第十八章 第二話 タマモの夜這い
今回のワード解説
読む必要がない人は飛ばして本文のほうを呼んでください。
本文を読んで、これって何だったかな?と思ったときにでも確認していただければと思っています。
陰茎……男性器 の一部で、体内受精をする動物の雄にあり、身体から常時突出しているか、あるいは突出させることができる生殖器官である。
陰茎振動脈……陰茎深動脈は内陰部動脈の2終枝の一つ。ニューロン生殖隔膜の上面を貫いて恥骨結合の直下に出ると、ただちに陰茎海綿体(陰茎脚)を貫いてその内部に入り、そのほぼ中心部を前進しながらこれに分布する。
海綿体……スポンジ状の勃起性組織である。男性の陰茎の勃起中には、陰茎海綿体のほとんどが、血液で占められる。女性の陰核にも、これに相当する。
クラシカルストレート……女性の髪形の一種。王道のモテ髪型の定番のストレートロング。
ふわっとパーマを当てたほうが垢ぬけるような気もするが、あえてストレートを押し通すことで新鮮で清楚な感じがとっても好印象の髪型である。
脊髄神経……末梢神経のうち、脊髄から分かれて出るものを指す。
中枢神経……神経系の中で多数の神経細胞が集まって大きなまとまりになっている領域である。
迷走神経……12対ある脳神経の一つであり、第X脳神経とも呼ばれる。副交感神経の代表的な神経 。複雑な走行を示し、 頸部と胸部内臓 、さらには腹部内臓にまで分布する。脳神経中最大の分布領域を持ち、主として副交感神経繊維からなるが、 交感神経とも拮抗し、 声帯 、心臓 、胃腸 、消化腺の運動、分泌 を支配する。多数に枝分れしてきわめて複雑な経路を示すのでこの名がある 。延髄 における迷走神経の起始部。迷走神経背側核、 疑核 、 孤束核を含む。迷走神経は脳神経の中で唯一 腹部にまで到達する神経である。
螺旋動脈……バルブのような役割を持つ螺旋状の動脈。陰茎、子宮内膜、腎盤にラセン動脈と呼ばれる動脈があるが、それぞれ別のものである(形状から命名されたと思われる)。
レム睡眠……睡眠の一つの型で、身体は眠っているが、脳は覚醒に近い状態にある睡眠をいう。
夕食を食べ終わると、俺たちは部屋に案内された。
大所帯であったが、アリスはロザリーの部屋で寝ることになり、俺は彼女の父親が使っていた部屋で休ませてもらうことになった。
そしてアリスを覗いた女性陣は、二つのベッドを四人で共有することとなる。
仲良くベッドを使うことができるだろうか。
まだ遅い時間帯ではないが、ベッドに横になった俺は自然と瞼が重くなり、いつの間にか眠ってしまった。
ベッドがギシギシと物音を立てた音が聞こえ、俺は目を覚ます。
レイラが潜り込んできたか。
キャメロット城を出てからは、このような行動には出なくなっていたのだが。
まぁいい。
どうせ隣で寝るだけだ。
寝ぼけた状態でそんなことを考え、再び眠りにつこうとした。
しかし、かけ布団を取り払われると、床に落とされる音が耳に入る。
「レイラ、何やっているんだよ。寒いからかけ布団を返してくれ」
寝ぼけているせいで視界がぼやけたままだ。
俺は起き上がろうとすると、身体を押さえつけられて再びベッドに寝かせられる。
寝起きで力が入らないようだ。
彼女はいったい何がしたい。
レイラの考えていることがわからない。
いたずらをするのなら勘弁してほしい。
そんなことを考えていると、不意にズボンが下ろされた。
驚きのあまりに、俺は眠気が一気に吹き飛ぶ。
「レイラ、それはいくら何でもヤバイ!」
ズボンを脱がした人物に俺は注意を促す。
その瞬間、空を覆っていた雲が気流に乗って過ぎ去って行ったのか、月明かりが室内に降り注ぐ。
目の前にいたのはレイラではなく、タマモだった。
しかも、彼女は何ひとつ身に着けていない裸体だ。
「タマモ!いったいこれは何の冗談だ!」
彼女に問い詰めると、タマモは右手の人差し指を俺の唇の上に乗せた。
『まぁ、まぁ、そんなに連れないことは言わないでよ。ワタシといいことしましょう!』
聞き覚えのない声が聞こえる。
俺の前にはタマモしかいない。
声を変えたとしても、口を動かすはずだ。
なら、この声はいったい?
