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11 冥府の姫、ついに爆誕……!?

 あたちはパライズの死の痛みを心に刻みつけると同時に、人の心の醜さに絶望もしていた。


 あの時、ネムレスがあたちに仇を討たせてくれたらよかったのに、復讐させてくれなかったおかげで、行き場の無い憎しみが、ずっと魂に刻まれてしまった。

 あたちはその憎しみを忘れたくなかった。人はどこまでも醜くなる。人の心の醜さに限界は無い。


 その逆もまた然りだ。パライズの優しさとデリカシーの無さが天井知らずだったように、人の心はどちらにもなり得る。悪い方ばかり見て、人に絶望してもしゃーない。


 だがあたちはこの憎しみを忘れたくなかった。あたちとパライズを嬲り殺して楽しんだような奴等を、文字通り死んでも許したくなかった。あの気持ちを、恨みを、忘れたくなかった。愛より憎しみの方がずっと強い。


 あたちはしばらくネムレスと共に行動した後、巫女として認められて力を授かり、とある遺跡で、この世界の根源とも言える、古代のオーバーテクノロジーの存在を知った。


 この世界を創造した一族――古き神々。ハリボテの天国である冥界と、神というシステムを創った者達。

 古代神などと呼ばれているが、現代の神々と同様、彼等のメンタリティはやはり人と違わないらしい。彼等には彼等の、人として生きた時間があったのだろう。

 そして彼等は一部のテクノロジーをそのまま残した。意図的になのか、あるいは不可抗力かはわからない。それらは世界各地にある古代遺跡の奥に、ひっそりと眠っている。


 そのテクノロジーは、世界のシステムを操作する代物だ。


 例えばこの世界で死に、神に捨てられた地へと転生したら、記憶を持っていくことはできない。そういう設定だ。そういう決まりとして、世界が造られている。しかし古代遺跡に存在するテクノロジーの残滓で、それらを操作することができる。


 あたちはネムレスと共に見つけた施設で、あたちの魂を操作した。転生しても記憶を失わないように。


 しかし機械が暴走してしまい、見事失敗。記憶は消えてしまい、あたちはそこで一旦命を落としてしまった。まあ、その後の記憶は、ちゃんと残るようになっていたので、完全に失敗したわけでもないけど……


 その後こちらに生誕して、同様に生誕したパライズとも再開し、しばらくはネムレスも交えて三人で楽しい旅の日々を続けていたが、ピレペワトとその神聖騎士との戦いで、あたちもパライズも命を落とした。で、二人して地球に転生し、縁に惹かれて出会い、ネトゲしてた。


 あたちはパライズの転生である太郎さんが、あたちの前で絶望しているのを目の当たりにして、辛くて仕方なかった。泣かずにはいられなかった。

 それを見せて、あたちは太郎さんを誤解させてしまったようだ。

 しかも悪い事に、あの後にあたちの発作が始まり、そのままおっ死んぢまったれすし。優助のバカタレが余計なことを言ったせいもきっとあるれすが、早く太郎さんに会って、誤解を解かなくちゃらめれす。


 まあ、それはひとまずおいとくとして……


 あたちは知った。世界中に古代のテクノロジーが眠っている。それらを使えば、世界を思うがままに操作できる。


 あたちは人の心の醜さが許せない。人を傷つけてそれを己の喜びにするような奴等が、憎くて仕方ない。そいつらは今もどこかで、きっと誰かを傷つけ、笑っている。このハリボテの天国でも、下界――宇宙でも。

 あたちがどちらの世界も作り変えてやる。その方法は絶対にあるに違いない。あたちが冥府の支配者となる。あの世とこの世の全ての心醜い者達を、地獄へといざなってやる。その想いだけは、記憶を失ってもなお、あたちの魂に焼きついていた。


 とうとうあたちは、それに近づける方法を知った。神を作るためのシステム――解放の塔、そのシステムをあたちの思い通りに操ることができたら、あたちの野望の成就にも近づく。


