17 おぞましき転生
ヘカティが凄まじい勢いで、正面から弾丸の如く突っこむ。
突っ込んでくるヘカティに対し、マガツが肩に乗せていたグレートソードを目にも止まらぬ速さで振り下ろして迎えうつ。
マガツの剣はかわされ、ヘカティのロングソードがマガツの筋肉の鎧を切り裂いていた。
まさかの先制――だったのだろうか? 闘技場全体がどよめきと歓声のまじった声で包まれる。
「おいおい、マガツが一撃食らうなんて、何年ぶりだよ」
ナミャーロも啞然としている。
しかし当のマガツは全く顔色を変えず、横に回ったヘカティをなぎ払うかのように、体ごと剣を振るう。
ヘカティはその攻撃を予測していたようで、大きく体を沈めてやりすごすと、前方に向かって剣を持った腕を伸ばす。
ロングソードがマガツの喉があった空間を突き抜ける。マガツは体ごと剣をぶん回した勢いと共に、ヘカティの突きもそのまま回転してかわしていた。かなり際どい所であったが。
両者、同じタイミングで一歩退き、体勢を整えなおす。そして同じタイミングで敵に向かって踏み込みあう。
グレートソードとロングソードが同時に振り下ろされる。
ヘカティの二撃目がマガツの大きく盛り上った肩に深々と食い込み、再び大きな歓声があがる。一方でマガツの剣もヘカティの頭部を割っていた。兜が破壊され、ヘカティの素顔が露わになる。
両者共にペインを与えあっているが、行動不能に至るほどではない。ヘカティの方が大きく後方に跳んで、距離を取る。
「二発も当てたぞ。ヘカティ……旅先でどれだけ腕を上げたんだ」
ナミャーロが呻く。
しかしどうもヘカティは今のでペースを崩されたようだ。息を整える暇を与えまいと、マガツの巨体が一気にヘカティへと肉薄し、袈裟懸けにグレートソードが振られる。腕と剣の長さで、リーチは圧倒的にマガツに分があるうえに、速度もヘカティを上回っているかのように見える。
勝負は最早決まったも同然だった。ヘカティはマガツの一撃を浴び、戦闘不能にこそならなかったが、完全に流れをマガツに握られた。
袈裟懸けをまともに受けて、かなりのペインを食らいながらも、果敢に踏み込んで剣を振るわんとするヘカティであったが、それより速く振るわれたマガツの横薙ぎの一撃によって、その体は崩れ落ちた。
歓声があがる。マガツの勝利を称賛するよりも、ヘカティの名のコールの方が圧倒的に大きい。あっという間についた勝負であったが、彼女の善戦に、観客は熱狂と興奮に包まれていた。
「んー……ヘカティは残念であったが、あのマガツなル神、ただごとではない強さゾ」
ゴージンが唸っている。
「あレは……剣技だけなラ、ディーグルをも上回ルやもしレぬ……」
そりゃ確かにただごとじゃねーな……
***
俺とゴージンは闘技場を出て、次はどこに行こうかと思案していた。ナミャーロはまた別のカモを探しに行き、俺達とは別れた。
「郷土資料館とか……ゴージンは興味ある? こういうのってつまらないか?」
地図を見ながら俺が問う。
「然様な事は無いゾ。行こう」
ゴージンが嫌がらなかったので、郷土資料館へと赴く。
郷土資料館は思ったより巨大な建物だった。五階建てで、横幅もある。建物そのものも意匠を凝らした代物だ。
まず目に付いたのは、絵画で描かれた、ソードパラダイスの誕生話だった。
最初は森の中にあるただの集落であり、他の集落同様に魔物の脅威に晒されていたらしい。しかしある一人の男が周辺の魔物を残らず、蹴散らした。
その後、男は提案した。森を切り開いてより人が住みやすい環境へと変え、魔物が寄り付けず、人の数を増やし、人が住みやすい安住の地を作ろうと。
