番外編 ラウズの幸運 その2
本日、二話目の投稿です。
翌日、ラウズが登城するとエアリオに呼び出された。
「文句でも言ってくるのかな」と、エアリオの部屋を訪れると「昨日はすまなかった」と謝罪され、ラウズは呆気にとられた。聞けば、朝一でルーファスが王に苦情を入れ、それを王妃に聞かれ、王妃からとてつもないカミナリを落とされたという。
「それは大変でしたね・・・」
「いや、自分のせいだからな・・・それで、相談なんだが・・・」
エアリオは直接ティーディアとレリアに謝りたいという。どうすればいいか、と相談された。
たった一日でエアリオの性格は随分変わったようだ。
ラウズが「ティーディア嬢とレリア嬢をルーファス付きで、城に呼んだらどうか」と提案すると、普段人の言う事を聞かないエアリオに、あっさりと「うん、それでいこう」と採用された。エアリオはその場で手紙を書くと、「ルーファスとブッファ姉妹に渡して、返事を貰って来い」と言った。サーラに会えるかもしれない、と思ったラウズは、喜んでその任務を受けた。そしてルーファスの家に向かった。そこで、親友のとんでもない場面に遭遇したのだが、サーラにもルーファスの家で会えた。サーラはラウズと目が合うと、にっこりと微笑んでくれた。たったそれだけで、ラウズは大満足だった。
次の日から、ラウズはエアリオに呼び出される事が増えた。ラウズは第二騎士団所属ではないので「これはマズいのでは」と思ったが、エアリオが隊長に話を通していたらしく、隊長からは「ああ、聞いてる。行ってこい」と許可がすぐ出た。
エアリオから差し出し人王妃の手紙を、レリアに渡して返事を貰ってくるように指示を受ける。ラウズが「(第二騎士団でもないのに)何故自分なのか」とエアリオに問うと、「ソフラートはレリア嬢の知り合いだから。他のヤツを(レリアに)近づけたくない」と返ってきて、ラウズは仰天した。
(レリア嬢、えらいのに目を付けられたな・・・・・)
手紙を持って行く度に、恨みがましい顔で睨んでくるレリアを不憫に思いつつ、堂々とブッファ家に通える口実が出来て、ラウズは機嫌が良かった。
ラウズがブッファ家に通うようになって、サーラと会話する機会も増えた。
「遅くなってしまったけど、舞踏会で助けて頂いたお礼です」とサーラから刺繍入りのハンカチを貰った。
その日から、ラウズはそのハンカチをお守り代わりに持ち歩くようになった。
またある時は「私が作ったものですが、良かったら」とクッキーを貰った。この時ラウズは、「食べるべきか。それとも大事に取って置くべきか」と真剣に悩んだ。いい匂いに負けて食べてしまったのだが、後日サーラに、お礼と美味しかった事を伝え「食べるべきか。それとも大事に取って置くべきかと、真剣に悩んだ」と告げると「いくらでも作りますから食べて下さい」と笑われた。サーラの「いくらでも作る」にラウズが浮かれたのは言うまでもない。
ラウズが、そんな楽しい日々を送っていた頃。ルーファスが珍しくラウズを訪ねてきた。
「珍しいな。どうしたの?」
何だかルーファスの顔がいつもと違う。ラウズはそれを「ボサボサ髭面ではないからだ」と思った。
「うん。昨日、ティーディア嬢と婚約した」
「ああ、そう・・・・・ええ!!」
「うるさいぞ。声がでかい」
「うわ~。『変人』が婚約かぁ・・・おめでとう」
「ああ。ありがとう」
ルーファスの顔がいつもと違うと思ったのは、外見の変化ではなく、内側から溢れる幸せいっぱいの顔になっているからだ。
(く~っ、いいなぁ。羨ましい)
数日後、エアリオから渡された手紙の差出人が、王妃からエアリオに変わっていた。
レリアに手紙を渡すと、何とも言えない顔をしていた。
レリアに手紙を届けた二日後。ラウズはソフラート家から呼び出された。突然の呼び出しに「なんかしたっけ?」と首を傾げるが、思いつかない。
父親のソフラート侯爵は書斎で待っていた。
「来たか。お前に縁談の話が来ている」
途端にラウズは、うんざりした。
「父上。そういうのは、全て断って下さいと言っているでしょう」
