グリーってなんだ
説明回です。
某県、啓明市。
巨大な三角州の上に成り立つこの街は、人口がとりわけ多いわけでもないし、少ないわけでもない。
他と同じように少子高齢化が進み、若い人たちはより便利な首都圏や県庁所在地に流出。
人口に占める老齢者の割合も少しずつ高まってきている普通の地方都市だ。
そんな啓明市を流れる一級河川・啓明川のそばに、実にへんてこりんな見た目をした校舎が建っている。
県立啓南高校。
どこにでもある、普通の公立共学校。
啓南高校には、「グリークラブ」と呼ばれる部活動が存在する。
これは、合唱に青春を懸けた部員たちの汗と涙に塗れた青春の記録である。
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まず「グリークラブ」とは何か。
グリークラブとは、合唱団につけられる名前の一つである。元々は「グリー」と呼ばれるジャンルの曲を演奏する団体を指していたが、今では主に男声合唱団のことを指す。
では、「男声合唱」は、我々がよく知っている合唱と何が違うのか。
多くの中学校で音楽教育に用いられており、日本の合唱界において最もポピュラーだと言えるのが、女声と男声が入り混じって歌う「混声合唱」だ。
ソプラノ・アルト・テナー(テノール)・ベース(バス)に分かれるのは、「混声四部合唱」と呼ばれる編成で、おそらく最もよく知られた形だろう。
「男声合唱」は、読んで字のごとく。
男声のみによって編成された合唱のことだ。
高い方から「トップテナー」「セカンドテナー」「バリトン」「ベース」の4パートに分かれる「男声四部合唱」が最も一般的な形だ。
混声合唱と比較してパートごとの音域の差が小さい分、重厚感のある感じが出せる。
だから、出版されている楽譜には無伴奏曲が多い。
それでは、女声だけで編成される「女声合唱」の場合はどうなのか。
高い方から「ソプラノ」「メゾソプラノ」「アルト」の3パートに分かれる「女声三部合唱」が一般的であろう。
こちらもパートごとの音域の差は小さいが、より高い音域で固まっており重厚感には欠けるため、低音域をピアノによって補う。
女声合唱の強みは、高音域で密集した音域にある。
男声や混声と比較し、より狂気性、あるいは男声のものとは違った緊迫感を生み出すことができるのだ。
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啓南高校グリークラブは、開校と同時に設立され、100年以上もの非常に長い歴史を持つ。
かつては部員数3桁を誇る啓南唯一の合唱団体であり、全国大会でも非常に優秀な成績をおさめる強豪校であったが、現在では他校の勢力に押され、また合唱は女のもの、という時代の流れもあり、すっかりその頃の勢いは失われてしまっている。
そんなグリークラブに追い打ちをかけたのは、「女声合唱部」の設立だった。
「合唱は女のもの」というイメージも加わり、グリークラブに入部する新入生は激減。部員を確保するのも一苦労するようになった。
かつてグリークラブの練習場所だった音楽室は、勢力を伸ばした吹奏楽部により剥奪。
ピアノのある多目的ホールは、こちらも勢力を伸ばした女声合唱部により剥奪。
グリークラブは、校舎の本棟から離れた、設立100周年記念館に押し込められていた。
しかし、この記念館、悪いところではない。
今まで誰も気づかなかったようだが、この記念館は壁がペラペラでよく音が響く。
気持ちよく練習ができるというものだ。
…ただ、室温は外と同じ。暖房も冷房もない。
現在の部員数は12名。3年が5名、2年が3名、この春入部した1年が4名。
パートバランスもそれなりによく、近年稀に見る恵まれた環境だった。
佐城佳苗は、そんなグリークラブの部長を務めることになったのだった。
拙著「ロリコン教師は魔法で世界を救いたい」同様、こちらも完全に見切り発車してしまいました。
こちらは前作より投稿ペースが遅くなる予定です。
週一くらいで上げていこうかと思っています。どうぞよろしくお願いします。