人々は賛同し、森を切り開こうとしたが、失敗した。どういう原理かは不明だが、切っても木はすぐ生えてくるのだ。
仕方なく集落の者は別の手を打った。森から抜けた岩石地帯へと移動し、そこに拠点を作り、石造りの家を次々と作っていくという手だ。
このお引越しを実行した時点で、何だか趣旨が微妙にズレてる気もするが、まあよしとしよう。彼等の目的は、人々の安住の地を作ることなのだから。
無人の家を沢山作った所、魔雲の地で生誕した行き場の無い者達が自然と集ってきて、集落は村程の大きさにった。
ある時、村の前に解放の塔が出現した。
リーダーである男――後の剣神王マガツは、有志を募ってこれに挑んだ。十人の挑戦者の後、残ったのはマガツを含めて四人。これが後の四人の剣神となる。
神が四人も治める平和な場所があるという噂が広がり、人々はどんどん集ってきた。そして村は町となった。
マガツ達は、魔物に対抗する武を尊ぶべきという思想を根付かせ、町へと訪れた者には剣術も学ぶ義務を与えた。
町はどんどん拡張していき、岩石地帯も全て建物で埋め尽くし、切っても生えてくる森にも及んだ。神々の奇跡と人々の魔法と石畳による埋め立てにより、木は生えなくなった。そして巨大都市が完成したのである。
賢者院は天候すら操り、この都市とその周辺の上空の魔雲をも退けた。かくして、危険な魔雲の地の中に、唯一、人々が平穏に暮らせる場所が誕生した。それがこのソードパラダイスでしたとさ。めでたしめでたし。
正直……幾つかツッコミ所のある話だ。平穏が欲しければ、魔雲の地から出て行けばいいじゃねーかよ……。なのにあえて魔雲の地にそれを築くという発想。そして魔雲の地にいる中で、平和を欲する者達も魔雲の地からは出ず、ソードパラダイスを目指すというからわけわからん。
冒険者でもないのに危険を承知で旅する者達も、ソードパラダイスに引っ越そうという発想もなく、魔物の襲撃に怯えながら小さな集落に暮らす者達も、魔雲の地には多くいる。死の危険と隣り合わせにも関わらず、彼等はあまり悲観していない。
魔雲の地はゴミ捨て場のような側面もあるが、ここで生誕する者の多くは、結局この地と相性がいいからこそなのではないかと、俺は考える。もちろんそうでない者もいて、そういった人はソードパラダイスを目指す、と。
あと、魔物に対抗するために、武を尊びだの剣を学ぶだのと言っても、町くらいの大きさになった時点で、もう魔物は人間恐れて近づかないわけで……
そういうツッコミ所に触れるのは、無粋なのかもしれんけどなあ。
「太郎、こうした絵を見て、また絵を描きたいという気持ちは沸かぬのか?」
見終わったところで、ゴージンがそんな質問をしてきた。ソードパラダイスの誕生話には興味無かったらしい。
そして嫌な質問だなあ……
「うーん……筆を取るのが怖いからな」
「いつぞや、皆で集って描いたではないか」
「あれで恐怖が消えたわけでもトラウマが癒えたわけでもないさ」
考えただけで、体の中にざわざわと変な感触が走る。諦めという敗北の悔しさと苦さがもたらす、深刻な心の傷。
この時、俺はどんな表情をしていたんだろう。ゴージンの俺を見る表情があからさまに変わっていた。動揺と同情が激しく入り混じった、そんな顔で俺を見下ろしている。
「余計なルことを言ってしまったようだ。許さレたし」
ゴージンが俺の頭を撫でる。
「いや、いいよ……」
「よくは無いゾ。重傷のようだ。いつもの太郎なラばここで、『許さーん。おっぱい揉まさなけレば許さーんっ!』と口にすル所ゾ。その気力すラ無いとは、深刻な傷となっていルのだな」
