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第十九章 第十一話 巻き起こる同様と始まり

 今回のワード解説


 読む必要がない人は飛ばして本文のほうを呼んでください。


 本文を読んで、これって何だったかな?と思ったときにでも確認していただければと思っています。


アルビノ……黒い色素であるメラニンをもともと持たない、色素欠乏症とも呼ばれる遺伝子疾患。 詳しい原因は解明されておらず、治療も予防もできない。 また、皮膚や体毛は白いが命に直接危険が及ぶことはない。


一酸化炭素……炭素の酸化物の一種であり、常温・常圧で無色・無臭・可燃性の気体である。一酸化炭素中毒の原因となる。


海馬……大脳辺縁系の一部である、海馬体の一部。特徴的な層構造を持ち、脳の記憶や空間学習能力に関わる脳の器官。


可溶性……物質が液体中にとけこむことのできる性質。


幹細胞……分裂して自分と同じ細胞を作る能力(自己複製能)と、別の種類の細胞に分化する能力を持ち、際限なく増殖できる細胞と定義されている。


眼振……自分の意思とは関係なく眼球が動く現象。病的なものと生理的なものがある。一般的には眼振がんしんと略して呼ぶことが多い。


凝固蛋白……タンパク質が固まったもの?


凝血塊……血液の塊のことである。


血漿……血液 に含まれる液体成分の一つで、血液55%をしめる。血液を試験管にとって遠心沈殿すると、下の方に赤い塊りができ、上澄は淡黄色の液体になる。


血小板……血液に含まれる細胞成分の一種である。血栓の形成に中心的な役割を果たし、血管壁が損傷した時に集合してその傷口をふさぎ(血小板凝集) 、止血する作用を持つ。


血管壁……単層の内皮細胞からなっている。この血管壁の細胞間隙を通して、血液中と組織で、酸素と二酸化炭素の受け渡しや、栄養素の供給と老廃物の回収など物質交換を行っている。


骨髄……骨皮質の内側で骨梁と骨梁に囲まれた部位にある組織で,成人では約1600~3700 gの生体内最大の臓器であり,血球成分に富み赤く見える赤色髄と脂肪組織が大部分を占める黄色髄とに分けられる。


コラーゲン……皮膚や腱・軟骨などを構成する繊維状のたんぱく質で、人体のたんぱく質全体の約30%を占める。ゼラチンの原料としても知られる。人の皮膚・血管・じん帯・腱・軟骨などの組織を構成する繊維状のたんぱく質です。人間の場合、体内に存在するすべてのたんぱく質の約30%を占めており、そのうちの40%は皮膚に、20%は骨や軟骨に存在し、血管や内臓など全身の組織にも広く分布しています。コラーゲンを構成するアミノ酸の生成にはビタミンCが必要なため、ビタミンCが不足するとコラーゲンの合成が出来なくなり、壊血病を引き起こします。またビタミンAもコラーゲンの再構築に関わっています。


セロトニン……生理活性アミンの一。生体内でトリプトファンから合成され,脳・脾臓・胃腸・血清中に多く含まれる。脳の神経伝達などに作用するとともに,精神を安定させる作用もある。


線維芽細胞……結合組織を構成する細胞の1つ。コラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸といった真皮の成分を作り出す。細胞小器官が豊富であり、核小体が明瞭な楕円形の核を有し、細胞質は塩基好性を示す。


相転移……ある系の相が別の相へ変わることを指す。しばしば 相変態とも呼ばれる。熱力学または 統計力学において、相はある特徴を持った系の安定な状態の集合として定義される。


単核球……白血球の一種で、最も大きなタイプの白血球である。マクロファージや、樹状細胞に分化することができる。


トロンビン……血液の凝固に関わる酵素セリンプロテアーゼの一種。


トロンボプラスチン……血液凝固に関与する因子の一つで,リポタンパク質。カルシウム-イオンの存在下でプロトロンビンをトロンビンに変える。


貪食作用……体内の細胞が不必要なものを取り込み、消化し、分解する作用である。


バッグドラフト……火災 の現場で起きる 爆発 現象である。 室内など密閉された空間で火災が生じ 不完全燃焼 によって 火 の勢いが衰え、可燃性の 一酸化炭素 ガスが溜まった状態の時に 窓 や ドア を開くなどの行動をすると、熱された一酸化炭素に急速に 酸素 が取り込まれて結びつき、 二酸化炭素 への 化学反応 が急激に進み爆発を引き起こす。


