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人機のアストライア  作者: 橘 雪
EP1 『新たなる力、新たなる友人』
6/121

6: EP1-2 サイバーソルジャー・プロジェクト

6話へようこそ


ちょっと短い気もしますが更新します

今回、それと次回で複数の新登場人物が出ますのでご容赦を

3年前

海王星(ネプチューン)近傍、海王星近傍コロニー(NPC)002

セイバー技術研究所



「SSPが凍結!? どうして、後はもう実証だけです、所長!」

「エルズバーグ君...本当にすまない、私にだってどうしようもないことはあるんだ。」

「どうしようもないこと? 何ですか、はっきり言ってください!」

「...これは、セイバー司令部の決定なんだ。 ...司令部には逆らえんよ。」

「そんな...」






西暦3019年、10月11日、協定宇宙時(STC)1330

海王星(ネプチューン)近傍、海王星近傍コロニー(NPC)002

セイバー技術研究所



「...初めて来たが、だいぶ...デカいんだな。」


セイバー技術研究所、略称はSTRL...

セイバー司令部もCAU軍本部に負けない大きさだったが、この研究所はそれとはまた違い...横に広い。


「中には兵器試験施設もあるからな。」


そう、俺はあの後予定通りこの研究所に来ていた。


CAU軍開発部とは別に、セイバーも独自の研究所を持っている。

それが、このSTRLだ。


「セイバーの試験兵器...正直そっちにも興味があるな。」

「それも後で見れるように取り計らっておこう。 正規軍のそれよりずっと進んだ物が見れるはずだ。」

「じゃ、お願いしますかね。」



話しつつ俺達は研究所の正面玄関を潜る。


「さて...改めてセイバー技術研究所へようこそ。 ここがロビーだ。 ...あぁ、ちなみにだが、このロビーですら入れるのは認可された人間だけだ。 それほどにここのセキュリティは硬い。」

「そりゃそうか。 セイバーの機密だもんな。」


ロビーは...人はまばらだ。

昼時ももう過ぎてるしな。


「さて...連絡通りならもう来ているはずなんだが...」


ファルコナー大佐が辺りを見回す。

...所長か、プロジェクトリーダーとやらか?


「たーいさー! 待ってましたよ!」


ん?

女性...か。

やけに親しげだが...


「あぁ、やはり。 紹介しよう、エリソン大佐。 こちらがセイバー技術中佐のシンシア・エルズバーグだ。 ...かつてサイバーソルジャー・プロジェクトを率いていたプロジェクトリーダーだ。」

「ローランド・エリソンだ。 一応まだCAU大佐の位にいる。 話を聞かせてもらえると聞いた。 よろしく頼む。」


挨拶は手早くしっかりな。


「おおー! 君がローランドさん! もう話は聞いてるよ! 君のおかげでSSPが再開出来そうなんだよね! ささ、もう準備してあるから!」

「おわわ...ちょっ引っ張るな!」


なんだコイツ!?


「あぁ...エリソン大佐。 ...その、エルズバーグ技術中佐は...腕は確かだから安心したまえ。」

「腕はってなんだ腕はってぇぇぇ!!」


地味に力強えコイツ!!






STRL、第7会議室



半ば強引に引っ張られながら着いたのは程々の大きさの会議室だった。

エルズバーグ技術中佐は俺を席に着かせると早速と言ってプロジェクターを起動した。


「さてさてー... SSPを詳しく知りたいって話だったよね。 どこから話そうかなー...」


...さっきからずっとこの調子だ。

さっきいきなり苗字でなく名前で呼ばれたりと、初対面にしてはだいぶフレンドリー過ぎるが、不思議と悪い気はしない。


「あー...どこからでもいいが...」

「よし分かった、それじゃあ...」


エルズバーグ技術中佐が手元のタブレットを操作して映されている画像を変えた。


「そもそもSSP...サイバーソルジャー・プロジェクトとは何か。」

「確かにそこからだな。」

「これは言ってしまえば...人体におけるサイボーグ化技術の完成形の1つを作るためのプロジェクト。」

「サイボーグ化? そんなの...いや、完成形?」


サイボーグ化。

別に珍しい技術でもない...