おっぱい要求するか否かで俺の心の傷は判定されるのか。
「じゃあ今なら揉ませてくれるのか?」
「やラぬ」
即座に拒否しつつ、ゴージンは俺の頭を抱え、胸に押し付けてきた。
「性質は違えど、我も太郎も、死しても癒えぬ深い傷を抱えし者同士ゾ。ますます強い親近感を覚えル」
ますます……か。正直そんなもので親近感を持たれるのはちょっとな……。それ以前の親近感も妹似どうこうだし。まあ俺なんかが妹の代わりになって、ゴージンの慰めになるなら、好きにしてくれていいと思うが。
***
郷土資料館の見学を終えた俺達は、今度はゴージンの提案で服屋へと向かった。何だろう。凄く嫌な予感がする……。いや、何だろうじゃない。嫌な予感ではなく、嫌な予想が頭の中にはっきりと思い浮かんでいる。
「どうした? 浮かない顔をして? 口数も少ないゾ?」
歩きながら俺の顔を覗き込んで尋ねてくるゴージン。
「まさか、また我がお主に女物の服をあつラえルのではないかと、警戒しておルのか?」
違うのか……よかった。
「正解ゾ。今度こそとびきリ可愛い服を着せて、その服のまま歩かせル也。以前買ってやった服のうち一着は、全く着なかったしな。ディーグルとネムレスを驚かせてやロうゾ」
ゴージンがニヤリと笑い、俺が予想していたよりさらに悪い計画を口にする。ただ着せ替え人形するだけかと思ったら、そのまま着せて歩かせるとか……想像しただけで気が遠くなる。
確かにあの時買ったファンタジー風なヒラヒラ服は、恥ずかしすぎて無理だった。またあんなの着せられるのか? そして今度はあれで外を歩けと……・
でも郷土資料館で、ちょっとダークな雰囲気になった後だし、断りづらい。ゴージンが喜んでくれるのなら……もう何やってもいいやと、そんな気分。
到着した服屋を見て俺は驚いた。デカい。超デカい。服屋というか、どっかの神殿か城かっていうぐらいの建物。入り口からしてデカい。巨人も通れるデカさ。
中に入るとさらに広い。天井が超高いし、通路の幅も広い。何なのこのデカさはと思ったら、その理由はすぐに判明した。
「いらっしゃーい」
巨人族の赤毛の綺麗なお姉さんの店員が、愛想よく出迎えてくれた。奥にも巨人のおっさんの店員がいる。なるほど、巨人族が経営する服屋だったか。
店員が巨人族だけあって、巨人用の服を扱っているが、他種族用の服もちゃんと並んでいるし、広い店舗の中には、店員にも人間やらドワーフやらゴブリンの姿もある。
俺はゴージンに手を引かれ、女の子用の服売り場へと連れて行かれる。地獄へ突入だ。
移動中、たまたま店内に置かれた鏡に映った俺の顔見たら、俺、死んだ魚の目をしていた。
「こレはよいな。こレもどうだ? む、こレもよい」
「ちょっ、ちょっと、ゴージン……」
ウキウキ顔で下着まで選ぶゴージンに、俺は引く。
「下着は勘弁してくれよ。ちんちんとたまたまがキツそうだぞ。いや、それ以前に恥ずかしいし。そこまでやるのはキツいよ……」
前回は流石に下着までは選ばなかったしなあ。
「却下だ。今度は徹底的にいくゾ。邪魔だと言うなラ取レばよかロう」
いかん……今回のゴージンは、本気を越えた本気だ。何が彼女をそこまで動かすのか……
「おい、その子は男の子じゃないのか?」
そこに予想外の救いの手が現れた。巨人のおっさんの店員が声をかけてきたのだ。
「うむ。しかし今日かラは女の子の服を着せ、男の娘として転生させル也」
巨人の店員を見上げ、堂々と言い切り、決定するゴージン。
「おーい! 手の空いてるのーっ! 緊急事態だーっ!」
