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《まほうじょうじょ》は『魔法使い』~TS転生した格ゲーおじ、この異世界が『格闘ゲーム』すぎるので荒らしをガン処理する~  作者: 待雪 妥当
第1章 望まぬ転生

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 第2話 転生とレバーレス

 ――解析中。


 ――戦……適正……高。


 ――……適正、低。????

 

 ――不明、不明、不明。


 ――ま…………う………じょ、じょ、じょ……。


 ――エラー、調整、失敗、失敗、再調整、継続――


 声がする――


 声が目覚ましの代わりのように響いている。俺の頭の中で警告音と共に鳴り続けるせいでうるさくて今にもキレそう。


 せっかく気持ちよく寝てたのに――うるさいなぁ。今日は休みちゃうんか?


 頼むから休みぐらいゆっくりさせてくれ……。


 いや、それより、何かおかしい。なんだ?


(あ、え……なんやろ……)


 微睡み(まどろ)みの中で、ふわりと全身が浮いているような感覚。


 意識が少しずつはっきりとしていくと同時に最初に感じたのは息が苦しい。


 誰かが俺の口のなかに水を流し込んでいるような――そしてぬるり、と何かが肌を撫でた気がして、ぞっとする。


 なんか息ができない。


 まだ視界がぼやけて状況が理解できない。それに肺が焼けるように痛かった。


 無理やり流し込まれている液体が喉に流れる度に痛みは増していく。挙句には身体が思うように動かない。


 生命の危機を感じたと同時にぞくりと震えては恐怖で必死に腕を動かした。しかし水を掻いているような感触しかない。なんだこれは。水の中にいる?


(……水? なんで?? ってかどこだここ!?)


 いや、水にしては違う気がした。


 水よりもやけに粘度が高い。だから腕どころか足も何もかも重くて上手く動かせない。粘り気のある液体はぬるりと全身にまとわりついて気持ちが悪い。


 このまま目を開けるのが怖かった。しかし勇気を振り絞り両目を開けば、広がる視界はどこまでも白かった。


 液体が白いのではない。ぼんやりと光る半透明の壁が白かったせいだ。それはまるで巨大な繭の中にいるような――


(………………は?)


 理解できないこの状況。今はただ混乱する。


 どうしてこんなところに閉じ込められているのだと。


 繭のようなものに触れても弾かれてびくともしない。そもそも水の中にいるせいで勢いよく蹴り抜くこともできなくてどうしようもない。


 自力ではどうすることもできないと理解したその瞬間、ゴポッと、急速に体内の酸素が失われていくのを感じる。なんで目を醒ましたと同時にこんなことに。


「――――ぁあ……」


 これは、やばい。


 繭の中は満タンにひたひたに液体が注がれどこにも逃げ場などない。このまま何も出来ずに溺れて死ぬ。


 いやまて……まってくれ!


 おれは必死に壁を叩いた。


 だが繭の中でどれだけ暴れてもただ左右に揺れるだけだった。


 内心、自力で脱出できないことは解っているだけにこの行動に何の意味も無いというのはわかっている。


(だれか――――)


 助けて――と、声にならない声で求めた。


 水の中では声すら出ない。もう、ダメだ……。


 目を醒まして数分で溺死とか酷い話だ。

 

 そして意識を失いそうになったその時だった。


 ――ピキリ、とひび割れる音がした。その音と同時に、白い繭の外側から影が見えた。それは人の影が見える。そして次の瞬間――


「だいじょうぶっ!? いま、たすけるから……」


 声が聞こえる。そしてその声と共に白い膜が何かで切り裂いた音がする。隙間から光が射し込み、重力に逆らうことなく漏れ出る液体と共に落下していく。


 そしてぺたりと地に落ちて、解放されたおかげでやっと空気を吸える。しかし繭の中で吞んでいた液体を吐き出そうと無意識にせき込んでしまう。


「げほっ! ごほっ!!」


 意識が朦朧(もうろう)としていた。


 パクパクと口を開けたまま、焦点の合わない瞳で空を見上げた。まだ生きてる。おれは運よく助かったようだ。


「だいじょうぶ!?」


 そして視界が急に暗くなった。声が聞こえる。影の正体は心配そうに俺を見つめている女の子だった。


 それにしても……、


(えらい格好やな……コスプレ……かな?)


