第12話 おれが勝たせます<1>
「ってか、見た感じ学校っぽいのになんで先生みたいなキャラがおらんねん」
独り言だが、ついおれはデカい声でそう言った。
とりあえず修練場のいちばん端でソアレの動きを見ていたが、本当に何もわからぬまま動いている。
《荒使》と戦う組織的なところなら、ちゃんとレクチャーする講師っぽいキャラとかおるのかと聞けば、全部自分で調べて、自分で考えろって――スパルタすぎるというか、もはや無責任すぎる。
そら知識共有したり、情報交換できてるやつのほうが強いわけだが、
(まぁ、ゲーセンでおったときもそうだったな……知らんやつはなんもわからんまま成長もできへんわけやし)
攻略本のようなものも存在しないし、あってもそれが本当の情報かも怪しい。正しい知識を手に入れるには、やはり他のプレイヤーとの交流がいちばん最適解だった。
そしてソアレはまさにそういったコミュニティに属していないまま独りで戦い続けていたから、がけっぷちまで追い込まれているわけで。おれが本当に運よくたまたまソアレと出会えたからこそ首の皮が繋がったまである。
まぁ……おれがソアレに助けてもらわなかったら、あのまま繭の中で溺れて死んでいたか――
(溺れ死ぬならまだしも……あんな顔が蟻の真っ黒のバケモンになってたら……ゾっとするわ)
「あの……トリノちゃん……」
ソアレは何をしていいのかわからず、おずおずとおれの横でじっとしている。子猫みたいでかわいかった。
「ああ、そうだな――」
まずやるべきことがある。
「一通りソアレのモーションを把握したい」
「もーしょん?」
きょとんとした顔で、は頭の上にきっとクエスチョンマークが二つほど並んでいるように見えた。
「あー、えーっとだな……どんな風に武器を振ってるのかみたいんだ」
「でも……わたしなんかじゃ……」
「どんなに弱くても、必ず光るものがあるはずだ。おれは今までも何度もそれを見てきた」
弱キャラであろうとも優秀な部分はある。
しかし、
「他人に手の内を明かすというのは正直言うと自殺行為だ。この世界は情報……知識ゲーだ。モーション一つで対策が取れてしまう。それでもいいなら――」
だがフレームとか判定とかそういうのは無しだ。
初心者には不要の産物である。いま大切なことはソアレが戦える武器を見つけること。
「わたし、つよくなりたい……だから、トリノちゃんになら……その、いいよ?」
とギュっと手に持つ片手剣を構えている。
「愚問だったな。じゃあそこの人形……あれに攻撃してみせてくれ」
修練場に設置された訓練用の人形に向かってソアレは片手剣を振る。
剣よりも短い片手用の剣なのだから振りが早いのは解るが、突然ソアレは空いている素手でボディーブロウを繰り出している。
「おまえ……なんで武器持ったまま殴ってんだ?」
「え? あ、あれ?? なんか、そっちの方が楽だから???」
「いや、武器で斬った方がいいだろ……」
しかしおれは内心では納得している。
(格ゲーにいるんだよな……武器持ってんのに素手で殴ってくるやつ)
しかも案外そっちのほうがフレームも判定も優秀だったりする。
ガードさせて有利取れるとか、隙が無いとかでブンブンするだけで対策するの面倒なやつ。
微妙に前進するからガードさせても距離が離れなくて延々と殴ってこられるだけで鬱陶しかったりする。
「ソアレ、もし相手が身を固めたら剣で斬るんじゃなくて拳で殴れ」
「いいの?」
「ああ、ってか多分ソアレは剣振るより拳で殴る方が強いぞ」
理由はちゃんとあるし、それはフレームとか判定とかその他もろもろだが説明しても混乱させるだけだろうし、とにかくいまはソアレが少しでも自信を持って対戦に望めるように背中を押してやればいい。
「わたし、へんじゃないの?」
ソアレはなにか言いにくそうにモジモジと身体をくねらせている。
「なにが? おれの世界では普通だったぞ」
おれが見て来た格闘ゲームのキャラは武器を持ってても殴ったり蹴ったりする方が強い技を持ってるやつもいたりするので気にならない。
「……そ、そうなんだ」
「なぁ、ソアレは必殺技……じゃないな、《魔導技》はどんなものなんだ?」
しかしそれを聞いた瞬間、ソアレはビクリと震えて――
「わたし……使えないの……」
「ん?」
「使い方が、わからないの――」




