする?何か対抗策はあるのか?」


「対抗策!もちろんありますよ!デーヴィット王子には通用しないですが、あなたのお仲間には効果を発揮しております。さぁ、デーヴィット王子はあなたたちの敵です。殺しなさい」


 メフィストフェレスが指を鳴らすと、建物の中に避難していた金髪のミディアムヘアーの低身長の女の子と、薄い水色のウエーブのかかったセミロングの女の子が外に出てきた。


 エトナ火山の地下闘技場のときのように、俺たちを同士打ちさせようとしているのだろう。


 俺はメフィストフェレスに注意を払いつつ、建物から出てきたエミとカレンのほうを向く。


「デーヴィットはあたしが守る。(まじな)いを用いて我が契約せし知られざる負の生命の精霊に命じる。その力の一部を我に貸し、言霊により我の発するものを実現せよ。ショック」


 エミが失神魔法を唱える。


 あの呪文は対象者の迷走神経を活性化させることで血管が広がり、心臓に戻る血流量が減少して心拍数を低下させる。


 これが原因で血液が一時的に不足となって失神を起こす。


 この呪文は無敵貫通だ。


 どんなに屈強な戦士でも、内部から肉体を攻撃させられたらひとたまりもない。


 俺は精神を集中させて意識が失いそうになるのを必死に我慢する。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 荒い呼吸になってしまったが、どうにか耐えることができた。


 本当にエミは敵に回したくない。


「アルテラ王、ここから離れてください。あなたを巻き込むことになります」


「わかった。そなたに任せ、一旦引くとしよう」


 この場から離れていくアルテラ王の後ろ姿を見ながら、俺は対策を考える。


「しぶといわね。なら、この呪文であなたの動きを封じるわ」


 エミが動きを封じると言い出した瞬間、俺は焦る。


 彼女が唱えようとしているのはおそらく石化魔法。


 正確には石化ではなく骨化なのだが、あの魔法は発赤、熱感、圧痛を伴った腫脹が出現することで、二百六番目のアミノ酸であるRアルギニンがヒスチジンに変化する。


 遺伝子の変異により、血管内皮細胞が間葉系幹細胞の形質を獲得することで、その細胞が骨格筋や筋膜、腱や靭帯に集積することで異所性骨化が広がり、関節の可動性が失われる。


 その結果、次第に身体の関節が動かなくなり、石化のように動けなくなるのだ。


 しかも、骨化を促進させるフレア・アップもエミは使える。


 彼女の視界に捉えられれば、防ぐことができない。


 エミよりも早く呪文を唱えなければ、俺の身体は石のように動けなくなる。


(まじな)いを用いて我が契約せし知られざる負の生命の精霊に命じる。その力の一部を我に貸し、言霊により我の発するものを実現せよ。アスフィケイション」


(まじな)いを用いて我が契約せしフラウとノームとウンディーネに命じる。その力の一部を我に貸し、言霊により我の発するものを実現せよ。フロストカラムウォール」


 互いに呪文を唱えると、エミの前に霜柱が出現し、彼女の周囲を覆う。


 対して、俺の身体には何も異常が起きているようには感じられない。


 どうやら僅かな差で、俺の呪文の速度が上回ったようだ。


 伊達に何度も修羅場を潜り抜けてきたわけではない。


 エミの魔法は無敵貫通だが万能ではない。


 視界を封じられればただ女の子だ。


「もう、何やっているのよ。(まじな)いを用いて我が契約せしハルモニウムに命じる。その力の一部を我に貸し、言霊により我の発するものを実現せよ。パァプ」


 霜柱に覆われたエミを見て、カレンが呪文を唱える。


 俺の魔法で生み出した霜柱に、対象物の強度を上回る音による空気の振動が送られ、エミを覆っていた氷の壁は簡単に崩壊した。


 エミ一人なら先ほどの魔法で対処ができるが、カレンと一緒になるとそうはいかないようだ。


 まだメフィストフェレスを倒してもいない。


 俺は後方にいる彼をチラリと見る。


 道化師の男は仲間同士で戦っている姿を見て、ニヤついていた。


 一人ずつ相手にしていては、互いの契約している精霊の生命力が尽きてしまう。


 メフィストフェレスは、それを狙っている可能性が高い。


 ならば、短期決戦にもち込む必要がある。


「そろそろ飽きてきました。デーヴィット王子の絶望する顔を拝みたいものです。さあ、お二人とも、そろそろ次の公演といきますよ」


 俺の後方で指が鳴らされた音が聞こえた。


 その瞬間、エミとカレンは自身の首に両手を持っていく。


「デーヴィット王子に選択権を与えます。ここで自害をするのであれば、お二人をお救いしましょう。自分の命が可愛ければ、何もしなくて結構。お二人にはそのまま自決してもらいます」


