再会
シオン達と別れた日から、俺はずっと戦い続けてきた。モンスターの大群に一人で突っ込んで死にかけたり、ボスとの戦いでしにそうになったりもした。なぜそんな無茶のことをしているんだろうと、この世界で生きているやつはいうだろう。死にたいのか、と。
当たり前だが、別に死にたい訳ではない。むしろ死ぬのは怖いくらいだ。では、なぜか。単純だ。楽しいからだ、戦うことが。いわゆる戦闘狂ってやつだ。この世界にきて初めて気づいたことなんだが、そりゃもちろん、前の世界は平和で争いなんてなかった。ましてや、自分の命をかけて戦うことなんてこと、一般人にとっては一生に一度あっても珍しいくらいだった。俺は非現実を求めていたのかもしれないな。
そしてもう一つ気づいたこと、いや確信できたことというべきかもしれないが、それは俺が人よりも傲慢だということだ。俺は戦いたいが死にたくもない。そう思った俺はレベルをあげることにした。このGPOはほかのゲームとはちがって何度でもボスと戦える設定になっていた。まあこんな世界で死ぬ危険性のあるボスと二度も三度も戦うバカはいないが、レベルをあげるのには効率がいい。そして俺は何度も同じ層のボスを倒しては次の層に進んだ。
またGPOではオリジナルスキルというものを作ることができる。自分だけの新たなスキルを生み出すことができる。もし作ることができれば、自分の強みにもなり他のプレイヤーに情報としてアイテムを代価に情報を教えられたり、NPCに売ることもできる。だがしかし、どんな武器のオリジナルスキルを作ろうとしても、一つでもつくることがなかなかに難しい。俺の場合は戦闘スタイルがオリジナルのため一からスキルを作っていたのですぐ数ができたが、本来オリジナルスキルとしてGPOのシステムに認められるためには、そのスキルの内容が一連の完成した流れでできていないといけない。そして既存に無いスキルとなるとかなり難易度が高いのも当然だろう。もしそれがオリジナルスキルと認められたらそのスキル発動時に『エフェクトリアクション』という名の光が発生し、既存のスキルは黄色で、オリジナルスキルは青色の光が発生する。俺のオリジナルスキルは今のところ10数個程あるが、これはかなり多い方ということだ。【聖魔騎士団】をつくったトッププレイヤーたちも持っていて3個程度。持っている人の方が格段に少ないということだ。
そのかいあってだろうか。攻略組と呼ばれるトッププレイヤー達が40層までたどり着いた時おれはすで45層にいた。もちろんいきなり45層のボスと戦うなんてバカなことをしようとはいくら俺でも思わない。GPOのボスは5層ごとに段違いの強さのボスがでるからだ。そこでおれは40層のボスと戦ってレベルをあげていた。攻略組が40層にいるという情報をさっき得たばかりなのに。
40層のボスである《コロセウムナイト》は全長3メートル程の大きな騎士だ。片手剣が武器なので、動きは限られてくるがとにかく威力が高いのが特徴の化け物だ。対して今の俺の戦闘スタイルは素早さと手数の多さで戦う二刀流だ。といっても俺が使っているのは刀だから威力が高い代わりに、片方にしか刃がないので扱いが難しい。ま、それでも俺はこのスタイルでいくんだがな。
40層のボス部屋の扉を開ける。
「久しぶりだな、騎士さんよ」
モンスター相手に話しかけたら何かしらの返答がかえってくるわけではないのだが、言わずには、しゃべらずにはいられないのが人間というものだ。
ぶおおおおお、と雄叫びをあげたコロセウムナイト》の大きな縦ぶりを軽々とよける。
「そんな大振りであたるとでも思ってんのかよ!」
一瞬のうちに剣を三度振るう。言葉が通じたのか、はたまた学習したのか。《コロセウムナイト》は小振りで上からと、右からと、左からの素早い3連撃をはなってきた。俺はそれを苦もなくさばく。
「少しはましになってきたな、おい。楽しんで行こうぜ」
ガキン、ガキィ、ガキィ
「ははははははっ!」
俺は笑いながら《コロセウムナイト》の横ぶりをかわし、斬りつけてる。
「そろそろだな」
俺は《コロセウムナイト》の体力を横目に見てそろそろ三分の一を切りそうなころをめやすに懐を離れた。《コロセウムナイト》は体力が三分の一を切ると途端に攻撃の早さが早くなる。最初に戦ったときは危うく一撃もらいそうになるところだった。まともにくらったら半分くらいの体力は持っていかれてしまう。だからいったん距離をとって対応するのだ。ここで役に立つのが遠距離攻撃スキルだ。
「クロスウェーブ」
このスキルは俺のオリジナルスキルで斬撃を飛ばす片手剣下級スキルのスラッシュウェーブを二刀流ではなつものだ。これにより《コロセウムナイト》の動きが変わるところまでダメージを遠距離から与えることができる。
怒り狂った《コロセウムナイト》の突きからの、袈裟斬りをかがんでよけると同時に踏み込んで飛び出す。
「はあああああ、イリーガルインパクト!」
そして懐に入り、5連撃の二刀流中級スキルを使い、止めを刺したその瞬間だった。
突然ボス部屋の扉が開いた。
「兄さん?」
ボスが、消える時に放つ淡い緑色の光を伴って小さなポリゴンの欠片と散っていく中、後ろから聞こえた、聞き取れたのが不思議なほど小さく震えた声は、確かに3年前のあの日別れたはずの俺の妹の声だった。
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