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決闘前日

始まりの町は第1層にあり、東、西、北、南の四区画に分かれている。いや、分けたと言った方が正しいだろうが。その中で【聖魔騎士団】のギルドは西区画に位置しているらしい。らしいというのはまだ俺がいったことがないからだ。というのも俺がいた頃の始まりの町はこんなに細かい区分けなどされていなかった。その前に俺はもう第2層あたりに向かって行ったからな。まあ懐かしい故郷が開発されて面影もないなんてのは最近じゃよくある話だ。そんな風に思いながら歩いていると、ユウに声をかけられた。どうやらついたらしい。顔をあげると目の前に城のような建物があった。来る場所を間違えたのか、俺は。それとも俺の目がおかしいのか。


「シオン。ここどこだ?」

「【聖魔騎士団】のギルドよ」

「ギルドっていうのは普通さ、ほら、こう、なんていうのかな…大きさ的にはいいよ。だけどもっと素朴なイメージがあったんだが」

「こんなもんでしょ」


レイがあっけらかんという。


「いやさ、だって城だぜ」

「でもあなた以外誰も不思議に思ってないわよ」


なるほど。つまり俺の感覚がおかしいのか。

変なのか。納得しきれないがどうこう言ったところで変わるもんじゃない。受け入れるしかないか。そして俺ははいった。ギルドという名の城に。






「さあ、さっそく決闘のルールを決めよう」

ギルドの会議室のようなところに通された俺はいきなりユウにそう言われた。

「別にいいけど。案内とかは何もなしなのか」

「案内する必要があるのか」


ユウのその言葉には、ここに長くいるつもりなのか?、という意味が察しられた。


「いや、ないな」

「そうか」

「じゃあさっさと決めて行こう。今日決めないと、決闘ができるのは翌日の昼から

と決まっているんだ。」

「そうなのか。なら急がなきゃな」

「まず、ルールは俺とアキサメの一対一。それでいいな」

「おいおい。それはないだろ」


人生で一番かと思ったくらい、いきおいよく止める。


「どうしてだ」

「それじゃ面白くない」

「何だと?」

「お前一人とやったところで結果は目に見えてる。俺の圧勝っていう結果がな。だから40層攻略の時にいた奴全員でかかって来い」


【聖魔騎士団】のギルド内が騒然とする。


「いくらなんでも俺たちを舐めすぎだぞ、アキサメ」

「そうですよ兄さん。あなたは私たちの強さを知らないからそんなことが言えるんです」


周りのギルドのものたちからも同じような声があがる。

俺はこいつらと俺の幼馴染に心底怒りを覚えた。なんでこいつらはそんなチョコレートのような甘くて簡単に溶けてしまうような自信を持っているのだろうかと。


「ふざけてんのはお前らだろ」


俺の怒りを押し込めた声で静寂が訪れる。


「お前らは本当にこの世界をわかってない。この世界はな、ただ強い奴が生き残れるんだ。生き残る価値があるんだ。生き残る権利をもてるんだ。お前らは俺と決闘して俺から攻略のために必要な情報をとって進むんだろ。それが目的のはずだ。それを弱いくせしてなんだ。自分達に有利な条件呑まずに却下して、それで挙句の果てには舐めるなだぁ。舐めてんのはそっちのほうだろ。いいか。俺はお前らが大人数で必死に攻略してきたところを、俺は一人でしかもお前たちより早くクリアしてきてるんだ。そんな奴から攻略情報を取ろうとしてんだからよ、もっと危機感をもてよ。お前らが負けたらこの先死人が出る確率が高くなんだろ。それを防ぎたいんならもっと必死になれよ。どんあな手段でも俺に勝とうとしろよ。それが覚悟するってことなんだよ」


俺の怒りの声に全員が沈黙する。

俺を知っているシオン達でも絶句していた。


「悪かったよ、アキサメ」

「謝って欲しいわけじゃない。ユウ、お前に決めて欲しいだけさ」

「そうだな。なら俺は、俺たちは40層にいた攻略組全員でお前を倒させてもらうことにするよ」


ユウは覚悟を決めた顔をしていた。他の奴らも。ただ一人、シオンを除いては。俺はそのことに気づいていたが、なんいわなかった。いうべきはいった。覚悟ができなかったら、厳しいようだがあいつに戦う資格はないってことだ。


「それじゃアキサメ。もちろん〝ベクトルスキル〟もありだな?」


そうユウが聞いてきた。


「〝ベクトルスキル〟ってなんだ?」


俺がそう答えると全員の目が見開かれた。


「アキサメ、お前……〝ベクトルスキル〟を知らないのか?」

「そんなもの聞いたこともないな」

「最初に神からもらった力のことだよ。それを俺たちは自らの性質も示すものとして“ディレクション”と名ずけ、それにより使えるようになるオリジナルスキルを〝ディレクトスキル〟と名ずけたんだ」

「ああ、あの力のことか。それならありでいいだろ」

「お前。俺たちの“ディレクション”を覚えているか?」

「いいや、覚えてないな」

「そうか。だが教えるつもりはないぞ。俺たちの勝率をあげるためにな」


そのユウの言葉をきいて俺は笑みを浮かべた。


「それでいい。それじゃ明日はいつどこに行けばいいんだ?」

「東区画にでかい闘技場がある。そこに14時でどうだ?」

「OKだ。楽しみにしてるぜ。お前らがどんな策でくるのかをよ」

「ああ、必ずお前を倒してやるさ」


そういって俺たちは笑いあった。







俺が【聖魔騎士団】のギルドを出る時後ろからシオンに呼び止められた。

「兄さん。私は……私はどうすれば」

「それはお前が決めることだ。俺が決めることじゃない。だけどもし明日の決闘開始前までに覚悟が決まらなかったらお前は来るな」

「えっ?」

「覚悟が決まらない奴はそれだけで邪魔なんだ」

「兄さん……」



強くなれ、シオン、絶対に届くはずがないと思う気持ちを小さく呟きながら、俺はギルドをでた。




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