『どうしたの?急に固まったように動かなくなって、固くするなら、ここだけにしてよ』
タマモが俺の股間を指差す。
この声はタマモなのか?いや、いくら彼女がムッツリスケベでも、こんな口調で下ネタトークをするはずがない。
何が起きたのかが理解できないでいると、タマモは俺のパンツに視線を向ける。
『わお、もう、こんなになっている!もしかして、裸の女の子を見て興奮した?』
再び、今までの彼女とは違う声が聞こえる。
いや、これは若い男性特有の生理現象だ。
レム睡眠のタイミングで脳の中枢神経が興奮して、その情報が脊髄神経を通って陰茎に伝わり、体内に一酸化窒素が放出されることで、陰茎深動脈とバルブのような役割を持つ螺旋動脈が緩み、海綿体に大量の血液が流れることで、海綿体が大きくなってしまったときに目が覚めたからだ。
朝立ちのメカニズムを心の中で呟くと、俺は冷静になったようであることに気づく。
これは耳から入ってくる音ではなく、直接脳に語りかけている。
これは精霊の声だ。
「お前何者だ。タマモではないな。俺に声を送るということは精霊か」
『へぇー、まさか本当にワタシの声が届いているなんて驚きだなぁ。他の精霊たちが言っていたとおりだ』
「質問に答えろ!お前の正体は何だ!どうしてタマモの身体を使っている」
『どうしようかなぁ?あっさり教えても面白くないし』
精霊の言葉に合わせて、タマモの身体が動く。
彼女は右手を頬に当てると首を傾ける。
『そうだ!もし、ワタシのやることに最後まで耐えきれたら教えてあ・げ・る』
そう言うと、タマモの両手は俺の着ているシャツを上げた。
『抵抗してもいいけど、そのときはこの身体がどうなっても知らないからね』
操られていると思われるタマモは、妖艶な笑みを浮かべた。
彼女が人質にされている以上は、変に動いて傷つけるわけにはいかない。
『思ったよりもいい体つきしているじゃない。ワタシ好みかも』
胸に顔を近づけられ、舌で乳首を舐め回される。
性感帯を刺激され、妙な気分にさせられた。
ねっとりとした唾液が乳輪付近に練ったくられ、身体が興奮しているのか、呼吸が荒くなる。
「止めろ、こんなことをしたら、タマモが傷つく」
『自分の身よりも彼女のことを案じるんだ。優しいね。だけどワタシには関係ない。ワタシがやりたいと思うことをするだけだよ。せっかくの美味しそうな男がいたのに、この数日間ずっとお預けをされていた。ワタシはこの日が来るチャンスをずっと窺っていた。お腹を空かせた獣は理性を失う』
いくらなんでもこんなことは間違っている。
精霊であっても、人の身体を己の欲望を満たすために使っていいはずがない。
『いい顔、怯えた小動物みたいでゾクゾクしちゃう。もっとあなたの色々な表情をワタシに見せて』
彼女の行動を止めさせたいが、今の俺には訴えかけることしかできない。
精霊が満足するまで俺が我慢すればいい。
彼女の性欲が満たされるための犠牲にならなければ。
だけど、これは俺だけの問題ではない。
操り人形にされているタマモ自身も関わっている。
もし、身体の自由が利かなかったとしても、意識だけが残っていた場合、彼女は心に大きな傷を負うことになる。
何か方法はないのか?この状況を打破できるものが。
考えるも、タマモの舌が俺に刺激を与える度に妙な快感に襲われ、思考が停止しかける。
『うふふ、前菜はこれぐらいにして、そろそろメインディッシュをいただこうかしら』
俺から身体を離すと、今度は膨れ上がったパンツに手を置き、前後に動かす。
これは流石にヤバイ。
最悪のタイミングで目が覚めてしまったせいで、膨張したままだ。
パンツ越しに与えられる刺激により、収縮することが不可能。