「な!」


 後方から卑劣なことを言うメフィストフェレスの言葉が聞こえた。


 自分の命と仲間の命を天秤にかけられた。


 俺は歯を食い縛る。


 おそらく、俺の後ろでやつは、下卑た笑みを浮かべているだろう。


 二人を助けたい。


 だけど、彼が約束を守るとは思えない。


 さんざん俺たちを惑わして、自分は安全な場所で高みの見物をするようなやつだ。


 自分が自ら命を絶ったところで、約束は守られないだろう。


 だからと言って、このままでいるわけにはいかない。


「まだですか。早く決めてくれないと、私が彼女たちを自決させますよ」


 考えていると、メフィストフェレスが催促してくる。


 時間は残されていない。


 早く方法を見つけ、決断しなければ。


「ごめん。カレン、エミ、先に謝っておく!(まじな)いを用いて我が契約せしノームとウィル・オー・ウィスプに命じる。その力の一部を我に貸し、言霊により我の発するものを実現せよ。ウエポンカーニバル!」


 武器の作成に必要な物質を集め、質量を持たせることのできるヒッグス粒子を纏わせることで、本物と同様の武器を生み出す。


「武器を放て!ウエポンアロー!」


 空中に展開した数々の剣や槍を二人に向けて放つ。


 そして俺はぶつぶつと言葉を漏らす。


 逃げ場を失うぐらいに敷き詰められた武器は、カレンとエミの身体に振れると、彼女たちを真っ赤に染め上げた。


 無数の武器に接触した二人は仰向けの状態で倒れる。


「アハハハハハ。仲間を自らの手で殺しましたか。愉快、愉快、私としては意外な選択だったのですが、これはこれで面白い。アハハハハハ………ゴハッ!」


 後方でメフィストフェレスの高笑いが聞こえたかと思うと、続いて液体のようなものがベチャベチャと落ちるような音が耳に入る。


 その音を聞いた瞬間、俺は口角を上げて振り返った。


 彼の身体には無数の剣や槍といった武器が突き刺さり、身体中から血を流している。


「な……ぜ……だ。お前が……放った武器は……前方に飛んで……味方を……殺したはず」


「誰が展開できるのが前方だけと言った?それにカレンたちは殺していない。カレンたちに向けて放ったのは、お前を油断させるためのフェイクだ」


 メフィストフェレスは悪魔のような魔物だ。


 絶対に約束は守らないというほうでは、絶大な信頼をおける。


 だからと言って、本気でやらなければメフィストフェレスの目を欺けれないと思った。


 そこで、俺は本気で魔法を二人に放った。


 だけど殺すわけにはいかない。


 無数の剣や槍が彼女たちに接触する前に、武器の形状を保つ物質と、ヒッグス粒子を分解して消した。


 だけどそれではギリギリで攻撃をキャンセルしたことがバレてしまう。


 そこで、俺はメフィストフェレスに聞こえないように呪文を唱えた。


 ウンディーネとノームに指示を出し、水分子を集めて作った水の溶媒に塗料の分子を溶解させ、赤色の塗料を作りだし、二人に付着させた。


 真っ赤に染まった二人にメフィストフェレスが気を取られている間に、彼の目の前でもう一度武器を展開させて瞬く間に放ったというわけだ。


「まさか……私が……人間ごときに……遅れを取る……とは」


 身体中を武器で貫かれたメフィストフェレスは地面に倒れ、彼を中心に血の水溜まりを作り出す。


「ちょっと、これどういうことよ!」


「何で私たち真っ赤になっているわけ」


 どうやら二人が目を覚ましたようだ。


 塗料の件は伏せていたほうがいいだろう。


 正直に言って酷い目に遭いたくない。


「デーヴィット王子、よくぞメフィストフェレスを倒してくれた。この国の王として感謝する」


 巻き込まれないように遠くに離れていたアルテラ王がこちらに駆け寄ると、俺の手を握る。


「おい、デーヴィット!これはお前の仕業だろう。早く解放しやがれ」


 鎖で拘束されていたモードレッドが、拘束を解くように喚く。


 しっかり俺だと認識している。


 どうやらメフィストフェレスが倒れたことで、やつの魔法が解けたようだ。


 彼女を拘束している鎖を消すと、一段落がつき、俺は安堵した。


「アルテラ王」


「そなたがいいたいことはわかっている。すぐに兵を引かせよう。もし、ペンドラゴン王が許してくれるなら、もう一度……和平……を!」


 アルテラ王がすぐに兵を引き、和平と口にした瞬間、彼の口から鮮血が噴き出す。


 地面から先端が尖った氷が出現し、ガリア国の王に突き刺さっていた。


「まさかメフィストフェレスが、わらわの命令を達成できずに死ぬとは思ってもいなかった。だが、ガリア国の王を始末することができたからよしとしよう」


 上空に聞きなれない声が聞こえ、俺は顔を上げる。


 そこには、見たことのない女が空中に浮遊していた。


 今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。


 誤字脱字や文章的に可笑しな箇所などがありましたら、教えていただけると助かります。


 今回の話で第二十三章の話は終わりです。


 明日は、第二十三章の内容を纏めたあらすじを投稿する予定です。

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