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名家の落ちこぼれ、裏の実力魔法者  作者: 桜澤 那水咲
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学園編・落ちこぼれの名家

これは十三年前のことだ、突如人口の三分の一が滅ぼされた事件が起きた。


原因は不明である、魔法の不具合であるとしか公表されなかった。しかし世の中にはいつも表と裏の話がある。


この世界は魔法を持った者とそれを持たない者で別れている。


凡人の人間は魔法使いを羨む者もいるだろう。実際に考えれば魔法使いの方が有望な将来が待っているからだ。


しかし魔法使いの極一部にも裏の世界はある。誰しも力を持つ者が正しい使い方をする訳ではない。


魔法には無限の可能性があり、使い方がある。それは善にも悪にも通用する話だ。


例えば、魔法使いを殺すことでその力や魔力を吸収出来る。そんな話は人を殺したことがないと実感出来ない。極一部の人間しか知らないことだ。


近年では正しい魔法を教えるための学園が作られ、将来を保証した制度が作られるようになった。その為犯罪件数は年々減っていた。




白いセミロングの髪、その先は紅くまるで血でも塗ったような特殊な髪をしていた。


その瞳も白く少し灰色がかった色をしていた。


彼女が廊下を歩いていると皆影口を言い始める。


「あんな人っていたっけ…」


「やめときなよ。絶対に危ない人だって!」


そんな声はいつもと同じで上がってくるものだ。今更気にすることもなく、授業の鐘が鳴りながらも彼女は教室の方には向かわなかった。


そのまま近くの木に登るり、寝っ転がりながら日向ぼっこをする。


その間に風にゆらゆらと揺れた木の葉や、木々達が微かに荒れるように動いた。


シュッーー


何かが鋭く通り抜ける音が見事に命中して彼女は微かな唸り声を立てながら地面へと急落下していく。


「ジゼル!またこんな所でさぼりかしら?」


足音を立てながら地面に落ちて倒れている、ジゼルに近づく。


ジゼルを必然的に持っていたのか、手元には矢を握っていた。


「ルーカ、いい加減にしてよね。私を殺したいの?貴方は…」


「そんな事言っといて、無傷じゃない。」


そこは問題じゃないんだけど…


少し呆れたように立ち上がると想定通りの返答が返ってきた。


「いつも不満そうな顔をするけど、それはこっちも同じなのよ!授業は毎回さぼるし、テストもさぼる、行事もさぼる、三代常習犯の相手をしてるこっちが一番不満を言いたいわよ。」


三代常習犯って、別に学園の全に参加してないだけだから、別に貴方には関係ない…。

というか、まだまだ例が上がりそうな勢いだ。


なんて言えば、確実に制裁が下されるだろう。



よし、黙っておこう。



「その死んだ目も何とかしてよね。何考えてるか分からなくて怖いんだけど。」


少し苦い顔を浮かべるルーカは決して私を見逃した事は無い。彼女は私の監視および世話係をしている人だ。


「仕方ないでしょう、生まれつきなんだから。」


彼女はそんな私の解答に呆れたようにため息をつきながら、後ろに体を向ける。


きっと諦めたのだろう。


「仕方ないわね。でもあんまり他の生徒に怪しまれないようにしてよね。せっかく鎖から解放されたんだから、今度ヘマしたらどうなるか分からないわよ。」


彼女の言い方はいい加減でも決して優しい訳では無い。そう、これは本気の忠告なのだ。


「それと彼にちゃんとお礼言ったの?」


その言葉を聞いた瞬間にバツが悪そうに顔を歪める。


「関わりたくない。あんなムカつく上から目線の男は嫌い。」


「でも彼には逆らえない。彼がいるから決められた支配下の下で最低限度の自由が与えられてるのよ。」


まるで聞き分けの悪い子供に言い聞かすようだ。


確かに私は他の生徒と違って監視下に置かれている。だがそれは私が名家のどうしようもない落ちこぼれだから。


「まぁ〜仕方ないわね。私はグレイ家の落ちこぼれだものね。さぞ恥ずかしいでしょうね。」


「まったく、でも規則ぎりぎりの行動は彼、ツカサ会長も余り良く思ってないわよ。」


ツカサとはこの学園の生徒の皆中で全権力を持っている生徒会長だ。完璧すぎるため教員も下手に行動出来ない上に非常に冷酷な男で知られている。


私の大嫌いなタイプだ。



そしてルーカとはその生徒会の書記を担っている一人だ。その実力は確かで、前に脱走しようとした時に徹底的にやられたものだ。



私もこの学園に連れて来られて一年目になるが、最初は角が立って良く問題を起こしていた。



振り返ってみれば充分大人しくなったと思う。

(自称)


「そんなことより、ツカサ会長が久しぶりに前回と今後の件も交えて話がしたいとのことよ。」


「…帰って良いですか。」


「ダメよ。」


結果的に私は嫌々連れていかれ、生徒会室に放り込まれた。


「遅かったな。」


そんな低い声はとても冷たい。もはや誰の声なのかは言うまでも無い。


私は彼の前に立つと顔を合わせ無いように下を向く。


「前回もテストをさぼったらしいな。全く持って宝の持ち腐れだな。」


彼の冷たい瞳は目線をずらしても突き刺さる。


「無回答か…同い年なんだし、少しは反応したらどうだ。最近は何を考えてるのか、目に余る行動が多い見たいだな。何より細かい反抗が多過ぎるな。」


「決められた範囲内では行動してるわ」


そう言うと彼は持っていた私の資料を机にバサリと投げた。


「言い分はそれだけか…」


目つきは一層冷たくなり、軽くため息をつくと彼は椅子から立ち上がる。


「まず言い分を聞くとしょう。なぜ授業を受けない。」


言える訳がないだろう、あんたの隣だからだよ!


「…めんどくさい…から?」


「何で疑問形なんだ。」



そうなことは口が避けても言えないことだ。何とかして逃げないと今後に響くことになる。



「まぁ〜いい。君には死ぬ気で授業に出て貰おう。でないと今後が厄介だからな。それとテストも受けるように。」



一生この学園から出たくないなら別にいいが、と付け足されながら。



だが私は自由が欲しい、正直この学園に残れるなら一生個々にいてもいいと思っている。私は将来は魔法警備隊と言う取り締まり役に入れられる。

(強制的)



ツカサも同じ道を行くだろ。そう考えれば縛られるよりは学園に残ることである程度の自由を得れた方が幾分かましだろう。



つまり先の生き様が分かっているから言えることだった。もともと私には自由を得る資格もそれなりの人間でもない。



むしろこうなって当たり前の報いだ。しかし人間の欲というのは中々難しく、それから逃れたいと思ってしまう。



「もし本当に自由を得たいなら、今度の大会で俺を倒してみせろ。それが出来たらお前の魔力制御装置と鎖を解放しよう。」



その言葉を聞いて私の両腕と首下に着いた銀の装飾品が揺れた。


会長相手を負かすなど、到底無理な話だが、これは自由を手に入れるための最大のチャンスだ。久しぶりにやる気が出てきた。



「それと裏の仕事もしっかり頼んだよ。」



付け加えるように私が扉に手を当てたと同時に軽く言われる。



「了解…せいぜい貴方の飼い犬とした働くわよ。」


少し嫌味な言い方をしながらジゼルは会長室を出で行った。





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