002、Archi- Blade & Causal Driver(仮題):プロローグ1
「――はどこにいるの?」
何度その言葉を繰り返しただろうか。お父さんの葬儀の場では、お母さんは、そんなことよりも手を合わせなさい、といった。妹は……いや、妹はあの子の友達じゃなかったから、聞かなかった。お父さんはいない、僕と一緒にあそこに遊びに行っているときに、火事に巻き込まれて死んじゃったから。あの子のお父さんもいない、火事で一緒に死んじゃったから。
二人が死んだと、警察官のおじさんたちは言ってた。一人は奇跡的に助かったと、おじさんたちは言ってた。お父さんと、あの子のお父さんは死んじゃって、僕は生きていた。
『――』は、いなくなった。
誰も、あの子がいなくなったって、信じてくれなかった。あの大きなお屋敷の近くの燃えてしまった小さな家に何度も何度も、何度も何度も行ったけど。近寄っちゃだめだって言われても、何度も何度も行ったけど、やっぱり、いなかった。
誰も、あの子がいないということを気づいていないみたいだった。
お父さんもおじさんも、死んじゃったから会えなくなった。
悲しいけど、寂しいけど、みんなの中にお父さんはいる。お母さんとは、お父さんの話ができる。妹の中にも、お父さんの思い出があって、その話ができる。
――でも、あの子は死んでないのに。僕は会えないし、誰の思い出の中にもいないことになっている。誰ともあの子の話はできない。
そのどうして、という疑問は十年たった今でも心の中にある。
俺の思い出の中にしかいない、あの子の名前と共に。