助平男と彼女
「信じられない...!」
雛子が怒りの形相で、進助に詰め寄っている。
「あ、いや、これはつい出来心で...」
進助が咄嗟に弁明をしようと思ったが、言い訳が思いつかなかった。
雛子の怒りは収まりそうもない。
見つかったのは、進助が出会い系サイトで会った女性たちを評価して、ランク付けしたリストだった。たしか最低男である。
「このぉ......」
雛子は、怒りの表情のまま部屋から出ていった。派遣の仕事の時間になったのだろう。こういう所はしっかりした女性だった。
□
進助と雛子が出会ったのは、派遣先で一緒の職場になった時だった。雛子は、前の彼氏に振られたばかりで、ずいぶん憔悴していた。
その時に出会った男が稀代の助平男、進助だった。雛子は、運が悪かった。
女と出会ったら、その日に即座にホテルへ行くような、とんでもない貞操観の男である。おまけに顔だけは良いものだから、女たちが放っておかない。
彼女である雛子にとっては、たまったものじゃない。
(うーん、流石にこれはやり過ぎだったか)
進助も、少し反省した。リストを見ながら。
雛子が怒ったのは、リストじゃなくて女遊びの方だと思うのだが。
まあ、やってしまったものは仕方ない、と進助は勝手に自分の中で片付けてしまった。
そしてぼんやりテレビを見つめた。
□
一方、雛子はというと。
進助に軽く扱われた事に腹が経って仕方がなかった。
元彼にメールしたり、職場の男たちと一緒に食事に行ったり、次の男を見つける勢いだ。
(なんだ、私ってモテるじゃない...!)
雛子も、まんざらではない気分だった。実際に、雛子はモテる女性の方だ。
しかし、しばらく色んな男たちと過ごして、雛子は気がついた。
(あれ、みんなブサイク男に見える...)
そう。進助は、顔だけはいい。
雛子は、いつの間にか、顔がいい男と付き合うことに慣れてしまっていたのだ。
□
「ただいま...」
すっかり元気をなくした様子で、渋々、雛子は進助の家に帰ってきた。
進助は、それを少し見ただけで、黙って何も言わなかった。
そしていつものように、テレビを見始めた。
end




