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人機のアストライア  作者: 橘 雪
Prologue 『電脳兵士と電脳少女』

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4/124

4: S1Prologue-4 ターニングポイント

4話へようこそ

序章はこれで終わります

次からは、『電脳兵士』要素をお見せしていくと致しましょう

西暦3019年、9月26日、協定宇宙時(STC)1000

土星(サターン)近傍、土星本星コロニー(SPC)002

CAU軍軍病院、集中治療病室



「エリソンさん、おはようございます。 早速ですがまずご挨拶を。 私は今回エリソンさんの担当医師のブルースです。 退院までしっかり担当させてもらいます。」


翌朝、俺は昨日の医師と、ブルース先生と会っていた。

...俺は、色々と認めたくない状況を認識しつつある。


「あ、あぁ。 俺は...って言う必要は無いのか。 ...ブルース先生、一応もう一度確認させてほしい... その、あれだ... 本当に生き残ったのは俺だけか...?」

「...はい。 皆さん、ほとんどが即死だっただろうと。」

「そうか...ありがとう...」


...皆...か...


「エリソンさん、その、もうお気づきかもしれませんが...」

「あぁ...? ...これの...ことか?」


そう言って、俺は右腕を持ち上げる。

...肘から先のない右腕を。


「...運ばれてきた時点で既に... 本当に、生きていたのが奇跡だと思います。」

「...何が奇跡なもんか... 俺だけ生き残るぐらいならあそこで死にたかった。 なんで俺だけが...」


アイツらはもう帰ってこないんだ。

どうすりゃいいんだ、俺は...


「...ええと...エリソンさん...」

「あ、あぁ... 悪いな、先生。 話があるんだろ?」

「えぇ。 今後の事をお話しないといけませんので...」

「分かった。 続けてくれ...」



ブルース先生の話はこれからの治療、リハビリのことだった。

まぁ、在りきたりな医者の話だったさ。

...だが、俺の心はずっと遠いところにあった気がしたんだ。






西暦3019年、10月8日、協定宇宙時(STC)1000

海王星(ネプチューン)近傍、海王星本星コロニー(NPC)002

CAU軍共同墓地




あれから2週間近くが経った。

杖を使えば出歩ける程度までになった俺はブルース先生の付き添いのもと、NPC002に来ていた。

目的は...仲間達の葬儀だ...



「それでは、これより納骨を行います。 ...遺族の皆様、エリソン大佐、前へ。」


大佐...除隊の決まった俺は特例の二階級特進をしていた。

29歳の大佐なんてどういう冗談だ...


「...ごめんな...皆...俺がもっと上手くやれてればよ...」


後悔は先には立ってくれない...か。


「...」


俺は無言のまま、仲間達の遺族と共に骨壷を墓標の下へと納めていく。

1人、1人、昨日まで普通に話していたような気分になる。


「...本当...なんで俺だけが...」


敵は強かった。

だが、もっとできたことはあったはずだ。


「皆様、ありがとうございました。 これにて共同葬儀を終了とさせて頂きます。」



それで、俺は除隊。

早すぎるが軍人年金を貰っての余生ってわけか...

思い残しこそないわけじゃないが、この腕じゃな...

そう思いつつ俺は自分の右腕を見る。


...はぁ...帰るか...

この後はまたSPC002に戻るだけだ。



「失礼、貴官がエリソン大佐でよろしいか?」


ん?


「あぁ、俺がエリソンだが...」


墓地から出ようとした時、後ろから呼び止められた。

振り向くと、壮年の男がいた。


「突然失礼する。 私はクレイグ・ファルコナー、セイバー連隊人事部所属、階級は大佐だ。」

「ファルコナー? まさか...」


その苗字には聞き覚えがある。

...いや、聞き覚えなんてものじゃない。


「...そうだ、パスカルは私の息子だ。 エリソン大佐、息子は...パスカルはどうだったか? 最期まで...戦っていたか?」


やっぱり、か。


「...はい。 アイツは...諦めていませんでした。 すいません、ファルコナー大佐... 隊長の俺が不甲斐ないばっかりに...」

「いや...それはいいんだ。 軍属であるからには私もパスカルも覚悟はしていた。 ...さて、本題に入ろう... エリソン大佐、君に提案したいことがあるんだ。」

「提案? 俺に、ですか?」

「あぁ...そうだ。」

「...と言っても、俺は...」


俺は右腕を上げて見せる。


「...エリソン大佐、君は、セイバーは知っているな?」


セイバー...セイバー連隊か。

...そういえばセイバー連隊人事部所属、か。


「CAU軍でありながら独立した指揮系統を持つ特務作戦隊、でしたか?」

「その通りだ。 エリソン大佐...改めて君に提案がある。 セイバーが実用化しようとしているモノならば、君にチャンスを与えることができるかもしれない...いや、絶対できるだろう。 ...どうだ? セイバーへ来ないか?」

「待ってください、どうして俺に?」


セイバーはそもそも、CAU正規軍からのスカウトによって隊員が構成されている。

つまりは、CAU軍のエリート組織でもある。


「君の戦闘記録は見せてもらったよ。 ...28歳で少佐に昇進、そして試験部隊を率いる手腕を見せている。 もう何年かすればどちらにせよセイバーへスカウトしていただろう。」

「それは...どうも。 ですが、なら、どうして俺にそんなチャンスを?」


いくら俺がセイバーのお眼鏡にかなったにしても、もっと優秀な奴はいる。


「...これはここだけの話だが...実は詳しくは私も聞かされていないのだ。 ただ、より上から直々に指名があった、ということだ。」

「上...上? セイバーに指示できるのなんて...」

「それ以上は気にするな。 ...急な話で混乱しているだろうからな。 ひとまずはこれを渡しておく。」


そういうとファルコナー大佐は胸ポケットから取り出した名刺を俺に渡してきた。


「名刺? ...あぁ...そういうことか...」

「そうだ。 もし、興味が出たら、連絡してくれ、エリソン大佐。 まだやり残したことが...思い残しがあるだろう?」


そう言うなり、ファルコナー大佐は俺に背を向け、墓地の方へ歩いていった。



やり残したこと...か。


俺は...

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