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━━罪悪感の悪戯━━

彼女らがたどり着いた建物は家というよりかは館に近いものだった。規則的に並べられた窓にはまっているのは、この世界では一枚でも目の玉が飛び出るほどの価格のする硝子と呼ばれる無色透明な板だ。


前のヴァリッサ邸と比べれば一回り小さい家だが、だとしても一般の平民からすれば大きすぎる物だ。


ルシュフはドアノブに手をかけるとそれを反時計回りにゆっくりと回す。ガチャリと音をたてて開いた扉の先には、埃が雪のように被さった室内が広がっていた。


ルシュフはあまりの埃臭さに咳き込む。そして後ろについてくる、人数の少なくなったメイド達を見る。彼女たちの目は生者のそれではない。目には光をなくし、この世の不幸を物語っている。


このままではいけないと思ったルシュフは、彼女たちに真剣な面持ちで語りかける。


「皆、よく聞きなさい。この場所は、私たちのようやく勝ち取った唯一休んでいい場所よ。それは━━」


続けようとしたルシュフは、彼女たちが俯いているのに気がつくと言葉が詰まる。しかし彼女は話す決心をする。


「━━それは亡くなった彼らのお陰とも言えるわ。だったら私達は、ここで幸せに暮らすの、ね?わかった?」


メイド達全員は小さく頷き声を震わせて、はい。と答える。


彼女はその反応にこれ以上は自分で何とかする事だと思ったので、メイド達にいつもの無邪気な笑顔を見せて命ずる。


「よーし。そうと決まったら、早速大掃除に取りかかりましょ!」


彼女達が各々仕事を始めると、一人立ち尽くす老執事━━エブリルのもとへと向かう。それを見越した彼は俯きながら喋りだす。


「私は…彼女らを失望させてしまいました…しかも貴女を裏切るなどという愚かなことをしてしまいました…」


そこまで言うと、彼は上を見上げ重くのし掛かるような口調で続ける。


「………お願いします。私を━━」


ご解約下さいと続けようとすると、彼女は先を読み喋る。


「………駄目よ、これがあなたへの罰。その身を賭して私に仕えなさい。」


「ですが………。」


彼はまた俯くと、両手が握られるのを感じる。


「あなたなら大丈夫。きっと皆も赦してくれるわ。」


彼は、はぁ。と、溜め息をついて彼女を見据える。


「………分かりました。私はこれから、曾ての失態を償うべく全力であなた様にお仕え致します。」


「改めてよろしく頼むわ、エブリル。早速で悪いけど、この埃臭い屋敷を綺麗にしてもらえるる?」


笑いかけてきた主人に、口を下弦形にしてエブリルは答える。


「畏まりました。」

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