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名家の落ちこぼれ、裏の実力魔法者  作者: 桜澤 那水咲
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学園編・名家の落ちこぼれ2

ジゼルが出て行ってからは僅かな沈黙が続く。


「と言っても、現在の単位と成績では確実に留年ですね。」


ルーカがため息をつきながらツカサに報告をする。


「あいつは留年決定として、今後少しでも授業に出席させないと、処分は免れないな。」


「どうしてあそこまでやる気が無いのか理解出来ません。彼女には良い就職先があると言うのに。」


「それが嫌だからだろうな。」


本来なら魔法警備隊は喉から手が出る程理想な職と言える。誰もがなれると聞いたらさぞ喜ぶだろう。


そんな職を彼女自身が捨てようとしていることに一般人の思考には理解不明だった。



生徒会室を出てからジゼルはぶらぶらと歩いて先程とは別の木に登る。


まぁ〜このままでは確実に留年だろな。なにせ三年になってから一度も授業を受けていない。


元の生活に戻りたいと思いながら、大会のことを考える。


学園の年に一度のきりの行事として毎年のように下剋上のような魔法試合が行われる。


この学園では魔法の実力が全てだ。その方針は決して曲げることが出来ない。だからこそ、全ての実力を得たものが毎年の生徒会長を名乗っている。つまり年度ごとに生徒会が変わることがあるわけだ。


しかしツカサの場合は異例だったとか。話によれば高等部一年からずっと生徒会長の座に君臨しているらしい。


そんな人間に今の私では到底勝てるはずもなく、ジゼルは魔力制御装置を見ながら静かに触れる。



何故こんな装置をつけているのか。それは私個人が所有する魔力量が圧倒的に大きいからだ。


もし魔力の制御をしなければ圧倒的な力に暴走して死に至ると聞いている。その後は魔族と呼ばれる化け物になるらしい。


これされなければ余裕で逃げれるのにと思いながら、うなだれる。


実際には私にはここに来る前の記憶はほとんどない。だが決してろくな人間だったのだろう。今がこのざまなのだから。


のんびりとその日を過ごしていると案の定ルーカが声をかけてくる。


「今日の任務の内容。」


そう言うと彼女は折りたたまれた紙を投げてくる。


綺麗にジゼルの手に届くと、体制を少し斜めにして中身を確認する。


内容はいつも通り立ち入り禁止の土地、廃公地はいこうちと呼ばれる危険な場合の任務だった。


死人しびとの群勢が増えているわ。何とか食い止めないと、どんどん廃公地を増やし汚されていくわ。」


「その死人の処理と、それを操っている黒魔法使いの排除。…それでいいの?」


少し面倒くさそうに言うとルーカは頷く。

しかしこんな仕事がある事なんてごく僅かな人間しか知らない。


生魔法学園の裏は、決して善人な人間に任せられるような立派な仕事ではないのだ。


「死人なんだけど一ヶ月前に行方不明になっている人間だと断定出来るわ。」


一ヶ月前…かぁ。


「何人?」


「三十八人…。」


ちょっと待って笑わせないでよ!


任務を続けるごとに被害は広がっている。そのことに呆れることしか出来なかった。


市民や国を守る立場の魔法警備隊は何をしてるんだか。


そんな場所死んでも入りたくな…いや、逆に楽が出来るのかもしれない。


と言っても今回は死人が多いな。


「…本当、面倒くさい。」


この世界にも魔法にもうんざりだ。私には過去も身寄りもいない、グレイ家の人間に会えば最後、落ちこぼれ扱いの日々だ。



そんな私を引き取るといったのが同じく名家のツカサ・ブライトだった。


一見非道な考えだと思う発言をしていても、そばにいるルーカはそのことには触れなかった。


きっと気を使ってのことだろう。


「友達…作って見れば?どうせ留年でしょ。」


「それも面倒くさい。」


なんとも意地悪なことを言うものだ。友達も出来ない上に留年のことまで持ちかけられるとは。


実際情けないとも思いながら、やはり留年は決まりのようだと確信する。人との関わりが嫌いなのに、一番人間関係で出来ている学園に残るのだから嫌なものだ。


これなら就職して何処かに逃走した方が余程現実味のある話だったと今頃気づく。


結局、私が今出来る最短ルートは来年の大会にツカサに勝つことぐらいしかまともな機会がないと言うことだ。


そう考えれば、高等部四年で卒業するツカサ達は後一年か、私はもう一回高等部三年かぁ〜


「あぁぁぁぁ〜頭がおかしくなりそう。ちょー面倒い‼︎」


「何よ!騒がしい!」


ルーカは肩をビクつかせながら耳に手を当てる。

私は体を起こしながら頭に手を立てて抱え込む。


私はきっと留年しても変わらないだろう。この面倒くさっぶりは右に出るものはいないぐらいに極めている。


「大会っていつにあるの?」


少し落ち込んだように言うとルーカは耳から手を離してこっちを呆れた顔で見上げる。


「十一月よ。…日程ぐらい覚えなさいよ。」


軽い文句を言われながらジゼルは了解と返事をして、木から静かに降りる。


今は三月だから、最後のテストを終えて四月からは新学期がまた始まるわけか。

まぁ、私は留年だけど。


その様子を見ているルーカは何も言わない私に声をかけてくる。


「ちょっと、次はどこに行くのよ!」


腰に手を当てて少しキレ気味にルーカが私を引き止める。


「そろそろ、任務の時間。」


そう言うとルーカは腕時計を見て顔を上げる。


「…確かに。」


やはり彼女はきっちりしているが、抜けている所も多い、隠れ天然だと内心思った。





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