***


「今更……こんなことを思い出して、それがどうなるってんれすか……」


 ペインの回想の旅から戻ってきたあたちは、誰ともなしに呟いた。


 今……見た記憶は、あたちが覚えていなかった、前世のそのまた前世の記憶だ。ネムレスに断片的に教えられただけのものだったはずだ。それが全て掘り起こされた。


 最後の試練は、覚えていない記憶まで掘り返して見せる。その中でも特にキツいものを。それにも耐えた者が、神となれる。

 あたちからしてみればこれは、耐えるとか耐えないとかいう次元の問題ではない。あたちは記憶を失ってもなお、あの時の怒りと憎しみは心に焼き付けていたのだ。

 それを思い出すことができたのは、有益だとすら言える。


 つーか、ネムレスはあたちに幾つか嘘ついていたれすね。王国を滅ぼしたとあたちに言っていたれすが、別に滅ぼしてはいなかったれすね。まあ……滅ぼされても困るれすし、あたちを刺激しないための嘘だったのれしょうが。

 それにユメミナのことも……あたちには架空の神を崇めていたと、そう告げていたれすが、これも嘘れすか。でも、ユメミナを崇めていたことを口にすれば、あたちが独自に調べて、王国を突き止めると危惧したのれしょう。


 解放の塔の最終試練は、確かにあたちにとって最悪の一刺しであった。でも、これってあたちに限らず、ここまで耐えてきた人達が、こんなんで脱落するれすかね?

 いや、ここまで耐えなくても……よほどメンタル弱く無い限り、誰でも耐えられるれしょ。記憶の中にある最悪の思い出なんて。で、メンタル弱いのがここまで来られるわけないれすし。


 不思議な話れすが、これが一番キツい試練であることは間違いないのれす。しかし誰にでも耐えられるであろう試練なのれす。


 きっと試練というよりも、神になるために必要なことなのだろう。己の原点に立ち返ることで、自分が如何なる神になるか、それを思い知らせるためのものなのだ。あたちはそう解釈した。


 相変わらず部屋の中は光が溢れている。壁も床も天上もわからない空間。しかし眩しくて目が痛いということはない。光量自体は抑えられているのか。


『神になる事を望み、挑みし者よ。よくぞここまでの試練を突破した』


 太く朗々たる男の声が響く。

 これは予め仕掛けられていたただの一方的なメッセージなのか? それとも会話が可能か?


「へーい、質問っ。こっちと会話通じるれすか?」

『もちろんだ。私は残留思念体とはいえ、思考力は有る。魂魄や精神そのものは無いので、感情的な受け答えは出来ないがな。それ故、デリカシーな応答を期待はしないでくれ』


 希代のデリカシー無し男と輪廻転生三代にわたってつきあってきたあたちれすし、その辺は平気平気。


 しかし、感情は無くても知性と理性はあるだろうから、質問には気を使わないといけない。


 あたちが知りたいのは、ここの入力端末だ。それがここにあるのは間違いないが、果たしてどこにあるのか。

 いや、場所として『在る』という概念では無いのかもしれない。この塔のどこかに眠っているわけではなく、残留思念が管理者を行っているのなら、塔そのものが受け付けるというシステムの可能性がある。つまりこの残留思念が……