巨人のおっさんが店員達に声をかけた。いかん……猛烈にヤバい予感が……そしてデジャヴが……
「どうしたんですか? 店長」
「この女の子みたいな見た目の男の子に、よく似合う女の子用の服を見繕ってやれ」
予感的中。店長、余計なことするな。
「よかったな、太郎」
にっこりと朗らかに笑うゴージン。何がよいのか。守りたくない、この笑顔。
それから俺は抵抗することもなく、しばらくの間、試着室の中でレイプ目で着せ替え人形化していたが、それだけでは済まなかった。
「ちょっと歩いてみてください」
スカートをはいた俺に店員が要求する。もちろん上も女物の服だ。
「うーん……格好だけ女の子にしてもこれじゃあねえ」
「確かに。ちゃんと仕草も女の子のそれっぽくしなくっちゃ」
「その矯正もしてくレルか?」
「もちろんです。徹底的にやりましょうっ」
地獄の底まで堕ちきったと思ったら、さらにその下がまだあったようだ。
「も、もういいだろ……。これ以上は……」
「いい? 私の動きを真似てみて。こう。おしとやかに、内股に、そうそう。足をそろえて、背筋をちゃんと伸ばして。もっと柔らかさをイメージして。そうそう、可愛い可愛い」
抗おうとする俺だが、無駄なあがきであった。店員の洗脳話術に屈し、従ってしまう。
「おお、女の子ラしくなってきたゾっ」
俺の動きを見てゴージンが歓声をあげる。
「我が事成レリ。最早太郎は立派な男の娘ゾ。この路線を未来永劫貫くのだ」
これがゴージンの望みだったのか……。んー……未来永劫はキツいなあ……
***
その後、見た目だけは完全に女の子化した俺は、極めて上機嫌なゴージンに手を繫がれたまま、街中を歩き、飯屋で食事を取りながらまた女の子らしい仕草などを指導され、うまく行く度におだてられ、男の娘として洗脳されて洗練されていった。
微かに残った理性で、正気に戻るタイミングを計る俺であるが、かつてないほど御機嫌なゴージンを見ていると、ぶち壊すのは気が引けてしまう。さて、どうしたものか……
何よりヤバいのは、おだてられてのせられて、俺もその気になってしまって、気持ちよくなってきてしまっていることだよ。まだ理性が残っているからいいが、あまりハマりすぎると、この理性もどこかに吹っ飛んでしまうかもしれん。
「太郎、あリがとう。いつも我の我侭に付きあわせてしまっていルな」
「うん、要望としては今回の件は中々しんどい」
改まって礼を述べるゴージンに、思ったことをそのまま口にする俺。
「時々あリ得ぬ願望を抱く。いずレ家族もこちラに来て、我と出会い、あの時のあレは何かの間違いだったと、そう申してくレル事をな」
俺の言葉をスルーして語りだすゴージン。
「傷は消えぬ。然レど癒すことはできル。太郎やディーグルと共にいルと、癒さレルし、悪いことを思い出さずに済む。最初はネムレスと出会った時、そうであった。我は……皆にお返しがしたいな。太郎、特にお主には」
嬉しい言葉だが、それもかなわぬ願いだ。
「俺が望むのはただただ、性的なお返しだけだが、この体じゃそれもできないしな」
「そレ故に胸ばかリ望むわけか」
「胸だけってわけでもないし、太ももも好きだけど、それ以前に、一緒にいて楽しいからお返しとか、そんなのおかしくないか? 一緒にいて楽しいのは俺らも同じだしさ」
俺の言葉に、ゴージンははっとした顔になり、それから照れ笑いを浮かべた。
「確かにその通リ也」
「お返しするなら、俺を女装させたことへのお返しだろ」
「確かにその通リ也。責任はとロうゾ。何か一つ我に望むことを言うがよい」
おいおいおいおい、俺にそんなこと言っちゃっていいのか?
