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19 トリプルおっぱいサンドイッチ

 面倒だが、俺はここで起こった事を全て話した。


「墨子とサリンと我々までもが一度に洗脳されるなど、にわかに信じ難いが、嘘のようでもないな」


 俺が奇跡の絵で出した新しい服を着たヘカティが言う。


「それにしてもこれ、胸がぴちぴちなうえに、胸元が空きすぎてはいないか?」

「いいの。女は胸を強調すべきなの」


 文句を言うヘカティに、俺は断言した。


「一つ疑問があるな。ピレペワトはどのタイミングで俺達のことを知り、罠にかけようとしたか」


 顎鬚をいじりつつ、ドロカカが口を開く。


「俺達が遺跡探索に行くという話が出て、それに剣神達はストップをかけた。しかし剣神達はそんな事実も知らないという」


 ヘカティの話によると、モーコ・リゴリ遺跡探索に反対したという件自体、知らないという。また、反対する理由もどこにもないとのことだ。


「賢者院で遺跡探索の話が出た時点で、先回りしたのではないか?」


 と、ネムレス。


「あるいは賢者院でその話を提案した奴からして、ピレペワトの回し者かもな。ネムレスが賢者院に入り浸りなのも知ってたんだろう」

「それも有りうるな」


 俺の言葉に、ネムレスが頷く。


「まあ、僕にちょっかいをかけるのは昔からだが、よりによって太郎やディーグルやゴージンと合流したタイミングを狙うとは、愚かなことだ。あるいは一網打尽にしたかったのか?」

「貴様はさっさとあの厄神との決着をつけろ。いい迷惑だ」


 嘲笑するネムレスに、むっつり顔のマガツが言い放つ。


「逃げ足だけは速い奴なのでね。僕とて、奴を滅ぼしたい」


 マガツを睨み、ネムレスが言い返す。


「神に寄生して狂気を促して操る奇跡と、神殺しの奇跡、こんなおぞましい奇跡を一日の間に味わうことになるとな」

「俺の奇跡も味わってるだろ。それが一番いいだろ」


 疲れた顔で言うヘカティに、アピールする俺。


「遺跡探索どうこうより、墨子とサリンを狂神の呪縛から解き放たねばな。貴様等にも協力してもらう。その責務が無いとは言わせん」


 一同にそれぞれガンを飛ばし、有無を言わせぬ口調でマガツが言い放つ。あー、これはネムレスが嫌う気持ちわかるわ。俺も嫌い。

 ネムレスの言う、マガツが心を失う一歩手前というのは、未だよくわからんけど。


「知るか馬鹿。そういう言い方されると協力したくなるんだ、俺は」


 マガツを睨み返し、キッパリと言ってやる俺。マガツは動じることなく、全く顔色を変えない。


「僕も同感だが、だからといって墨子達を放っておくわけにもいかない。マガツだったらどうでもいいが、墨子は友人なので助けたい。そんなわけで太郎、ひとまずピレペワトへの対処を優先だ」


 ネムレスが俺の頭を撫でながら言った。ちっ、しょーがねーな。


「ところで太郎は何で女の子になっているんだ?」

「ちんちんはありまぁす」


 やっと突っこんだヘカティに、いつもの返しをする俺だった。


***


 俺とその下僕らもネムレス同様、今後しばらく賢者院に寝泊りするように取り計らってもらった。


「ドロカカが持ち逃げした古代知識の解析は、不完全だった。記憶の片割れでしかなく、完全な解析にはパーツが不足している」


 ネムレスの私室にて、俺とディーグルとゴージンの三名を前にして、ネムレスが言った。ドロカカは賢者院本院の方へ行っている。


「それでも多少は判明したがな。だからこそ第五次調査隊という話も出たわけだ」

「何だったのさ」

「この世界を破壊するための方法だ」


 さらりと告げたネムレスに、俺は言葉を失った。


「そんな知識、堀り起こさない方がいいだろっ」

「逆だ。僕の推測通り、その方法はやはり存在した。もしその方法で破壊されそうになったならば、食い止めなければならん。そのためにも残りの正しい知識を知り、他の者に見つからぬよう、厳重に秘匿せねばならない」


