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━━行き着く道は━━

買い物から帰って来たデリシアを見たルシュフは、ベリラネムがいないこと、そして彼女が必死の形相に変わっている為、疑問に思う。


彼女は息を切らしながら、一語一句丁寧に説明をし始める。すると彼女は神官から派遣された物と戦闘中だと言う。


とたん、彼女はこれ以上ないほどの憤りを覚える。


神官達がルシュフの周りごと始末しようとする理由、それは彼の父親が王直属の騎兵団リーダーであるための名目を守る為なのだろう。


━━逃げ出されてものちのち面倒になるからつてことね━━。


「事情はわかったわ。彼女を助けに行きます。全員、最高の戦闘体勢で挑みなさい。」


「はい!」


メイド達が居なくなるとルシュフは、彼女は生きて拐われたと信じて、何処に行ったのかを考える。


━━前に貴族との会話を盗み聞きした時、暗殺部隊は洞窟で過ごしていると行っていたわね━━。


彼女は記憶が甦り、そこで漸く目的地を思い浮かべる。


「エブリル、これから私達はアリナキタ洞窟へ向かうわ。」


既に戦闘準備が終わったエブリルに目的地をいうと、頭を下げてそそくさと馬車を用意しに行く。


後ろを振り返ると、そこには既にメイド達が全員集まっていた。


「…これからアリナキタ洞窟へベリラネムの救助に向かいます。最悪の場合は彼女を殺すことも厭わないように。」


「了解しました。」


ルシュフはメイド達を引き連れ、馬車に乗り込んだ。


「ルシュフ様、見えて参りました。」


森を暫く行った所に、ブラックホールのような大きな空洞がある。そこがアリナキタ洞窟だ。


「ええ、分かったわ。皆、そろそろ降りるわよ。」


馬車が動くのが止まると、一斉に馬車から飛び降りる。そして、メイド達を先頭に洞窟へ入る。


洞窟は入り口近くにも関わらず、もう殆ど日の光が入ってこない。そしてどこからか、規則的に地面に雨水が打ち付けられている。


暫く行ったところに、大きな空洞があった。どうやら分かれ道のようだ。しかし、そんな事よりも気になるのは、中央に人が立っている━━ベリラネムだ。


彼女は暗器を手に、俯きながら立ち尽くしている。デリシアが近くによって話しかけようとする━━


「…くっ。」


彼女の腕に鎖が突き刺さる。戦闘を仕掛けてきた以上、戦うしかない。


彼女の振り回した鎖は大きな弧を描き、各々に叩きつけられる。


「『上位魔法・物理防壁』!」


鉄と鉄がぶつかるような音をたてて、なんとか鎖をはね除ける。


「流石に一人でも、範囲攻撃だと堪えるわね。エブリル、彼女の洗脳をどうにか解けないかしら?」


彼は暫く考え込んだが、思い付かなかったようで首を横に振る。


「残念ながら、私の力量ではお力添え出来ません。」


「そう…、やるしかないわね。」


その言葉を聞き、エブリルは相手を一定時間止める魔法、『大自然の城門』を発動させる。


とたん、ベリラネムの真下から幾つもの太い木々が生まれて、足や腕に絡み付く。そしてルシュフは、両腕を構えて魔法を起動する。


「安らかに眠りなさい…『浄化の魂』…。」


ベリラネムは一瞬何かを言いたそうにすると、がくっと力なく倒れる。


デリシアは一目散に駆け出し、まだ少し息の有ることに気づく。


「ベリラネムさん!起きて!起きてよ!」


「なんだ…デリシア、無事に帰れたのか。」


すると、暗殺部隊が後方から五百人ほど訪れる。これは無理だと思ったルシュフだったが、


「私はこれから、この洞窟ごとあいつらを最上位魔法で消し飛ばす…。」


「そ、そんなことしたら、ベリさんは…。」


彼女の魔力が万全な状態でも、その魔法を使えば魔力が足りなくなり、死に至る。しかし━━


「何言ってるのよ…デリシア。私はまだこんなところで死ぬ気はないわよ。」


彼は笑った顔を一瞬で引き締めると、次の言葉を放つ。


「…時間が無いわ、行きなさい。必ず戻るわ。」


「………。そんなの━━」


出来るわけがない、そう言おうとするとデリシアはベリラネムに強く抱かれる。


「…大丈夫。必ず戻るわ。」


「…ずるいですよ、こんなの。」


彼女は立ち上がると、笑いながら言う。


「さあ!ルシュフ様を連れて逃げなさい!捕まったらダメよ?」


「うん…!」


ルシュフ達は彼女をその場に残し、逃げ出す。


馬車に乗り込み、洞窟の方に目をやると、爆発音とともに、天から白い光が洞窟へ落ちた。


「ベリさんは嘘つきだなぁ。」


彼女は俯きながら洞窟を後にした。

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