5: EP1-1 『新たなる力、新たなる友人』イントロダクション
5話へようこそ
それでは、物語を始めていくとしましょう
新たなる力、そして新たなる友人が待っています
『我々の前に新たなる脅威が立ちはだかる時、我々は新たなる友人を迎え入れなければならない。』
[編集済]
EP1:『新たなる力、新たなる友人』
-A new power , A new friend-
『ローランド、そっちに行ったぞ!』
「了解だ!」
ふと銃の残弾を確認する。
...残弾は...まだある。
『よし、いいぞ! そのまま挟みうっ... なっ!?』
「おいどうした!?」
まさか...!
おいおい、返事がない。
「クソっ、殺られたか!」
1on1か...でも俺なら!
「...いない?」
この角を曲がったところで落ち合うはずだった。
確かに相手が想定外の動きをしているにせよ...
「ならこっちの角に...」
「当たり前だろうけど、まだまだだね、ローランド君?」
「は?」
後ろから声、後頭部に衝撃。
「なんなら3on1でも4on1でも良かったんだけどなぁ。 ま、とりあえずお疲れ様、ローランド君。 いい線は行ってると思うよ、ここまで手間取ったのはいつ以来だろうね。」
薄れゆく意識の中、俺はそれを聞いていた。
西暦3019年、10月11日、協定宇宙時1130
海王星近傍、海王星中央ターミナル
第1発着ロビー
...あれから3日。
俺は、再び海王星を訪れていた。
ここは海王星近傍のコロニー群のほぼ中央に位置する海王星中央ターミナル。
CAUでもESFでも使われている、長距離ワープドライブ船の発着場だ。
長距離ワープドライブ船は、軍用ワープドライブと同じように船体周囲に摩擦係数が0かつ小惑星程度なら簡単に弾くワープドライブフィールドを展開、更に専用機関で超加速を行うことで超光速航行を可能にしている。
ただ、長距離ワープドライブ船は軍用のそれと違い、各惑星の中央ターミナル間のみを航行する。
理由は2つあって、1つは決められたターミナル間のみの航行に制限することで得られる航路計算の容易性にある。
もう1つは、事故防止だ。
ワープドライブフィールドは船と船同士の激突は避けられない。
超光速航行中の船がぶつかりあえばどうなるかは言うまでもない。
故に、決められた船が事前に申告したルートのみを通ることで事故を防いでいる。
基本的にCAUとESFに積極的な交流はないが、この長距離ワープドライブ船の運用においては共同管理団体を立ち上げているほどだ。
とまぁ、そんなわけで俺は土星中央ターミナルを発ち、ここ海王星中央ターミナルへ来ているというわけだ。
さて、『彼』が出迎えてくれるはずだが...
「お...いたいた。」
その彼は厳つい顔に柔らかく笑みを浮かべ出迎えてくれていた。
「エリソン大佐、よく来てくれた。 嬉しく思うよ。」
「あぁ、ありがとう。 ...一応もう一度だけ聞いておくが、本当にこの口調でいいのか?」
というのも、昨日、俺が彼ことクレイグ・ファルコナーにこの前の件で話がしたい、と連絡した時のことだ。
ファルコナー大佐は俺に、『必要以上に畏まる必要はない。 いや、いつも通りに話してくれても構わない』、と言っていた。
「構わない。 階級だけで言っても君と私は変わらない上に、口調など本当に必要になるのはもっと上...政治の世界だけだ。 ふざけていたり本当に無礼すぎるのならば軍の規律上でも考え物だろうが、多少雑なぐらいは気にしていたらキリがない。 少なくともセイバーはその傾向にある。」
「なるほど...分かった。 それじゃ、気兼ねなく話すさ。」
階級同じってもこれ二階級特進だけどな。
それに歳も遥かにファルコナー大佐のが上だ。
そういえば昨日言っていたが、俺の除隊もセイバーがどうやら止めているらしい。
「それでいい。 さて、本題に入ろう...と思うが、立ち話も何かだ。 それに、人の目もある... 五ツ星のレストランを抑えておいた。 ウェルティズダイナーだ、知ってはいるだろう?」
「ウェルっ...!?」
ウェルティズダイナー...
