第7話 首輪(カラー)
「待ってください」
いかにも強そうな金色の首輪をつけた騎士みたいな見た目だがこれも《まほうしょうじょ》なのだろうか?
すげぇ高圧的だし、めちゃくちゃ睨んでくる赤髪の女性を前に臆すことなくソアレはおれを庇うように両腕を広げて立っていた。
「お話を聞いてください……フルカノン様」
どうやら目の前のクソ強そうな女性はフルカノンという名前だが、他にもおれを取り囲むように《まほうしょうじょ》っぽい姿をした女の子たちが訝しげに見ている。
「貴様……どうして《荒使》を庇っている」
はい? おれもあのさっきのバケモノと同じ扱いなの?
「この子は違います」
「それを決めるのはお前ではないな」
そして少しずつソアレの前に歩いてくるフルカノン。
「いたっ…………ッ!?」
そしてソアレのあごを片手に掴んで、フルカノンは怒りの形相でソアレを見つめる。
「この森は《荒使》の巣のようなものだ、そんなところを一人で出歩く時点で何かしら理由があるのだろうな?」
どうやらこの森はさっきの《荒使》とかいうバケモノがウヨウヨしている危険な場所だったらしく、そんなところにおれは転生した挙句に繭に閉じ込められて、溺れて死にかけたわけで。
だがそんな危ないところにソアレは一人でいた。理由もなくこんなところにいるのはおかしいと。
「知って……いますよね、フルカノン様は――」
そしてソアレは悲しそうな顔をしたままソッと自分の首に巻かれている首輪に触れていた。
「ああ、首輪には色がある……そして、その色によって強さが分別されている」
フルカノンの金色の首輪とは違い、ソアレの首輪は真っ黒に染まっている。最初おれと出会ったときは灰色だったのに《荒使》に負けた瞬間に色が黒くなっていた。
(色で強さを分けてるって……まぁ、アレやなぁ)
個人の強さを階級で分ける指標――色が派手なほどに強者で、地味な色ほど弱者の扱いを受ける。ソアレの戦い方を見ていたが本当に何も知らない初心者のような立ち回りだった。
おもっきり格闘ゲームでよくあるランク制度である。
弱いランク帯のカラーは地味で、強いランク帯になれば派手なカラーになってて、最高クラスとかになると専用の装飾された文字とかとにかくゴチャゴチャしてて目立って見える。
「そしていまのお前は黒色とはな……引退も視野に入れるべきだろう。お前に《まほうしょうじょ》の資格はない」
それにしても酷い言いようである。
だが、灰色の下が最低ランクである黒色でそのまま負けを続けると、良くないことが起こるのはおれでも理解できた。
しかし、
(おれ……その首輪っての付けてないんだよな……)
おれは自分の首元を見るが、そんなチョーカーみたいな首輪はついていない。
「わたしは、まだ……やれます」
だがフルカノンに非難されてもソアレは折れずに立ち向かうように意志を伝えるが、それでもフルカノンはそんなソアレを前に鼻で笑った。
「同じランクの首輪と戦っても、ほぼ勝ったことのないお前に評価を覆すことはできない」
その会話を聞いておれはピクリと反応していた。
「他の《まほうしょうじょ》と戦えるのか?」
おれは横から割って入るように、声を上げていた。さっきのバケモノだけじゃなくて《まほうしょうじょ》同士の対戦も可能なら、今すぐにでも対戦した。
ましてやまだおれは自分自身の性能をわかっていない。もっと知りたい。戦って知りたい。
「黙れ――私はその落ちこぼれと話している」
「……気にいらねぇな」
だがおれもフルカノンに対して下がるつもりはない。
ってか外見は幼女だが、中身は四十手前のおっさんだ。こんな若い女の子に睨まれたところでちっともこわくない。
(このフルカノンってのも《まほうしょうじょ》ってやつでワンチャン対戦もできそうなら……おれがボコって……)
と、ふとそんな思考がよぎるのだが、
「なんだその眼は? ここで抵抗するなら、そこの落ちこぼれは《まほうしょうじょ》を引退てもらう――お前を見つけたのがソアレなら責任を取らせる形でな」
それはさすがに反則だろう。おれはそのまま両手を上に向けた。おれの命の恩人に対してそんな容赦のない言葉を突き付けられては動けない。
「大人しくついて来るか?」
「痛いのは勘弁してくれよ」
おれはそのまま複数の《まほうしょうじょ》に囲まれてなんか手枷のようなものを装着される。
チラリと、ソアレを横目で見る。
「と……トリノちゃん……」
「ありがとう、ソアレ」
だが、おれはそこでソアレに感謝した。
何度もおれを助けてくれた――命の恩人だ。
命の恩人にまだ、おれは何も返せていない。
この子が初心者だとしても、もっとも大事なことはどれだけ強い相手を前にしても折れないメンタル――おれが戦っていた異世界では最も大事なものだった。
戦う前から負けることを考えるやつは戦えない。いまいる世界の仕様が格闘ゲームっぽいのはおれが認知しているだけかもしれない。
それでも、おれはこの子に何かしらの真価を感じ取っていた。
自分より格上相手に決して億すことなく立ち向かう。十分すぎるじゃないか。
この子は絶対に伸びる。
おれはそのまま《まほうしょうじょ》に連行されるように森を後にした。
続きは本日21時頃に投稿します。
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