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番外編 ラウズの幸運 その1

変人次期公爵とキラキラ邸の三女が婚約した、というニュースは世間を驚かし、瞬く間に広がった。

その興奮も冷めぬ内に、その一週間後、今度は王太子とキラキラ邸の次女の婚約が発表された。

歓喜と興奮の中、貴族令息の次男、三男などの家を継がない令息達は、サーラ・ブッファに狙いを定めていた。

美人で優しいサーラと結婚すれば、次期伯爵という爵位まで付いてくる。サーラを巡る争いは熾烈になるだろう、だが、それだけの価値がある。サーラを狙う者達が、鼻息荒く戦闘準備を始めた。


だが、彼らの夢も一瞬で砕け散った。


王太子の婚約発表の数日後、サーラとソフラート侯爵家次男ラウズの婚約が発表されたからだ。



ラウズは爵位には興味がなかったし、気楽な次男で満足していた。兄に迷惑を掛けないようにと、騎士団に入隊し家を出た。


そんなラウズが騎士団に所属して間もない頃、王家主催の夜会が開催された。ラウズは会場内の警備を担当になった。そこで、目にしたのがサーラ・ブッファだった。

あれは誰だろうと、目で追っていたラウズだったが、近くにいた令息達の話で、ラウズが欲しかった情報は簡単に手に入った。


名前はサーラ・ブッファ。伯爵家の長女。十八歳。婚約者ナシ。恋人ナシ。いつも一緒にいるのは妹のレリア。


しかし。

サーラを目で追いながら、ラウズは唸った。

サーラの、いや、サーラとレリアのガードが堅い。物凄く堅い。鉄壁のガードだった。あれでは近づけない。いや、物理的には何とかいけるかもしれないが、そんな事をすれば二度と伴侶候補とは見て貰えないだろう。

今もバカな男が一人近づいたが、サーラとレリアが笑顔であしらっている。相手の男はその事にも気が付いていないようだった。ブッファ姉妹の笑顔に顔を赤くしている。


(どうにか、警戒されずにお近づきになれないかな・・・)


その後も、夜会で度々サーラ達を見かけた。見かけただけで声をかける事も出来なかった。

『ブッファ家は三姉妹で、三人の中の結婚した相手が伯爵家を継ぐだろう』という噂のせいだった。

ラウズは次男。爵位目当てで、サーラに近づいたと思われたくない。


「何かきっかけを」と思っている間に、三年が過ぎた。

その間、何もなかった。ラウズは自分の不甲斐なさを嘆いたが、幸いな事に、その間サーラに特別な相手ができる事はなかった。


そして、やっとチャンスがやってきた。

王家が開催した舞踏会。

この舞踏会はイレギュラー事ばかりが起きた。

始まりは、友人ルーファスの出席。夜会に出る事のない、ボサボサ髭面がトレードマークで、母親以外の女性と接する事が無い友人が出席した。

トレードマークが無くなり清潔感を漂わせ、何故か可愛い令嬢をエスコートして、大っ嫌いな夜会に出席している。


ルーファスと令嬢が会場内に消えると、門番をしていた一人が「あれが、幻の三女か・・・」と呟いた。

「幻の三女?なんだそれは?」

ラウズが問いかけると「副隊長は『キラキラ邸』を知りませんか?」と返された。


もちろんラウズも知っている。

『キラキラ邸』その館、庭を見て祈ると願いが叶うという噂の伯爵家。サーラの家。


「知ってるよ。パワースポットだろう」

「『キラキラ邸』には姉妹が三人いるんですよ。ただ、三女は夜会とか、お茶会とか殆ど出席しないそうで。それで、実在するのかしないのかって意味で、幻の三女と呼ばれているんですよ」

ラウズは手にしていた書類を捲った。令嬢は『ティーディア・ブッファ』と名乗った。ブッファ家の欄にサーラ、レリア、ティーディアと並んでいた。

ティーディアの名前を探していた時に何故サーラとの関係に気が付かなかったのかと、ラウズは舌打ちした。


(ルーファスはどこで知り合ったのだろう?まあ、でも、これをきっかけにしよう)


そう決意してみたが、舞踏会初日、二日目は仕事だった。参加しているサーラを遠目に見るだけ。

そんな中、ルーファスとティーディアが楽しそうにダンスをしているのを、見てしまう。


(うわ~。ルーファスが楽しそう・・・・・くそっ。羨ましい・・・俺だってサーラ嬢とダンスしたい・・・)



舞踏会三日目。休みになったラウズは、いつもより気合を入れて身だしなみを整えた。


(今日こそは、サーラ嬢と話す。自分を覚えてもらう)


意気込んで会場に向かうと、ルーファスとティーディアに会った。

ラウズは、ルーファスはどんな反応をするだろうと、いたずら心から「こんばんは、ティーディア嬢。よろしければ私とも一曲踊って下さいね」と女性受けの良い笑顔でティーディアに、手を差し出してみた。

だが、間髪入れずにルーファスに、その手を払いのけられた。更に「お前・・・俺の前でいい度胸だな」と睨まれる。あの、女性が苦手のルーファスに。その反応にラウズがニヤニヤすると、ルーファスもラウズの意図に気が付いて、苦虫を嚙み潰したような表情になった。


ラウズには、ルーファスが楽しんでいるのを邪魔する気は無いので、さっさと退散する。

そして、サーラを探すが、見つけたサーラは相変わらず妹のレリアと鉄壁のガードを固めていた。

手が出せず、ラウズは遠くから眺めていた。


その後エアリオがバカな事を起こした。

だがそのお陰で、腰の抜けたサーラを抱き上げるという、幸運に恵まれた。ラウズは顔がにやけそうになるのを、必死で耐えた。

ルーファスと一緒にブッファ邸にまで行き、更に、半ば強引にサーラを抱え、部屋まで送り届けた。

顔を真っ赤にしてお礼を言うサーラに、できるだけ爽やかに見える様に意識してラウズは笑顔を返す。


(よし。悪い印象ではないはず)



帰りの馬車の中でラウズは、ルーファスに切り出した。

「ルーファス。協力してくれないか?」

「協力?何を?」

「サーラ嬢と仲良くなりたい・・・ただ、出来る限り自分の力で頑張る。だから・・・その・・・」

「俺が協力出来る事があるのかな・・・サーラ嬢とはティーディア嬢の姉上ってだけで、仲が良いわけでもないし」

「いや、その、俺の話を聞いてくれるだけでいいから」

「ふ~ん。それでいいなら、いいよ」

色恋事はルーファスよりも、断然ラウズの方が慣れている。それでも、自分の思っている事を聞いてくれる相手が欲しかった。




読んでいただき、ありがとうございます。


今日中にもう一話上げる予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] ラウズさん、意外としたたかな人だったのですね
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