ヒッグス粒子……「神の子」とも呼ばれ、宇宙が誕生して間もない頃、他の素粒子に質量を与えたとされる粒子。


フィブリン……血液凝固に関連するタンパク質のフィブリノゲンが分解され活性化したものである。


フィブリノゲン……血液凝固の最終段階で網状の不溶性物質フィブリンとなり、血球や血小板が集まってできた塊(血栓)のすき間を埋めて、血液成分がそこから漏れ出ないようにしている。 このため、フィブリノゲンが低下すると血液が固まりにくくなり、止血されにくくなる(出血傾向)。


不完全燃焼……ガスの燃焼には十分な酸素と一定の温度が必要であるが,これらの条件が満足できず,酸化反応 (燃焼) が最後まで完結しないで反応途中の中間生成物 (一酸化炭素など) が発生している状態をいう。一酸化炭素は強い毒性をもつ物質で,中毒事故などを招くことになるので注意が肝要である。


不溶性……液体に溶解しない性質。


プロトビン……血漿中に含まれるタンパク質の一種。体組織が破壊された際などに「トロンビン」へ変化し、血液凝固を起こす機能を持つ。


マクロファージ……白血球の1種。生体内をアメーバ様運動する遊走性 の食細胞で、死んだ細胞やその破片、体内に生じた変性物質や侵入した細菌などの異物を捕食して消化し、清掃屋の役割を果たす 。

「デーヴィット、今直ぐ回復させるからな。(まじな)いを用いて我が契約せし知られざる生命の精霊に命じる。その力の一部を我に貸し、言霊により我の発するものを実現せよ。ブラッドプリュース」


 ライリーが俺に回復魔法をかけてくれた。


 破れた血管を修復しようと、血小板が塊になって血管壁に付着。


 次に凝集した血小板からセロトニンが放出され、血管の収縮を助けて血流が低下すると同時に、血小板や破れた組織からトロンボプラスチンが放出され、血漿の中にある凝固蛋白やカルシウムと作用して、血漿中のプロトロビンをトロンビンに変換。


