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あしたもあそぼうね ―やさしくて、ふしぎな、ほいくえんのお話―

作者:とろ
かつて世界には、《光の系譜》と呼ばれるヒーローたちがいた。
彼らは“祈り”と“断罪”の二つの光を継ぎ、闇と戦い続けてきた――。

少女ミラは、その最後の家系に生まれた。
母リセは闇を癒す浄化光杖《セレスティアロッド》の継承者。
父コウイチは罪を断つ断罪光銃《アークマグナム》の使い手。
平穏な夜を襲ったのは〈闇律の三幹部〉――ノクス、モルタ、ヴァルナ。
家を包む光と炎の中で、両親は最後の共鳴技《ヒュージョンショット》を放つが、
闇を払いきることはできなかった。

焼け落ちた瓦礫の中で、ミラはひとり生き残る。
泣くことも、叫ぶこともできずに。
その心の奥に、もうひとりの“自分”が生まれた。
――泣くための少女、ミレイ。
感情を分け合うことで、ミラはかろうじて生き延びた。

十五歳になったミラは、
父と母の光を継ぐ双極光銃《ツインレイ・アーク》を覚醒させる。
“奇跡の再現者”と呼ばれた彼女は、やがてヒーローとして初陣を迎えた。
だが、右の光――ミレイの感情を宿した《ライトアーク》は不安定に揺れ、
ミラが泣かぬほどに、その輝きは冷たく沈んでいった。

廃都の夜。
かつて両親を殺した闇――ノクス・ヘルザードが現れる。
「お前の母は最後まで祈りを信じていた。だが祈りなど腐る。」
嘲笑う闇に、ミラは銃を構える。
だが心の奥で、もうひとりの声が囁く。
「ミラ、もうやめよう。光が泣いてるよ。」
「黙って! あんたなんか、いなくなればいい!」
その叫びとともに、右光環《ライトアーク》が砕け散った。
ミラは“泣く自分”を捨て、光の半分を失う。

片翼となったヒーロー。
崩れ落ちる廃都の中で、彼女は闇に飲まれていく。
瓦礫の下、ひび割れた左光環《レフトアーク》だけが、かすかに脈打っていた。
――まるで、泣いているように。

この物語は、“泣けなくなった少女”が涙を取り戻すまでの叙事詩である。
ヒーローと怪人が交錯する世界で、光と闇の境界は“心”の中へと移り変わっていく。
やがて、幼き日のミラがたどり着く“園”――
そこは、もう一度“泣く”ことを許される、やさしくてふしぎな再生のゆりかごだった。
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