『大丈夫よ。お姉さんが優しくしてあげるわ。あなたは、ただそこで寝ているだけでいいのよ。数字を数えている間に終わるわ』
タマモの手がパンツの縁に手をかける。
いくら操られているとはいえ、タマモがご奉仕している姿を見たくない。
俺は瞼を閉じ、時間が過ぎ去るのを待つ。
自分ではどうすることもできずに、諦めかけたときだ。
扉が勢いよく開けられ、誰かが乱入してきた音が耳に入る。
俺は閉じた瞼を開けて扉のほうを見る。
そこにはクラシカルストレートの赤い髪の女性が立っていた。
「目が覚めたらタマモの姿が見えなかったゆえ、様子を見に来たのだが正解であったな。デーヴィットから離れよ、ドライアド!」
レイラが精霊の名を口に出す。
『あら、ようやくワタシに口を利いてくれたわね、レイラ。久しぶりに再会したのに全然話しかけてくれないのだもの。忘れられちゃったのかと思ったわ』
「忘れてなるものか。余は貴様と契約をしてしまったばかりに、あのような最後を送ることになったのだからな」
『ワタシのせいにするなんて侵害だわ。求めてきたのはあなたじゃない。ワタシはあなたの望みを叶えてあげたに過ぎないのよ』
「確かに求めていたのは事実である。しかし、あれほどのものは、余は求めていなかった。余が欲したのは、愛する人に好きになってもらう程度であったのに」
『ハーレムは男女に共通する夢のひとつじゃない』
「それは貴様の価値観であろう。貴様の価値観を他人に押し付けるな!」
二人が口論を始めるが、蚊帳の外にいる状態の俺には、話の内容を理解することができなかった。
「とにかく、タマモの身体を解放するのだ」
『それはむりな相談…………あら?どうやら時間切れのようね。彼女が目を覚ますわ。レイラのせいで中途半端になってしまったけれど。お楽しみはまたの機会にしましょう』
そう言うと、ドライアドの声が脳に響かなくなる。
タマモの身体を解放してくれたのだろうか?
「おい、タマモ!大丈夫か!」
俺は彼女に声をかける。
「あれ?デーヴィットさん。ワタクシはどうしてこんなところにいるのでしょうか?」
タマモが口を開き、空気の振動を経由して耳に言葉が入ってくる。
どうやらドライアドの支配から解放されたようだ。
「ちょっと、デーヴィットさん!服がはだけていますよ」
俺の服が乱れているのを見て、タマモは両手で視界を覆い隠すが、隙間を作っていた。
「いや、隠すなら顔じゃなくて下のほうを隠してくれ」
「下ですか?」
彼女は顔を下げ、視線を足下に向ける。
「どうしてワタクシ、デーヴィットさんにまたがって裸ってになっているのですか!見ないでください!」
自分が裸体であることに気づいたタマモは、両腕で胸を隠しながら素足で何度も俺の顔面を蹴り続ける。
「ちょっ、それは……止めて……蹴るのは……ヤベて」
タマモの蹴りが顔面に当たる度に俺の言葉は遮られ、まともに説明をすることができない。
レイラも仲裁に入ってくる様子を見せずに、ただ傍観者としてことの顛末を見守っていた。
弁明しようと口を開くと、タマモの素足が顎にクリーンヒット。
その瞬間、俺は舌を噛んでしまい、激痛が走る。
そんな中、タマモの猛攻は治まらず、舌を切った痛みと顔面を蹴られた痛みにより、迷走神経が活性化したようだ。
血管が広がり、心臓に戻る血液量が減少して心拍数が減ったことにより、俺はいつの間にか気を失っていた。
今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字や文章的に可笑しな箇所などがありましたら、お手数ですが教えていただければ助かります。
明日も投稿予定なので楽しみにしていただけたら幸いです。