 こいつにはまともな理性があると踏む。それならばあたちが、解放の塔を自由に扱えるようにしたいから、アクセスする端末出しやがれと要求した所で、受け付けるはずがない。

 だから悩む。どうしたらこいつから情報を引き出せるか。


『どうした? 質問があるのではないのか?』


 光の中、声が問う。


「もうちょい待ってほしいのれす。それとも時間経過に不都合があるのれすか?」

『特に無い。いつまでも待つぞ』


 よし、ならたっぷりと考えてやるのれす。


 と……思ったけど、考えるまでもなく無駄と悟ったのれす。

 コンピューターと喋るようなものれすし、誤魔化しが通じるはずが無いのれす。

 しかしだからといって、ここまで来て打つ手無しで諦めるわけにもいかない。いちかばちかの賭けを行うしかない。


 管理者はこの声だけの思念体。そしてあたちには解放の塔へ干渉する鍵となるものを所持している。ということは……


 あたちは鞄の中から、カクテロ遺跡で見つけた例のプレートを取り出した。

 これが鍵。これがあったからこそあたちはここまで来た。このプレートの中に記されていた、古代魔法言語、それがパスコードであったからだ。


 あたちがプレートに魔力を込め、起動させる。するとプレートの上で無数の古代魔法言語が映像化して記される。

 最初に解析した際も、この映像が出た。これがパスコードだ。映像化という部分にも賭けてみた。管理者が反応するのではないかと。いや……残留思念体の管理者こそが、端末になりうるのではいなかと賭けてみた。


『管理領域を呼び出します』


 声が変わった。いかにもオペレーターらしい女性の声になった。


 光が止まった。今までとうってかわって漆黒の空間へと変わり、その中で無数の映像と文字が溢れていた。

 かなりSFチックな風景の空間である。そしていつしかあたちのすぐ背後に椅子がある。


「呼び出した……と言ったれすね?」

『はい、言いました』


 あたちの声に反応し、女性の声が言う。


「つまり……あたちが別の部屋にワープしたわけではなく、あたちのいる空間に、今のこの部屋を持ってきた――ということれすか?」

『その通りです。問題がありますか?』


 なるほど……流石は古代神のテクノロジーれす。凄いという以外に他無いのれす。


「では質問するれす。ここは解放の塔のコントロールルームに相違無いれすね」


 唾を飲み込み、肝心の確認へと移る。果たしてこれでようやく、ここまでの道のりの苦労が報われるのだろうか……


『はい』


 即答。今度は息を飲む。体が微かに震えている。


「つまり、ここで解放の塔そのもののシステムを自由に操作することが、可能ということれすね?」

『はい』


 即答。いや……まだ喜ぶには早い。最も肝心な確認が残っているのれすよ。


「その操作は……あたちにも可能れすか? 塔に仕掛けられたペインの試練を解除し、任意の者を神とするよう設定を変える事や、解放の塔を任意の場所に出現させる事も……可能れすか?」


 この二つができるかどうかが全てだ。


『管理領域に入った者は、解放の塔の全てのシステムを掌握します。自由に操作し、設定を変える事が可能です。また、塔の機能を向上させる事も、管理者次第で可能ではありますが、現在の塔には、自由な場所に転移する機能は、搭載されておりません。大陸の特定の領域内に、任意もしくはランダムで、解放の塔へと繋がる空間の門を開く程度です。現在は、ランダムで塔へと繋がる扉が開くよう、設定されております』


 ああ……そうだった。スプレーが言っていた。解放の塔がランダムにあちこちに現れているという話は、実は違う。解放の塔へと繋がる空間の門が、この大陸のあちこちに現れているのだ。

 しかし……これであたちの悲願は達成されると言っても、過言ではない。少なくとも、ここに来た目的はかなう。


「速やかにランダムな空間の門を開く設定を解除するのれす。そして塔に入ってきた者にペインを与える試練も解除するのれす」

『了解しました』


 あああああ、ついにやった! ついにやったれすよっ! すっごく興奮して体が震えまくってきたのれすっ!

 と、と、とととと、とりあえずれすね……。外で首を長くして待っている連中を、こにこ迎え入れるのれす。そしてあいつらを神にしてやるれすよ。


 その後はまた……この塔の機能について、もっと詳しく調べないとっ。


***


「ええっ!?」

「はっ?」


 塔の前であたちを待っていた、マリア、ヨセフ、下僕A~Cをこの管理領域へと転移させると、当たり前だが彼等は驚いていた。


「リザレちゃん!? こ、これはっ!? ここはっ!?」

「どうやら成功したようだな。ここは解放の塔の中か?」


 マリアがうろたえまくる一方、ヨセフは冷静に状況を見抜いた。


「お待たせしてごめんなさいれす。まだ全てを把握したわけではないれすが、待たせているのも悪いと思って、こっちに呼んだのれす」

「マジですかー」

「おお……姫、とうとうやったのか」


 下僕AとBが表情を輝かせる。


「当初の目論見は達成できそうれすよ。ペインの試練とか関係無く、塔の中に人を呼んで、神にすることも自由自在れす。しかも大陸の任意の場所に、空間の門を開くことも可能らしいのれす。不可能なゾーンもあるらしいれすが」