 さらにトロンビンが可溶性のフィブリノゲンを、不溶性のフィブリンに変換され、フィブリンは細長い線維状の分子で集まって網目構成をつくる。


 そこに赤血球が絡まるようにして凝血塊が生まれ、血管の傷を塞ぐ。


 そして血管から抜け出した単核球が貪食作用でマクロファージになると、さらに色々な化学物質を放出し、それが刺激になると線維芽細胞が呼び出されコラーゲンを作る。


 その後、線維芽細胞、毛細血管がコラーゲンを足場とし、この三者が欠損部を埋め、創面をくっつけて真皮に近い丈夫な組織を作り出した。


 そして骨髄から作り出された幹細胞が赤血球、血小板に分化し、最終的に成熟したものが血液中に放出され、失った血液を補う。


「ありがとう。助かった」


「お礼なんかいい。仲間として当然のことをしたまでだからな」


「カレンとタマモはアリスの護衛を頼む。エミ、レイラ、ライリーは悪いが俺と一緒にレックスと戦ってくれ」


「「「「「了解」」」」」


 観客席にいたエミは、飛び降りて着地すると構えた。


「仲間が解放されて戦力が増えただけで粋がるなよ!いくら集まろうが、下等生物が俺に勝てるわけがない!」


 額に青筋を浮き出させながら、レックスは指を鳴らす。


 その瞬間、レイラとエミとライリーの三人の足下が光る。


「地面からの攻撃が来る。避けろ!」


 レイラたちに躱すように言うが、俺の指示を出すタイミングが遅かったようで、彼女たちは地面から出た鎖に拘束されてしまう。


「キャー」


 観客席からカレンの悲鳴が聞こえ、声がしたほうに顔を向ける。


 先ほどの攻撃はフィールドにいる俺たち以外にも狙っていたようで、観客席にいた三人までもが拘束されてしまう。


「フハハハハ。これで再び貴様は一人だ。音の攻撃をしてくるあの女は厄介だ。呪文を唱えられないようにしてやろう」


 カレンの身体に巻き付いた鎖のうち、首に巻き付いた部分が動く。


 すると彼女は苦しそうな表情をして目尻から涙を流す。


「カレン!」


「身動きが取れない今のうちに一人ずつ消していくか。ファイヤーボール」


 空中に直径六メートルの大きさの火球が五つ出現。


 一気に部屋の気温が上がったのか、額から汗が噴き出る。


 さすが魔王だけあって、レイラと同等の魔力量だ。


 ファイヤーボールはデスボール並の大きさであり、それが五つも同時に展開されている。


「さて、どいつから殺してくれようか。そうだな。まずはそこのアルビノのガキからだ」


 レックスがアリスを標的にした。


 まずい。


 やつが攻撃を放つ前に閉じ込めなければ。


(まじな)いを用いて我が契約せしウィル・オー・ウィスプとフラウに命じる。その力の一部を我に貸し、言霊により我の発するものを実現せよ。ライトウォール!Ⅹ八、Y三、Z五、R三。Ⅹ-(マイナス)十、Y六、Z五、R三。Ⅹ二、Y六、Z四、R三。Ⅹ-四、Y五、Z五、R三。Ⅹ一、Y六、Z五、R三」


 実現させる言葉を言った直後、俺はアルファベッドと数字で指示を出す。


 すると、光で作られた壁が出現し、レックスの生み出した火球を内部に閉じ込めた。


 自身が立っている位置を原点とし、左右をX、前後をY、上下をZと定義させ、原点から一メートル先を一と定義し、Rで半径を伝える。


 精霊たちに伝えた座標にウィル・オー・ウィスプが空気中の光子を集め、フラウが気温を下げることにより相転移が起き、光子に空気中にあるヒッグス粒子を纏わりつかせる。


 これにより光に質量が生まれ、直径六メートルの光の球体を生み出した。


 触れることのできる光の壁が火球を覆う中、消すタイミングを窺う。


「引っかかったな!俺はこれを待っていた!」


 光の壁を生み出す魔法を発動した瞬間、レックスが地を蹴って走り、一気に距離を詰めると俺の顔面に拳を叩き込む。


 不意を衝かれて一瞬気が抜けそうになるが、俺は倒れまいと右足を後方に下げて身体を支えて踏ん張る。


「フハハハハ。サンドバッグだ」


 レックスは次々と拳を叩き込む。


 俺は反撃に出ることができずに、ただ殴られるだけの状況となっていた。


「デーヴィット、どうして反撃に出ない」


 ライリーが心配して声を張り上げる。


 俺だって好きで殴られているわけではない。


 本当は反撃に出たい。


 だけどそれができない状況にある。


「何で反撃に出ないのだ。ただ殴られるだけというのはデーヴィットらしくないではないか。まさか何か狙いでもあるのか?」


「その逆よ。デーヴィットは反撃に出たいと思っている。だけどあたしたちを守るために、それができなくなっているの」


「それはどういうこと何だい?」


「あれよ。レックスの魔法で生み出されたファイヤーボールを、デーヴィットが光の壁で覆ったでしょう。彼は酸素供給を絶ち、炎を沈下させた」


「今はファイヤーボールが消えておるな」


「そう、消えているわ。だけど消えたからと言って、完全には安心できないの。バッグドラフトと言って、密閉された空間の中で不完全燃焼によって火の勢いが衰え、可燃性の一酸化炭素ガスが溜まった状態のときに、空気に触れてしまうと、熱せられた一酸化炭素に急速に酸素が取り込まれて結びつき、二酸化炭素への化学反応が急激に進んで爆発を引き起こすのよ。爆発が起きればあたしたちは助からない。彼は光の内部に危険性がなくなるまでは気を抜いて消すことができないのよ」