 少女の着ているそれははふわりと空気を含んだように広がるえんじ色のドレスだった。


 フリルが幾重にも重なり動くたびに柔らかく揺れていた。可愛らしい衣装だが色味でどこか落ち着いていて派手すぎない不思議な雰囲気を纏っている。


 そのドレスの上から、黒いマントを羽織っていた。


 しかもマントのすみっこはボロボロでせっかくのドレスの上にそんなマントを羽織ってしまえば魅力は半減するだろう。もったいない。


 しかしそれよりも目を引いたのは――髪だった。


 陽の光を受けてきらきらと輝く金色の髪。それを後ろで二つに分けて低めの位置で結んでいる。


 いわゆるツインテールではあるが、ぴょんと跳ねるようなものではなく、肩のあたりで静かに揺れるおさげに近い落ち着いた結い方をしている。


 そしてシンプルな何のデザインも施されていない紐のような灰色のチョーカーを首を沿うように巻かれている。


 見た目は十代前半で、そして青く澄んだ瞳は雲一つない青空をそのまま切り取ったように綺麗で吸い込まれそうにおれはつい見惚れていた。


「ケガはない? 立てるかな??」


 少女はそう言って、呆然と見上げたまま動かないおれを前にわざわざ両膝を折って目線を合わせてくれる。


 こんな近くで女の子と接することなどおれの人生では一度としてなかったので石のように固まってしまった。


「わたしの名前はソアレ。きみ……だいじょうぶ? どうしてこんなところに――」


 そんなソアレと名乗る少女が、そう言ってスっとおれに向かって手を伸ばす。


 もう片方の手には杖……いや、剣が握られている。


 片手で持てるサイズの剣だが、剣にしては板のような鉄塊と呼んでも間違いではなさそうな無骨な見た目をしている。


 そんな不思議な衣装に、金色の髪に、青い瞳、そして見た目に不釣り合いな武器まで持っている女の子の姿はまるで漫画やアニメに出てくるような魔法少女だった。


 杖ではなく剣を持っているのは気になったけど、おれは恐る恐る手を伸ばして――


 んん???


 いや、おかしい――


(なに、これ?)


 少女の差し出された手を掴もうと、おれは自分の手を伸ばしたそのときついに無視していた違和感の正体に気がついてしまった。


 おれは元々デブでチビのおっさんだった。なのにどうして手がこんなにも小さい? 足も、そもそも身体も。何もかもが小さい。繭の外に出るまで死にたくないという一心でもがいていた。だから気がつかなかった。


 自分の身体に異常を来していることを知るのに相当遅れてしまった。


 だってこれは()()()()()()()()()()


 そして外に吐き出された液体が水たまりになってそれが鏡のように反射しておれの姿を映し出しているわけだが、


(いや、なんなんこれ……?)


 黒い髪が腰元まで伸びているし、前髪の一部だけは白く染まってるし、両目は燦爛(さんらん)と真っ赤な宝石みたいになっている。


 そしてぺたりと座り込んだまま、小さくなってしまった自分自身のからだを見てわなわなと震えが止まらない。


 おれのからだが……両手も、両脚も、全身が幼く小さくて、転べば簡単にへし折れてしまいそうなほどに華奢(きゃしゃ)なものへと変わってしまった。


 胸元に目を移す。


 目を疑う。


 新雪の如く明るくきめ細かな白肌に、ほんの少しの胸の膨らみ。


 更に目元を下へ――おれの()()()()()の消失を確認。


 古の格ゲーおじのレバーがレバーレス。


(やかましいわ)


 おれはそんな一糸纏(いっしまと)わぬ生まれたままの姿をただ呆然と見つめている。


(…………)


 おれは未だこの理不尽を受け入れられずにいる。


(……おれの――)


 ここがどこかも、どうしてこんなところにいるのかもわからない。


(……おれのからだ)


 しかし、ただひとつはっきりとわかってしまったことがある。


(……おんなのこになっとるやん)


 そのまま視界の端には親の顔より見たであろうUI(ゲージ)が表示されていた。


 いやいや……おかしいだろ。


 インストカード(せつめいしょ)はどこだよ?

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