「シャンペニアとブランデリスの前に門を開き、部下達を全員ここに呼び寄せ、神にすることも可能というわけか」


 察しのいいヨセフが、すぐにその結論に行きつく。


「そういうことれす。しかし……まだ待ってくださいれす。今は慎重に調べつくし、確認しつくしておきたいのれす。どこに落とし穴があるかわからないれすからね」


 そう言うあたちであったが、自分でもほくほく顔をしているのがわかる。ここまで確認できれば、もう多分大丈夫だろうと考えている。


「姫の悲願――世界征服もできちゃいますよね」


 と、興奮した顔で下僕C。


「ええ、れきますよ」


 おそらくはドヤ顔で、きっぱりと断言するあたち。


「今いる下僕を片っ端から神に作り変え、さらに下僕を増やしてそれも神にして、神々を総べる支配者――冥府の姫となって、この世界をあたちの理想の姿に変えてあるのれす」


 すでに何度も彼等の前で口にしたことだが、あたちは力を込めて、改めて口にする。あたちはとうとうその力を手に入れたのだ。


「リザレちゃん……本当に、凄い力を手に入れちゃうんですね。現実感無いなー」


 マリアがどことなく余所余所しい目であたちを見る。


「お願いですから……暴走して悪のラスボス化はしないでくださいね……。そんなのだけは、絶対に嫌ですよ……」

「そうなるように今見えた」

「いやいやいやいや……」


 心配そうな顔で懇願するマリアと、きっぱりと言い切るヨセフに、あたちは苦笑いを浮かべる。


「あたちはあたちの野心のために、人を傷つけたり哀しませたりは、できるだけしないつもりれすよ。無血で世界征服するって、最初から言ってるれしょ」

「それでも、いざ力を手に入れようとしているリザレちゃんを見ると、ちょっと怖いですー」


 むう……大魔王扱いされて、怖がられるのも嫌なのれすが……


「で、神を自由に生産できる機能以外に、まだ調べて確認しなくてはいけないこととは何だ?」


 ヨセフが問う。


「古き神々――この世界の創設者達の知識をもっと知りたいと、思っているのれす。この世界をこういう形にしたことや、神というシステムを作った真意を知っておきたいのれす。それも知らないまま、ほいほいと目の前にある力を使って、落とし穴にはまるのは避けたいのれす。実は知らなかった代償があったとか、そんなんで後から後悔したくないれすしね」

「なるほど、慎重だ」


 あたちの解説に、珍しくヨセフは満足そうに微笑んで頷いた。


「マリア……これだけ思慮を巡らしているのだから、リザレのことは信じてもいいだろう。そもそも信じないのなら、何でここまで着いてきたのかという話になる」

「そ、そうですね」


 マリアの方を向いて、あたちのフォローをしてくれるヨセフ。これまた珍しいれすが、ありがたいのれす。


 そういや……まだ確認してない、気になることを管理者は言ってたれすね。


「塔の機能の向上とか言ってたれすが、あれは何れすか? この塔のテクノロジーをどういう形で向上するというのれすか? その方法も教えなくちゃらめえ」


 あたちがその場で、何者かに向かって質問したので、一同怪訝な顔になる。


『塔の機能が如何なる形で向上するかは、全く予想がつきません。管理者の願望次第であり、解放の塔へと捧げられたベイン量次第であり、世界各地に点在する遺跡に隠されたキーの解除次第です』