「俺が望むのはただただ、性的なお返しだけだと言ったのを聞いてなかったのか? いつでもおっぱい権とか、そんなもんしか思いつかねーぜ?」
「他には無きか?」
ひょっとしたら許可してくれるかと期待したら、ジト目で流された。ふぁっくーっ。
「いつも護衛してもらってるし、他には特に……」
「慎ましいものゾ。こちラの願いをかなえてくレた分、お主の願いもかなえたやリたいというのに」
溜息をつくゴージン。いや、願いは言ってるけど無視されてるじゃんよ。
「仕方無い。甘えさせてやルか」
堪忍したように、ゴージンが言った。おお、とうとう折れたかっ。
「その格好でいル時のみゾ。ただし、露骨に手で触ったリ揉んだリなどは、遠慮願いたし」
「だっこして胸に顔埋めるのは有り?」
「わざわざ口に出して言うなかレ。そレは有リとすル。ただしこちラも尻をいじルゾ」
ゴージンがニヤリと笑う。何か意味不明な交換条件だ。
***
賢者院のネムレスの私室に戻ると、流石にもうお偉いさんへの報告やらのこみいった話は終わったようで、ネムレスもディーグルも戻っていた。
「何の真似ですか……それは」
完全女装生命体へと変貌を遂げた俺の姿を目にし、ディーグルが啞然と憮然と呆然と慄然が激しく入り混じった顔と声で尋ねてくる。
「可愛いであロう。本日よリ太郎は、未来永劫女の子の格好で過ごす事と相成った」
得意げに断言するゴージン。この言い方は本っ当に有無を言わさぬものがある。
「ふむ。やるな、ゴージン。仕草も大分少女のそれに仕上げているようだが、表情も合わせた方がいいな」
顎に手を当てて感心しながら、ネムレスが余計なアドバイスをする。
「本気ですか……? それが太郎さんの望みですか?」
ディーグルの顔が啞然一色になった。
「い、いろいろあって……その……」
ディーグルにしては珍しく心配げに尋ねてきたので、気の利いた答えを返そうとしたが、口ごもってしまう。
ゴージンがあんなに喜んでいる所見せられたら、その期待裏切るのもなあと……
「ディーグルはお気に召さぬのかな? 見たままの美しさ――似合っているかどうか、そこが一番のポイントであろう。ここは我が弟子ゴージンのコーディネートを、褒め称えてやってくれたまえよ」
ネムレスが誇らしげに語る。コーディネートしたのは、八割がた店員の皆さんでしたがー。
「そ、そうですね……。ゴージンさん、素晴らしいです」
「無理して褒めなくてもよいゾ」
無理矢理笑顔を作って合わせるディーグルと、あっさりと見抜くゴージン。
「それで、偉い人とのお話はどうなったんだ?」
椅子に座りながら俺が尋ねる。
「ドロカカさんの解析結果待ちですが、解析結果次第でドロカカさんは一時的に身柄を拘束するかもしれないそうです。彼の動きは読めませんし、禁断の知識をおかしなことに使われたら困るので」
ディーグルが報告する。
「最初から拘束してしまえという話もあったようだが、これまでの功績や、今後賢者院でドロカカの力を利用することなどを考慮して、迷っているといった所だな」
続けてネムレスが報告。中途半端だな。偉い人達の中で相当意見が割れているのは仕方ないが。
「賢者院はモーコ・リゴリ遺跡第五次探索隊を考え出したようだ。その探索隊に、僕とディーグルも加わってくれないかという要望があった。僕の計算どおりにな」
ネムレスがニヤリと笑う。
「なるほどねえ。それでディーグルを連れて行ったわけか」
ネムレスとディーグルという強者が二人も揃って、賢者院に協力的な姿勢を示し、さらにはドロカカもいるとあれば、その流れに行くだろうと、ネムレスは踏んだのだろう。
「賢者院は第四次の失敗にやきもきしていたが、遺跡探索を諦めきれない者達が多くいた。ドロカカの生還と、彼が持参した禁断の知識というお土産によって、火がついたのだろう」
「その要望を二人して受けたのか?」
「もちろんだ。僕が受ければ、君も来ずにはいられない。それならディーグルもセットだ」
「ネムレスが遺跡探索に行く狙いは……やっぱりリザレのことか?」
「ああ」
俺の問いに、ネムレスは微苦笑を浮かべて頷いた。
古代の禁断の知識や遺物――さらには古代神達すらもが眠るモーコ・リゴリ遺跡。そこになら、リザレに対抗できる物もあるのではないかと、ネムレスは考えたに違いない。