 俺の状況を見て、エミが代わりに説明をしてくれる。


 彼女の言うとおりだ。


 俺はバッグドラフトを引き起こさないために、やつの攻撃を耐えている。


 レックスは俺がライトウォールを使うことを知っていた。


 おそらく彼の持っているスマホの撮影機能を使い、海岸での鬼たちとの戦いを記憶していたのだろう。


 俺以外を拘束している状態ならば、彼女たちを先に始末する必要はない。


 そう考え、ファイヤーボールを囮に使い、俺がライトウォールを使ったタイミングで格闘戦に切り替えた。


 先の展開を読んでいる。


 きっと俺の呪文はすべて対処されていると考えるべきだろう。


 彼はバカではない。


 バッグドラフトが起きるリスクを考慮したうえでの肉弾戦。


 俺が仲間の命を助けるためにライトウォールを消さないと信じての行動なのか、それとも爆発に耐える自信があるのかはわからない。


 だけど俺は危険性がなくなるまでは、レックスの猛攻に耐えなければならないのだ。


「フッ、中々やるではないか。その男気に関してだけは認めてやろう」


 レックスが俺を殴るのを止めて後方に飛ぶ。


 ライトウォールを見ると内部の危険性がなくなっていた。


 さんざん殴られ、身体中が痛む。


 肺が苦しくなり、咳き込むと体内で内出血が起きたようで吐血してしまった。


 せっかくライリーに傷を治してもらったのに、再び大けがに逆戻りだ。


 頭がぼーとして考えが纏まらない。


 こうしている間にも、カレンが絞殺されそうになっている。


 一秒でも早くレックスを倒し、カレンを助けなければ。


 この局面を打破する術を考えるが、どの方法もレックスには対処をされていそうだ。


 やつに勝つには、彼の想像を超えるような戦いかたをしなければならない。


 それには相手に知られていない魔法、新魔法の開発が必要だ。


 エミはちょっとしたきっかけがあれば、次々とこの世はにない魔法を生み出した。


 彼女の知識と発想力が羨ましい。


 もし、エミが俺のように複数の精霊と契約をしており、今のような状況になっていたのなら、何か新しい魔法を誕生させているかもしれない。


 俺にも彼女のように発想力があれば。


 今俺が使えている魔法は知識の本(ノウレッジブックス)に書かれてある知識を元に開発したもの。


 だけど最近はスランプに陥り、本を読んでもアイディアが思いつかないのだ。


 俺にエミのような柔軟な考えで発想することができていたのなら、こんなことにはならなかったのかもしれないのに。


 心の中で悔やむ。


 土壇場で力を発揮できない自分自身を呪いたい気分だった。


『大丈夫です。あなたならできます』


 頭の中でウンディーネの声が響く。


『契約主よ。お前は発想の扉の前に立っておる。だがその扉には鍵がかかっておるのだ』


 続いてノームの声が聞こえた。


 発想の扉って何なんだよ。


『その鍵はお前自身が持っているぜ。死なせるわけにはいかないからヒントを言うけどよ。レックスのウエポンカーニバルとウエポンアローを見て何を考えた?それが答えさ』


 今度の声はウィル・オー・ウィスプだ。


 あの男の攻撃を見たときに俺が考えたこと。


 それがこの状況を打破する鍵となる。


 俺は額を抑え、必死に記憶を司る海馬から情報を引き出す。


「何だ。確かに俺は戦闘中にも関わらず、魔法のアイディアを考えていたじゃないか」


 元魔学者としての性なのか、死ぬかもしれない状況の中にあるにも関わらず、ワクワクしていた。


 この魔法は本当に発動するのだろうか。


 もし、成功したらさぞかし気持ちいいだろう。


 何も言えない状態になるかもしれない。


 もちろん失敗に終わるかもしれない。


 けれどあのとき俺が立てた理論が可能なのかを、確かめたくてしょうがない気持ちになった。


 でも、成功したとしてもチャンスは一度しかないと思っていたほうがいい。


 意表をついてこそ奇襲は成功するものだ。


 タイミングはレックスが再びウエポンアローで武器を放ったときだ。


 ゆっくりと顔を上げる。


 身体は震えていたが、これは恐怖からくるものではなく、武者震いだ。


 早く魔法を発動させたくてうずうずしている。


 早く、早く、早く、俺に攻撃してくれ。


 実験をさせてくれ。


 心の中でレックスに叫んで懇願する。


「フフフ」


 思わず不気味な声が漏れる。


 そしてぶつぶつと独り言を呟いた。


「どうした?とうとう気でも狂ったか?まぁいい、下等生物らしく無様に死ぬがいい。ウエポンカーニバル&ウエポンアロー!」


