七話。
その青年は、外の世界のことをたくさん教えてくれました。戦争は起こらないものの、いつ起こってもおかしくないような状況が多々あること。平和だけれど、その中でたくさん争いがあること。たくさんの歴史の上で、それを理由に争いが起こっていること。今でも争いは、大きさは異なるが、絶えないようでした。そして、この島の周りには濃い霧と変わった海流があり、簡単には近寄れないこと。
この島は、星に守られていました。争いに巻き込まれないよう、島を荒らされないよう空や海、そして地が守っていてくれていたのです。
「おれはたまたまだった。運がよかっただけ。他はたどり着くまえに死んじゃった。あの城はなに?」
青年はそういうと、城に向かって歩き始めました。島の人は、青年を城まで案内しました。
「そんな・・・。」
歴史をみた青年は、膝をついて驚きました。
「これは本当なのか?」
「紛れも無い事実だよ。」
「おれはこんな歴史初めて見た。これは外の人にも伝えないと。」
青年は絶対戻って来ることを約束して、樹の実と城の壁をいくつか持って、島を出て行きました。少年がもう一度戻ることは叶いませんでしたが、幾年もかけて世界中を回って、不思議な樹の実を見せたり、城の壁を置いて歴史を説いて回りました。そして島までもう間もないところで、青年は息をひきとりました。
しかしたくさんの人が、歴史を知り、島の存在を知り、少しずつ世界が変わりはじめて行きました。
そして、世界の歴史がひっくり返る出来事が起こりはじめるのは、まだまだ先の話・・・。
歴史を紡ぐ一方で、今日も歴史が積み重なっていく。争いを知らない世代になり、争いはいけないと教えられ、今日も選択は人に委ねられている。そんな人の歴史が、いつまでも続くようにと、今日も星は人を見守って見回り続けている。人の歴史を、途切れさせるようにならないことを、星は願いながら。