第7話 繰り返される未確認ゴミ
同じ場所だった。
前回とほとんど変わらない路地、同じ時間帯、同じ重さ。
それが偶然でないことは、ハルにもすぐ分かった。
「……まただ」
計測端末が、見慣れない表示を返している。
正式な競技ゴミとして登録されていない素材。
しかし明らかに、意図的にまとめられ、置かれていた。
黒いシートに包まれた箱。
開ければ、産業用の廃材。分解途中の電子基板、薬品の空容器、焼け焦げた金属片。
「これ、一般家庭のゴミじゃないよね」 ミナが声を落とす。
「前に拾ったのと、種類が似てる」 ゴウがしゃがみ込み、箱の縁を指でなぞった。 「同じ業者か、少なくとも同じルートだ」
クリーンランは街を走り、ゴミを拾い、ポイントを競う競技だ。
だがこれは違う。
誰かが、“拾わせる前提”で捨てている。
「一度なら、たまたまかもしれない」 ハルは言った。 「でも、二度目だ。三度目もあったら……」
言葉の先は、誰もが理解していた。
違法投棄。
しかも、クリーンラン開催中を狙った、計画的なもの。
午後。
別エリアで走っていた他チームからも、同様の報告が入った。
「未確認ゴミ、また見つかったらしい」 「場所は違うけど、内容がほぼ同じだって」
運営の共有チャンネルがざわつく。
公式アナウンスはまだ出ない。
だが、点と点が、静かにつながり始めていた。
「競技が、隠れ蓑にされてる」 ミナが呟く。
クリーンランは、街をきれいにする。
注目も集まる。
回収ルートも確保されている。
――捨てる側から見れば、都合が良すぎた。
「普通なら処理に金がかかる廃棄物を」 ゴウが低く言う。 「“善意のイベント”に押し付けてる」
ハルは歯を食いしばった。
走ることが好きだった。
拾うことが、誰かの役に立つと思えた。
だから、この競技を選んだ。
なのに。
「……利用されてる気がする」
夕方。
再び現れた未確認ゴミを前に、チームは立ち止まった。
拾えば、街はきれいになる。
放置すれば、危険は残る。
だが、拾い続ければ――
それが“正解”として固定されてしまう。
「これ、連鎖してる」 ミナが言った。 「一箇所で成功したから、また捨ててるんだよ」
「場所を変えて、時間をずらして」 ゴウが続ける。 「特定されないように」
ハルは、運営端末を見た。
ポイント表示は、他チームに大きく水をあけられている。
走れば追いつける。
拾えば点になる。
でも、それだけでいいのか。
「……これ、誰が得してるんだろう」
答えは、すぐには出なかった。
ただひとつ確かなのは、
この未確認ゴミは、もう偶然ではないということだ。
街のどこかで、
クリーンランを“使う側”が、動いている。
ハルは深く息を吸った。
「次、来たら」 彼は言った。 「もう一回、ちゃんと考えよう。
拾うか、拾わないかじゃない。
どう向き合うかを」
夕暮れの路地に、風が抜ける。
黒いシートが、かすかに揺れた。
それは、街の影が、確実に濃くなっている合図だった。