 レックスが想像で具現化させた武器を矢のように飛ばしてくる。


 このタイミングを待っていた。


 数多くの剣や槍などが迫ってくる中、その中でも五本の鎖が突出していた。


 どの武器よりも我先に来る鎖は、俺の目の前に来ると素早く円を描くようにして回転し、レックスの放った武器を弾く。


「何だと!」


 魔王の驚く顔を見て、俺の理論が合っていることに興奮した。


 嬉しさで年甲斐もなくはしゃぎたい気分になった。


「どうして俺の攻撃がデーヴィットを守る!」


 彼は動揺しているのか、身体が小刻みに震えている。


「驚いているな。頭がいいお前なら、今の光景を見て気づくんじゃないのか」


「今の光景…………まさか!いや、そんなはずがあるか!あれは俺のオリジナルだ!そう簡単に真似をされてたまるか!」


 俺の言葉で気づいたようだ。


 レックスはハッとした顔をすると俺を睨み、声を張り上げる。


「それが可能なんだよ。(まじな)いを用いて我が契約せしノームとウィル・オー・ウィスプに命じる。その力の一部を我に貸し、言霊により我の発するものを実現せよ。ウエポンカーニバル!」


 契約している二体の精霊にレックスと同じ攻撃を再現するように命じる。


 武器に必要な物質を集め、質量を持たせることのできるヒッグス粒子を纏わせることで、本物と同様の武器を生み出す。


 俺の周囲には、複数の剣や槍、斧などが展開されていた。


「エクスカリバー、ゲイ・ボルク、バルムンク、ゲイ・ジャルク、ゲイ・ボウ、バカな!俺の想像物と同じ形状をしている」


 レックスは動揺しているせいか、目が上下左右に動き、眼振に近い状態になっている。


 そして彼は一歩後退した。


「エミには教えてもらってばかりだ。知識を用いて想像の羽を広げて飛び立てば、作れない魔法はない。お前の業の原理を俺なりに理論を立てた。そしてそれを再現するための精霊と俺は契約をしている。あとは彼らに魔法で指示を出せばいいだけだ」


「このチートやろうが!」


「誉め言葉として受け取っておく。ウエポンアロー!」


 生み出した武器に攻撃をするように指示を出す。


 すると、彼の足下が光り、地面から鎖が飛び出して魔王を拘束。


 続いて剣や槍が刃先をレックスに向け、一斉に放たれた。


「おのれ、おのれ、おのれ!」


 逃げ場のない状況の中、魔王の肉体に生み出した武器が突き刺さる。


 刃が触れる度に肉体が傷つき、血管が破けて赤い血が噴き出ると、彼を真っ赤に染め上げた。


 彼がダメージを負ったことで仲間を拘束していた鎖が消滅をしたようだ。


「カレン!」


 俺はすぐに観客席のほうに顔を向ける。


「大丈夫です。意識を失っているようですが、呼吸はしております」


 カレンの代わりにタマモが答える。


 なんとか義妹の命を救えたことに、俺はホッとした。


 気を緩めてしまったからか、急に激しい痛みが全身を駆け巡った。


 早くライリーに回復してもらわなければ、最悪俺は死んでしまう。


 だけどその前にやらなくてはならないことがある。


「勝負は俺の勝ちだ」


 重症を負っているレックスに俺は勝利宣言をした。


 わざと致命傷は避けた。


 まだ彼を殺すわけにはいかなかったからだ。


「さぁ、今直ぐに配下の魔物に伝えて、ガリア国と王都オルレアンとの戦争を止めさせろ」


 俺は勝者の権利を使い、戦争を起こそうとしている配下に止めさせるよう、レックスに言う。


「いったい……何のことを……言っている?」


「とぼけるな。お前の配下のメフィストフェレスが言っていたぞ」


「メフィストフェレスとは……いったい……誰だ?」


 彼の言葉を聞き、俺は鳥肌が立ってしまった。


 今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。


 誤字脱字や文章的に可笑しな箇所などがありましたら、教えていただけると助かります。


 そして、今回の話しで第十九章は終わりです。


 やっとセプテム大陸の魔王編を書ききることができました。


 本当は第十二章あたりの予定だったのですが、色々と予定外の話しが思いつき、ここまで長くなりました。


 ですがここまで読んでいただき本当にありがとうございます。


 明日は第十二章のあらすじを投稿し、明後日はガリア国編(第十二章)の第一話を投稿する予定です。

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