 確かにネムレスは以前、夢の中でそれらしいことを言ってたな。


「だからさー、そいつを持ち出して世界を壊す方法が判明したら、頭おかしな奴がそいつを実践しちまうかもしれねーじゃねーか。ピレペワトとかさ」

「秘匿しておくと言っているだろう」

「どこからバレるかわからんだろっ。それでなくてもピレペワトは、賢者院や剣神にまで手出ししてるんだしっ」

「それに関しては平気ですよ」


 ディーグルが口を挟んだ。


「ドロカカが持ち出した禁断の知識を収めた記憶プレートは、破壊のための鍵の役目も果たす。それは僕が管理する。だがこの鍵は、製造ができないわけでもない。コボルトの惑星の科学技術力があれば、容易に再現できてしまう代物だ。故にまだ未判明の知識が必要となる。加えて言えばこの知識も鍵も、モーコ・リゴリ遺跡だけにあるとは限らない。故に、他の遺跡で同様の知識が発掘され、馬鹿者の手に落ちれば、古代の神々――グノーシスの一族が仕掛けた、世界崩壊のスイッチが入ってしまう」


 ネムレスの言うこともわからんでもないが、どう見てもヤバいフラグとしか思えん。しかしまあネムレスが管理するなら平気か……


「よくネムレスが管理ってことで、賢者院説得できたな」

「賢者院に全く知識を渡さぬわけでもない。ただし、世界崩壊のスイッチに関しては、記録に残さぬ形にしてもらった」


 なるほどなー……普通ならそれで安心もできるんだが。


「話し戻すけど、ピレペワトは……それを知ってるのか?」


 賢者院の長であるサリンが操られていた時点で、奴にもその話はバレている気がするんだがなあ。


「サリンを狙っていた――そして今操り人形にしている時点で、ピレペワトにも知られている可能性は高い。だが……奴の性格を考えると、世界の崩壊など望まぬだろう。奴が望むのは狂気の世界であり、破壊ではない」


 狂った奴なんだから、何しでかすかわからんと思うけどなあ。そんな風に楽観してていいのか?


「ドロカカさんの方も、別の意味で危険ですよ」


 と、ディーグル。


「彼に破壊欲は無いでしょうが、自分の知的好奇心を満たすためであれば、手段を選ばずという人です。何か厄介なことをしでかしそうです」


 ディーグルは徹底的にドロカカを疑ってかかってるなあ。相性の問題もあると思えてきた。


「うむ。あの男もできるだけ目の届く範囲に置いて監視しておこう」


 ネムレスが腕組みして頷く。


「リザレが解放の塔を制御する対抗策ってのは……結局見つからなかったわけか」


 言いにくそうに言う俺。ネムレスとしては、その期待もあったはずだ。


「ドロカカが持ち出した知識には無かった。しかしまだモーコ・リゴリ遺跡他、どこか別の場所に、対抗しうる知識も眠っている可能性はあろう」


 可能性は顕在ということか。


***


 翌日、ソードパラダイス全域に御触れがあった。剣神墨子と賢者院長サリンが、狂神ピレペワトに幻惑されたと。そして狂神ピレペワトを見た者は通報せよと。

 というか昨日あった出来事が全部公開されていた……。


「堂々と有りのままバラしちゃっていいのかよ」


 俺達は賢者院の庭で、掲示板に貼り付けられた御触れを見て啞然としていた。国に混乱招くわ、逃げ回っているピレペワト達はますます引っ込むわで、いいこと何もねーだろうが。最悪の場合、墨子とサリンを連れてそのまま都市の外までとんずらされるぞ。


「墨子が仕切っていれば、こんな愚行はすまい。マガツが頭についたらこの有様だ」


 ネムレスが呆れきった様子で吐き捨てる。


「奴は考えるということがろくにできんからな。敵がどこかに潜んでいるなら、公開して民にも探してもらおう。そうすればいずれ見つかると、この程度だ」

「側近が止めはしないのですね」


 と、ディーグル。


「うむ。墨子でないと抑えられん。マガツの信者もまた脳筋揃い、そしてイエスマンときている。おまけにマガツの信者達は、墨子が実質的な支配者であることを快くも思っていない。マガツは一応、墨子の言葉を全て通すのだがな。自分が脳筋の自覚もあるし。しかし墨子の信者である側近達の意見は、マガツの側近に阻まれ、通されないと言う構図だろう」