「そうか。断っていいのだな?」
「ええ。話がそれだけなら、もう行きますよ」
ラウズがドアノブに手を掛けた時だった。
「相手はブッファ家なんだがな」
ソフラート侯爵の言葉に、ラウズは思いっ切り振り返った。そして、ニヤニヤしている父親が目に入った。
ラウズは舌打ちしたくなるのを堪えて、冷静なフリをしながら聞き返す。
「誰ですって?」
「いや・・・断る話だし。うん。忙しいとこ、悪かったな」
「父上。是非、詳しく話を聞かせていただきます」
ラウズは椅子にドカッと座ると、ソフラート侯爵を睨む。
「ははは。まだまだ、だな。ラウズ」
ソフラート侯爵はラウズをひとしきりからかうと、やっと話し始めた。
「相手はサーラ・ブッファ伯爵令嬢。婿入りを希望している」
「父上。謹んでお受けします」
「ははは。良かったな。長年の片思いが実って」
「な・・・ど、ど、どうして・・それを・・・・・」
「それはな・・・」
三年前の王家主催の舞踏会に、ラウズの兄ルテールも出席していた。
弟のラウズが会場の警備に就いているのを見つけ「お、ちゃんとやっているな」とルテールは離れた所から、ラウズを観察していた。
しかし、褒めたのも束の間。ラウズがある一点を凝視している事に気が付いた。その視線の先にいたのは、美しい令嬢が二人。ルテールは「おい、仕事しろ」と軟派な弟を苦々しく思いながら、ラウズを見ていた。
その後も、その令嬢達が現れると、ラウズは目で追っていた。しかし、目で追っているだけで、任務に就いていない夜会でも、ラウズは一向に令嬢達に声を掛けない。ルテールは、意気地なしな弟に「おい、当たって砕けて来いよ」と内心で檄を飛ばしていた。
ルテールは密かに相手の令嬢達を調べ、更に全てを父・ソフラート侯爵に報告していた。最初は「ラウズが妙な令嬢に引っ掛かったりしないように注意する為」だったのだが、相手の令嬢達の家が害が無い事が分かってからは「どちらがラウズの本命か」を探って楽しむようになっていた。
ラウズの動きに、進展のないまま一年が過ぎた。そして、また進展のないまま二年が過ぎた。この頃やっと「ラウズは長女のサーラ・ブッファが本命」と分かった。
更に、三年目。やはり何も進展がなかった。
そして今年。ブッファ家から、縁談の申し込みがあった。
「見張られていたのですか・・・」
「見張る?見守るだろう?しかし・・・長かったな。ルテールは、お前がちっとも動かないから呆れていたよ。じゃあ、この話は進めておくから」
ラウズは書斎を出ると、その足でブッファ家に向かった。
「サーラ嬢!!」
ブッファ家に着くと、サーラが庭にいるのが見えた。ラウズは走りたくなるのを堪えて、急ぎ足でサーラの下に向かう。
「ラウズ様。どうしましょう。レリアは今出かけていて・・・」
サーラはラウズが、いつもの手紙を運んできたと勘違いした。
「違います。サーラ嬢に会いに来ました」
ラウズがそう告げると、サーラは納得した表情になった。
「縁談の話を聞かれたのですね。では、改めて」
サーラは真っ直ぐに、ラウズに向き直った。
「ラウズ・ソフラート様。私、サーラ・ブッファと」
「サーラ嬢!!」
サーラが言い終わらないうちに、ラウズは遮った。
断られる事が無いと分かっているから、今なら堂々と言える。
そして、サーラの前に跪いて手を握る。
「サーラ嬢。私と結婚して下さい」
「・・・はい」
笑顔のサーラに、ラウズは安堵した。
(ここでプロポーズまでされてた、と父上や兄上の耳に入ったら一生バカにされる)
後に「三年間に及ぶ片思いで、声を掛けられなかった意気地なし」とソフラート侯爵がサーラにばらし、派手な親子喧嘩が起きたのは、それは、また別のお話。
これにて、番外編も完結です。
ブックマーク、評価、誤字報告、感想、本当にありがとうございました。
小説読むのは好きですが、書いてみるとなかなか難しかった・・・
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
天野天晴




