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『CLEAN RUNNERS(クリーン・ランナーズ) ――走って拾って、街を守れ』  作者: 幻灯(gento-aria)
【第4章:フィニッシュライン】(10〜12話)
11/13

第11話 街がきれいになる瞬間

再開された競技は、明らかに空気が違っていた。

走る選手だけでなく、

見る側――街の人々の視線が、変わっている。

「未確認ゴミ、発見!」

ミナの声が、イヤーピース越しに響く。

「位置共有する」 「ゴウ、重いやつ頼める?」

「任せろ」

ゴウは迷わない。

以前なら“効率”を優先していた場面だ。

だが今は、役割がはっきりしている。

ハルは、周囲を見る。

拾う。

走る。

次を探す。

だがそれだけじゃない。

「……おじさん、それ危ないですよ」

道端で、見よう見まねでゴミを拾おうとしていた年配の男性に、声をかける。

「袋、これ使ってください」 「分別、こっちです」

男性は、少し照れたように笑った。 「競技じゃないのに、いいのかい?」

「競技です」 ハルは答えた。 「今は」

街のあちこちで、同じ光景が起きていた。

観客が、手を伸ばす。

店員が、店先のゴミをまとめる。

子どもが、選手の真似をして走る。

ポイントにはならない。

だが、確実に――街が変わっていく。

「これ……」 ミナが、モニターを見て息をのむ。 「回収量、想定超えてる」

「選手だけじゃないからな」 ゴウが言う。 「街全体だ」

ハルは、汗を拭いながら笑った。 「……すごいな」

終盤。

ライバルチーム《スリー・ノイズ》が、横を抜いていく。

あの“ゴミ拾い侍”もいた。

トングを刀のように抜き、派手な動きでゴミを回収する。

一瞬、視線が合う。

侍は、親指を立てた。

「……負けてられないな」 ハルが言う。

「勝ち負けの意味、変わってきてるけどね」 ミナが笑う。

「それでも、全力だ」 ゴウは前を見る。

三人の動きは、噛み合っていた。

無駄がない。

迷いがない。

誰かが拾えば、誰かが運び、

誰かが次を見つけている。

チームだった。

フィニッシュブザー。

音が鳴った瞬間、

街のあちこちから、拍手が起きた。

順位発表。

CLEAN RUNNERSは――

優勝ではなかった。

だが、歓声は大きかった。

「結果以上だな」 ゴウが、珍しく笑う。

ミナは、タブレットを閉じる。 「数値じゃ測れない成果、ってやつ」

ハルは、街を見渡した。

朝とは違う景色。

道が、少し明るく見える。

「……きれいになったな」

それは、完璧じゃない。

ゴミがゼロになったわけでもない。

でも確かに、

“変わった瞬間”だった。

観客の一人が、言った。

「次も、やろう」

その言葉が、連鎖する。

ハルは、胸の奥が熱くなるのを感じた。

――これが、クリーンラン。

走るだけじゃない。

拾うだけでもない。

街と一緒に、前へ進む。

そして、最後のスタートラインは、

もうすぐそこにあった。

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