 突然女性の声が響き、驚く面々。


 あたちも違う意味で驚いた。また新たに気になる情報が幾つも伝えられたのれす。


 遺跡に隠されたキーの解除ってのもあれれすが、何より気になったのは、捧げられたペインて何れすか……? 凄まじく不穏な気配がするのれすよ。


「解放の塔に捧げられたペインとは……何のことれすか?」

『解放の塔が、世界中の神々と神徒に奇跡の力を供給し続けているのは、この世界にあるペインという負の精神エネルギーを、正のエネルギーとして転化して成している事です』


 さらに驚きの答えが返ってくる。


「するってーと何れすか? ペインとは、神の力の源として汲み上げられていると?」


 神々の力の源は、信仰じゃなかったのか? いや、それ以外にも必要だったのか?


『神々の力の源である事も事実ですが、それだけではありません。グノーシスの一族によって創造された巨大亜空間に築かれし、この世界を機能させるエネルギーの源でもあります。また、神々に捨てられた地という設定で伝えられし原初宇宙――つまりオリジナルの世界と、この世界を行き来する魂の循環のためのエネルギー源でもあります。本来、死者は即座に輪廻転生するのが世界の法則ですが、その法則を捻じ曲げ、死者の魂をこの巨大亜空間へと引き寄せるには、莫大なエネルギーが必要となります。そのエネルギー源が、ペインです』


 あたちは他の五人と顔を見合わせていた。


 皆呆然としている。普段ポーカーフェイイスのヨセフもだ。話についていけなさそうな者もいるが、半分くらい理解しただけでも、これが途方も無い話だとわかるだろう。そしておぞましい話である事も。


「そのペインは……一体どこから来ているのですか……?」


 マリアが呻くように問いかける。


『この巨大亜空間――この世界のありとあらゆる場所から集めていますが、通常発生するペインだけでは、とても賄えません。解放の塔周辺――ペインの深淵と呼ばれる領域に、魂を集め、常に高負荷のペインを発生させる状態で、留めてあります』


 あの亡者達のことを思い出す。間違いなくあれを指している。


 古代文献にもほとんど載っていない、ごく一部の博識な者しか知らない存在――ペインの深淵。それは古代神が残した負の遺産であり、様々なペインを背負わされた者がひたすら苦痛に耐え続ける場所だと、そんな断片的な記述だけが伝えられていた。

 正にその記述の通りだったということれすか……


「無間地獄……」


 あたちがぽつりと呟く。


「ペインの深淵のあの亡者達……ペインの負荷を与えられても、魂は下界に――オリジナル世界である宇宙には、還らないのれすか? 普通、ペインが限界に達すると、あちらに転生受肉するれすが……」

『はい、効率を考えて、還らないように設定してあります』


 効率……だと……?


 あたちは……キレそうになっていた。同じだ……。かつてあたちが生まれたあの、忌まわしい王国。格差社会のはけ口として、姫殺しの儀式なんてものを作って、姫に犠牲を強いることで成り立たせていた腐った国と同じ。

 いや……同じというのは、犠牲という一点らけれすが。これはあまりにもスケールが違いすぎる。


「お笑いれすよね……皆……」


 あたちはその場によろめき、床に尻餅をつこうとしたが、管理者が気を利かせて出現させた椅子へと腰かけた。


「今、あたち達は……このハリボテの天国の、壮絶におぞましい真相を知ったのれすよ……」


 あたちが他の五人の顔を見回す。皆気の抜けた顔をしている。


「いや、ここだけじゃないれすね。この世とあの世、二つとも合わせた世界の……宇宙の全ての……あたち達の魂は、古き神々とやらに呪縛されているわけれすね」


 あたちは力が抜けると同時に怒りがこみ上げてきた。


「ふざけるなっ!」


 あたちは立ち上がって虚空を睨みつけ、自分でも驚くほどの声量で、すでに輪廻の果てへと消えているであろう、こんな世界を創った奴等に向かって怒鳴った。

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