 苦々しい面持ちのネムレス。


「なるほど。腐ってるな」


 吐き捨てる俺。


 ふと思ったが、剣神達に神聖騎士や巫女っていないのかね? 剣神の伝承とか見ても、全く話に出てこなかった。


「そレで、如何にすル?」


 ゴージンが尋ねるが、ネムレス無言。ディーグルも反応無し。まあ答えようがないな。


「手詰まりじゃね? マガツがこんなアホなことしなければ、ネムレスを餌にしてピレペワトを誘き出す手立てもあったけど、これじゃあ警戒されちまうだろ」

「主に向かって餌とは何だ」


 ネムレスが俺の頭を軽く拳で小突く。


「一つ疑問ですが、剣神複数に同時に寄生するとは、ピレペワトは分身でもしたのですか?」


 ディーグルが疑問を投げかける。


「おそらくはピレペワトの巫女マンの奇跡だ」


 マン……巫女でマン……うーん……


「奇跡の効果を遠方に及ぼしたり、多重に効果をおよぼしたりできるようになね力を持つ。支援系奇跡が故に、単独では何も恐ろしくないがな。しかしマンはピレペワト以上に性格的に難が有り、主の命令もろくに従わん」

「狂気の神に仕える巫女も、一筋縄ではないってことか」


 神もクレイジーなら、神徒もクレイジーか。


「だが剣神複数を操っているからには、マンが関与しているのは間違いない。奇跡の多重化にせよ遠方化にせよ、奇跡の力そのものが弱まってしまうので、神三人とサリンの計四人に同時に効果を及ばすとなると、ピレペワトの力は相当増大していると見ていい」


 他の神に寄生して信仰心奪って力を増大とか、つくづくふざけた奴だと、ネムレスの話を聞きながら思う。


「おーい、お前ら大変だぞ」


 ドロカカと賢者数名がやってきて、声をかけてくる。ドロカカの声音は、全然大変そうじゃない。いつも通りへらへらと笑ってやがるし。


「サリンが帰ってきた」


 この報告には、全員驚いた。


「サリンだけか?」


 ネムレスが問う。


「うむ。見た感じは正気のようなので、ネムレスに判定してほしいとのことだ」

「わかった。行こう」


 ドロカカの言葉に頷き、俺達は移動する。

 賢者院の入り口に行くと、果たしてサリンはいた。俺の目には正常。瞳にも表情にも狂気は感じず、毛並みは綺麗だし、おっぱいも中々。

 ていうか、サリンも墨子もヘカティも、ピレペワトに寄生されている際に、おかしなことされてないのかが心配だわ。


「皆さん、お騒がせしました」

「ヒムレペワトに支配されている気配は無い。解放されている」


 ネムレスが一目見て断定する。


「どういうことゾ?」

「おそらく巫女のマンが非協力的になったので、サリンか墨子のどちらかにしか寄生の奇跡が及ばなくなったのだろう」


 ゴージンの問いに、ネムレスが答えた。


「はい。私は突然正気に戻ったので、何とか逃げてきました。と言っても、支配されている際の記憶はありません。気がついたら、明らかに正気を失くした墨子様と、ピレペワトとその神聖騎士らしい少年が目の前にいまして」


 気付いたら目の前にいたのに、よく逃げてこられたなあ……いや、ピレペワトの間抜けさを考えれば、あまり不思議ではないか。


「サリン、ピレペワトはどこにいた?」

「貧民窟です。すでにマガツの信者達がくまなく捜索し、なおかつ貧民窟の封鎖を行っています」


 サリンの報告に俺達は顔を見合わせた。


「マガツの御触れによって、信者達が街中を血眼に探していた所を、おおよその場所が判明したが故に、即座に対応といった所ですか……」


 微苦笑を浮かべてディーグルが言う。俺やネムレスは否定的だったが、マガツのこの頭の悪い御触れが、結果として功を制してしまった形だ。


「僕達もすぐに向かう。しかしくれぐれも警戒が必要だ。ピレペワトよりも、奴の神聖騎士の奇跡の方をな。太郎、君はそのタリスマンがあれば、奴の奇跡の効果が及ばん。移動中にいい策を考え付け」


 俺の方を向いて無茶な要求をするネムレス。


「移動中、ネムレスとゴージンとサリンがトリプルおっぱいサンドイッチしてくれたら、いい案が浮かぶような気がするんだ」

「おっぱいに夢中になって何も浮かばないでしょ」


 俺が真面目に要求したが、ディーグルが余計なことをぬかした。ふぁっくー。

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