何らかの事情で失った四肢を人工の義肢で補うのは数世紀以上前から普通に行われている。

たしかにその義肢そのものは精密機械やら電子機器で最早生身よりも高性能などと揶揄されてもいるが...


「そう、完成形。 既存のサイボーグ化はあくまで失ったものを補うだけ...それも四肢だけ。 でも、それだけじゃ勿体ない。 これにはもっと可能性がある。 だから、私達はこのプロジェクトを立ち上げたの。」

「可能性? どういうことだ?」

「端的に言えば...脳以外のあらゆる部位を義体に入れ替える、総義体化(フルサイボーグ)技術。 貧弱な生身は捨てて、機械の身体になること。」

「...は?」

「人間はあまりにも脆すぎる。 宇宙に放り出されれば簡単に死ぬし、何かあればすぐバラバラになる。 こんなんじゃあ、更なる進化は望めない。 分かるでしょ?」

「あ、あぁ... そう...なのか...?」

「まぁ分からなくてもいいや。 で、これはそれだけじゃない。 人間の脳はまだ無数の可能性があるの。 そのうちの1つが脳と電子制御の直結。 これが実現できれば、人間は超高度なコンピュータになれる。 この社会にあるあらゆる電子制御されたものは身体のうちに全て入る。 簡単なところで言えば...そう、車の鍵、マネーカード、家の鍵... 何でも、たった身体1つで実現できる。」


...話はまだ続くようだが、1つだけ分かったことがある。

このエルズバーグ技術中佐という奴は、その。

目的のためなら、周囲が見えなくなるタイプだ。


「私と私のチームは5年にも渡る研究の末、ようやくそれを見つけ出したの。 それがエクステンド・ニューラル・インターフェース、ENI。 これがあれば、脳は義体を自分の身体と同等に動かせる。 それだけじゃない。 どんな機械だって、思いのまま。 そう、バトルワーカーだって。」


ヤバい、勝手にトリップし始めた。

止めるか...


「おーい...エルズバーグ技術中佐ー...? エルズバーグ? シンシアー?」

「えっ? あっ? はい? ...あっ...」


あっじゃねぇよあっじゃ。


ともかく、SSPがどういうものなのかは分かった。

そして...とても興味がある。

確かにこれは、間違いなく得体の知れない技術だろう。


だが、最後の一言が聞き捨てならなかった。


元来、俺はバトルワーカーパイロットに憧れて軍に入った。

理由は単純だ。

ガキの頃...報道でずっと見ていたんだ。

何世紀も戦争のない平時とは言え、人は人。

犯罪というものは絶えない。

しかも、それもフレームワーカーを使ったものや果てはどこから流れたのか軍用規格のバトルワーカーだってある。

極めつけはサイズは軍用駆逐艦にも満たないが、立派な戦闘艦を使った犯罪...最早テロと呼ぶべきものすらある。

それと戦う軍の、バトルワーカーの勇姿。

それを、見ていたんだ。


だから、その一言が聞き捨てならなかった。

思いのままに、バトルワーカーを動かす。

...楽しそうだ。


何より、まだ30にもならない若さでこれを辞めたくなんてない。

何も戦うことが楽しいんじゃない。

確かに最近は試験部隊ってことで実戦も少なかった。

それでも、バトルワーカーに関わって犯罪に立ち向かうこと。

それが、生き甲斐だったんだ。


まだ少し話を聞いただけだったが...俺は決めた。


「エルズバーグ技術中佐。 話をどうもありがとう。 あれなんだろ? 俺がやるって言えばすぐにでもできるんだろ?」

「え、えーと、そうですね。 あ、もちろん色々準備とかはあるので早くて1週間程度はかかりますけども。」

「そうか、分かった。 それじゃ、俺がこれにサインすればいいんだな?」


俺はそう言ってポーチからそれを取り出した。


「...今更思ったんだが、今時まず見ないよな、紙の契約書なんて。」

「まぁ...それもそう...って!? まさか!?」

「ほらよ、サインしたぞ?」

「えっちょっえっ...」


エルズバーグ技術中佐が目を白黒させた。


「ま、頼むぞ。 やるならしっかりやってくれ。」


俺はそう告げた。





...そして、これが、俺の物語の始まりってわけだ。


全く、便利だな、このENIってのは。

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