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事故

ティーディアが馬車で屋敷に帰ると、侍女達が何事かとわらわら出てきた。


カードを忘れたと告げると、一斉に侍女達はティーディアの部屋に走って行った。

義母も騒ぎを聞いて出てきた。ティーディアが説明すると「サーラとレリアが待機していてくれるのなら安心ね。大丈夫だから。焦らなくていいわ」とティーディアの頭を優しく撫でてくれた。


侍女からカードを渡され馬車へ乗り込むと義母が屋敷の外まで出て微笑みながら手を振っていた。


(お義母様にまで、ご心配をかけてしまった)


城に向かう馬車の中でティーディアは不甲斐ない自分に泣きたくなった。




御者が安全運転にしながらも馬車を飛ばしてくれていた。


(これなら、そんなに遅くならないかも)


そう思った矢先にドンっと衝撃を受けティーディアは椅子から転げ落ちた。


「っつぅ・・・・・うぅ・・・」

ティーディアは身体を起こそうとして痛みに、呻いた。

転げ落ちた時に身体を打ち付けたのだ。


痛みに顔を顰めていると、外から話し声が聞こえてきた。話し声というより怒鳴り声に近い。「何だろう・・・」などとぼんやりと考えていると『ドンッドンッ』とドアを乱暴に叩かれた。


(何?盗賊かなにか?)


治安の良いこの国で、しかも城下町に盗賊など出てくるわけもないのに、突然の出来事にティーディアは混乱してそう思った。


何か騒いでいるが、よく聞き取れない。さらにドアが激しく叩かれる。

「何?・・誰?・・・」

ティーディアは返事をするが、声が小さすぎて外まで届かない。

そうこうしているうちに、ドアが開けられた。


「おい、大丈夫か?おい、しっかりしろ!!」

「っつ・・・」

ボッサボサの頭に無精ひげを生やした男がぬっと現れて、ティーディアは驚き息を吞む。


「床に転がって・・・何処か痛むか?起きられるか?」

しかし、見た目と言葉遣いに反して、こちらをとても心配している気配を感じてティーディアは落ち着きを取り戻した。

転がっていた床から、ゆっくりと身体を起こす。


「痛いところは?気持ち悪くないか?」

手を差し出しながらボサボサ頭の男が問う。

「せ、背中が少し痛いです・・・あの・・・」

男に支えられながら馬車から降りる。

すると、男は自分が羽織っていたマントを脱ぎ「失礼」と言ってティーディアの腰から下に巻き付け始めた。

ティーディアは何を、と思って自分を見るとドレスのスカート部分が派手に裂けていた。男は自分のマントでそれを覆って隠してくれたのだ。


「あ、ありがとうございます・・」

「いや、こちらこそすまない。舞踏会へ行くところだったのだろう・・・私はカーバシア家のルーファスという」

「わ、私はティーディア・ブッファです」

ティーディアは、なぜ今こんなところで自己紹介をしているのだろうと、ぼんやり思いながら返事を返した。



ルーファスは再び「失礼」と言ってティーディアを抱きかかえた。

ティーディアが再び驚いて固まっていると、そのままヒラリっと馬に乗る。


「何が起きたか分からなくて混乱しているだろう。今から私の屋敷に向かう。移動しながら説明する」


器用にティーディアを片手で抱き、馬で走りながらルーファスは説明をしてくれた。


ティーディアの乗っていた馬車とルーファスの乗っていた馬が衝突しそうになり、馬車が方向を変えて避けようとした。しかし、そのせいで馬車が横転しかけたのだという。馬に怪我はなかったが、御者は投げ出され、馬車も倒れはしなかったが大きく傾いた。馬車の方が大きく回避しようとしてくれたお陰でルーファスもルーファスの馬にも被害はなかった。

御者を助けようと抱えて起こそうとすると「自分の事より馬車のお嬢様をお願いします」と言われこちらに来たのだと。


「暗くてよく分からなかったが、御者は怪我をしているようだった。大丈夫。屋敷に着いたらすぐに迎えを出す。本当にすまない。怖かっただろう」

「あの、ルーファス様は、怪我していないですか?」


ルーファスは驚いて、思わずティーディアを見つめた。文句の一つや二つ言ってくると思ったら、まさかの、心配されてしまったからだ。

「私はなんともない。全く無傷だ」

評価、ブックマークして下さった方、ありがとうございます。嬉しいです。



読んでいただき、ありがとうございます。

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