学園編・裏の仕事
薄暗い廃墟で覆われたこの地は黒く歪んでいた。
じわじわと広がる黒いオーラは死人が放つ毒だ。
これを私達は死黒魔法と読んでいる。
その地を汚し、自然や人とありとあらゆる命を奪ってしまう忌々しい魔法だ。
これを抑え、食い止め為にも常に強力な結界を張っている。しかし毒の力は日に日に強くなり結界によって閉じ込められた死黒魔法は膨張して年々結界を弱める原因になっていた。
それはつまり、いつかは結界が破壊される日が来るかも知れないと言うことだ。
その危険性を悟ったごく僅かの人間と魔法警備隊はそれを阻止する為にその中に入って処分をし進行を食い止めていた。
私もいずれはその仕事につくことになっているためその仕事を一部押し付けられている。
限りない先にあるのは黒く埋め尽くされた正魔法黒の三分の一をしめている黒魔法国に行き着く。
黒魔法国とは、禁止されている魔法に手を伸ばし、この世界にあだなす魔法使いの国のことだ。
まず黒魔法使いを滅ぼすには一手として、此処を片付けなければならない。
しかし死黒魔法を抑える対魔法が今だに見つかっていないのが現状だった。
いったい何度繰り返しただろう。
いったい誰が何を裏切ってこうなったのだろう。
黒い形の良い銃は青白い火花を銃口から散らしながら、もはやこの世の命では無い死人を殲滅していく。
その動きに容赦は無い。ジゼルは思うことなく前に進み殺していく。
一歩一歩枯れ果てた黒い大地と歪んだ空に身を映しながら虚ろな目で死人を見つめる。
そうしているうちに私は黒い腕輪を見る。左手の人差し指でそれに触れると透明なスクリーンがでて文字が浮かび上がる。
近年では機械も発達し、魔力を燃料にした機会が増えている。ジゼルは迷うこと無く操作を始め【移動】と書いてある所を選択する。
その次に浮かび上がるのは場所の選択、A〜Dと並んだうちの中の【A】を選択する。すると先程とは別の場所に移動していた。
これは移動魔法ではない。もともと四ヶ所に仕掛けられた機械により移動したものだ。
所々に散らばっている殲滅対称はA地点にも集まっていた。
私の存在に気づいたのかいっせいに、こちらを見てくる。そうしている間に二つの黒い銃を両サイドに掲げて魔力を送り込んでいく。
そんな時ルーカの声がイヤホンごしに聞こえてくる。
「ジゼル、おそらくそこにいる死人で片がつくわ。私達は数体の残党を追うわ。貴方は指揮をとっている黒魔法使いを追ってちょうだい。」
「了解…後で合流しましょう。」
通話がプツリと止むとジゼルの魔力を溜め込んだ銃は黒く光る。
そろそろと思いながらニヤリと顔を弾ませてカウントダウンを始める。ゾンビのように襲いかかってくる死人達は私を中心に勢いよく四方から向かってくる。
3…2…1…
心の中で三秒カウントを終えるとジゼルは片方の銃を下に向ける。
後もう一歩と言う所まで引き寄せると引き金を引いた。
大きな音と共にジゼルは空高く飛び上がり魔力が膨張したように円を描いて青く膨れ上がって弾け飛んでいく。
空中からその様子を伺うと最初の音で危険を察知した死人がいたのか早々と逃げようとしている所を発見する。
少し予想外のことが起こり動揺とイライラが心を支配しながらもう片方の銃を空から撃ち放つ。
「っ、逃がさないわよ‼︎」
睨みつけながら叫ぶと放たれた魔法弾は空中で煙となり紅い霧が発生していった。
それにより、取り逃がした数体の死人は力なくどんどん倒れていく。
緩やかに地面に着地した時には事は終わっていた。まだ僅かに待っている紅い霧を見て軽くため息をつく。
「あの紅い霧はなるべく使いたく無かったのに…」
死んだ目は更に暗くなっていく。あの紅い霧は死人専用に作られた機械化魔法の薬品だ。
この黒い二つの銃も機械であり、魔力を送り込むことで使える。
この銃には「破壊弾」「狙撃弾」「トラップ弾」
「化液薬品弾」と四つの能力がある。それぞれに三段階のステップがあり、その場に応じてレベルを調節出来る。
しかし、それは全てジゼルこ魔力で担っている。つまりレベル三を使うときにはかなりの魔力を消費することになる。
先程使った化液薬品の紅い霧はレベル三を使用しなければ排除範囲が全体に当てはまらなかった。
そのため普段あまり使わないのもあって体に負担がかかりやすいのだ。
はぁ〜人生とは損する物だなぁ〜。
ジゼルはもう一度辺りを見回すと右手の銃を見つめる。
それにしても危険だと判断して逃走した死人達に疑いを向ける。今までは音に反応することがあっても今回のようなことは無かった。
だとしたら考えられることはただ一つ。死人の知能が上がっている?
私の考え過ぎなのか?
ジゼルがのめり込んでいると、ふと次の任務があることを思い出す。
もう少し考えたいが今はその余裕はない。目の前にふと転がっている死人の残骸を私は見つめた。
これからの最優先事項はこれを操っている黒魔法使いを倒さなければいけないことだ。
ジゼルは前を見るとその道を前力で進んだ。