第4話 役割があるから、速くなれる
「……CLEAN RUNNERSってさ」
ユウタが言った。
「即席チームだけど、続ける?」
ゴウは、即答した。
「解散する理由がない」
カナエも頷く。
「むしろ、ここから」
ユウタは、少しだけ笑った。
「じゃあ――」
立ち上がる。
「次は、ちゃんと速くなろう」
そのときだった。
――カァン、と乾いた音が響いた。
金属が何かを打つような、不自然に澄んだ音。
三人は、同時に顔を上げた。
商店街の反対側。
人だかりの中心で、ひときわ目立つ影がある。
黒と紺を基調にした、どこか時代がかった装束。
腰には、刀――いや、トング。
抜刀の構え。
一拍。
次の瞬間、
流れるような所作でトングが走り、
空き缶を“斬る”ように掴み上げた。
「……侍?」
ユウタが、思わず呟く。
男は、掴んだゴミを背中の竹編みに放り込み、
何事もなかったかのように歩き出す。
その動き一つ一つが、
明らかに“見せる”ことを意識していた。
「《スリー・ノイズ》だ」
カナエが、小さく言う。
「今大会、話題のチーム」
「パフォーマンス系か」
ゴウは、腕を組んだ。
「……でも、無駄がない」
ユウタは、目を離せずにいた。
派手だ。
目立つ。
なのに、拾い方は正確で、早い。
侍姿の男が、ふとこちらを見る。
視線が、一瞬だけ交差した。
笑っているようにも、挑発しているようにも見えた。
「……すごいな」
ユウタが、素直に言った。
「目立つことも、戦略」
カナエは答える。
「観客も、スポンサーも、全部“点”になる」
「俺たちは?」
ゴウが問う。
カナエは、少し考えてから言った。
「……別の走り方をする」
ユウタは、ゆっくりと拳を握った。
派手な侍。
歓声に包まれるライバル。
だが――
「負ける気は、しない」
ゴウが、静かに言った。
ユウタは、頷く。
「俺たちは、俺たちの速さで行こう」
三人は、視線を合わせる。
その背後で、
再び歓声が上がった。
ライバルは、確かに強い。
だがこのとき、CLEAN RUNNERSはまだ知らなかった。
――本当の勝負は、
点数や演出の先にあることを。
そして、
あの侍が象徴する“ノイズ”が、
やがて街全体を揺らす存在になることを。