CAU技術の中でも特に重要なものであるエッカート-ウェルティ・エジタイト反応の発見者の1人であり、新種好物学の権威と評されるウェルティ博士、その親族が経営するレストランだ。
CAU国内で最高級中の最高級であり、それでいて予約は常に半年先まで埋まっていると評判だ。
余談だが、ウェルティ博士は当然のように本店に入り浸っているらしい。
...実家だもんな、そりゃ。
「意外そうな顔をしているな。 ...あぁ、気にするな、全てセイバーの財布から出る。席はセイバーが常にいくつか抑えてあるのを使っているだけだからな。」
「...さすがCAUのエリート部隊、か。」
「まぁ、な。 さ、歩きながらでも話せる。 行くとしよう。」
「あぁ。」
「それじゃ...いつものを頼むよ。」
「かしこまりました。」
ウェルティズダイナー海王星中央ターミナル店、という長ったらしい名前の店に入った俺たちは、個室に通された。
ファルコナー大佐が言うには、完全防音らしい。
どうなってんだこの店...と思ったが標準省の役人も接待やら何やらで使うらしいから当然だろう。
「さて...料理が来るまで時間はある。 今度こそ本題に入ろう。 セイバーはNPC002に司令部を置いている。 それに併設されるような形でセイバー技術研究所がある。 この技術研究所で3年前に研究、開発されたはいいものの、その後完成直前に凍結されたプロジェクトがある。 聞いたことがあるはずだ。 ...サイバーソルジャー・プロジェクトのことは。」
「...サイバーソルジャー・プロジェクト... たしか...セイバー主導によって進められていた次世代の兵を創るもの、だったか?」
詳しく聞いたことはなかったが、噂程度に聞こえてきてはいた。
「そうだな。 このサイバーソルジャー・プロジェクト...SSPは実はもう必要な理論や技術はその3年前に仕上がっている...ただ、最後の人体実証段階で凍結されたんだ。」
「人体実証段階で? それじゃあ、意味が無いじゃないか。 なんで最後の最後で?」
「...技術研究所にはSSPに関しては明らかに箝口令が敷かれている...未だ詳しい理由は私も知らないのだよ。」
微妙に困ったような顔をファルコナー大佐がした。
まぁ、確かにそこは人事部とは縁がない話でもあるか?
「まぁ、分かった。 言いたい事は理解した。 そのSSPの人体実証が許可されて...そんで、俺をその対象にするってことだろ?」
「理解が早くて助かるよ。 尤も、厳密に言えば逆だな。 ここにその契約書を持ってきた。 君がこれにサインすればSSPは再始動することになる。」
どれどれ...
...よくある人体実験契約書だ。
何があっても責任は取れないとか、そういう類の...
「...ファルコナー大佐、一応聞いていいか? このSSPの人体実証って具体的に何するんだ?」
「確かにそれも詳しく知らずにはサインもできないか。 ...そうだな、そうなると技術研究所に直接行くしかない。 資料は全てあそこにあるからな。」
そりゃそうか。
凍結済みプロジェクトのなんて現地以外にあるほうが珍しい。
あってもこの場合はセイバーの司令部かCAU軍本部だろう。
「となれば行くしかないな。」
「君が直接行くなら所長も快く見せてくれるだろう。 ...いや、所長よりもまず先に当時のプロジェクトリーダーが出てくるかもしれんがな。」
そう言ったファルコナー大佐の顔は何かを思い出すような顔だ。
恐らくは、そのプロジェクトリーダーとやらをだろう。
...ん、どうやら料理が来たみたいだな。
とりあえず、今はこれを楽しもう。
料理については一言だけ言っておくとする。
信じられないほど美味かった。
感想、評価は次話執筆のモチベに直結します(直球
是非、一言でもいいので感想を残してみたり、簡単に評価をして頂けるとモチベが上がります