━━消えない胸中━━
「ふう………。」
一通り話し終わったルシュフからカルマスは目を反らす。天井には魔法のランプの光が、まるで影のように揺らめいている。
彼女は一呼吸置くとまたすぐに口を開き始める。
「…だから私は、悲しそうな人を見ると助けたいの…それが、今生きている私たちに出来ることだから。」
彼女は薄くカルマスへ微笑みかけると、俯き加減に地面を凝視する。しかし、途端にいつもの笑顔でカルマスへ尋ねる。
「カルマス君は?なんで刑が執行されそうだったの?何か悪いことしたの?」
その疑問を聞いた瞬間、彼女がこの部屋に来た理由に、ようやくカルマスは気がついた。
「はぁ…、なんだルシュフそれを聞きたかったのか?」
すると彼女は頬を赤くすると、口を尖らせて反論する。
「だ、だってカルマス君、初めに会ったときすごく…淋しそうだったもの。私と同じで…。」
カルマスはそれを聞いて辛い気持ちになるが、ここは堪える。
「いや、俺はただ無罪の罪で処刑にされる所だったから…。」
「そう…。でもカルマス君それにしても━━。」
そこまで言うと彼女は口をつぐむ。
「…いえ、なんでもないわ。さあ、カルマス君と今日は雑談をしに来たんだから!」
そう言って彼女とカルマスは、月明かりでしか周りが見えなくなるまで語り明かした。
「そうなんだ。だから俺は近所のおじさんに━━。」
そこまでいうとカルマスは布団も掛けないで寝ている彼女に気が付く。
「………ごめんルシュフ。やっぱりお前にも過去の事は言えない…。」
カルマスは彼女に布団を掛けて横たわらせると、その後ろめたさから彼女とは逆を向いて眠った。
窓から森に濾過された光が、カルマスの顔を目掛けて当たる。
カルマスはルシュフの方に顔を向けると彼女もその反動で起きる。
「…な、な、な!」
彼女は布団から飛び起きると頬を赤らめて叫ぶ。
「な、なんでカルマス君と私が一緒に寝てるのよ!」
「…だって、ここで寝たから。起こすのも悪いかと思って。」
彼女はそれを聞くと落ち着き始め、深い深呼吸をする。
「………すぅ、はぁ。すぅ、はぁ。よ、よし、朝食にいきましょ。」
「あ、ああ。なんかごめん。」
カルマスは自分でもそういうことに疎いことは分かってはいるが、夜の行動で何が悪かったのか全く想像がつかない自分が苛立たしく思う。
「…はぁ、もう少し寝たい…。」
「だめよ。早くいきましょ。」
カルマスは力なく彼女に連れられ、食堂への道を歩んで行った。