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第28話:火は灯り、影は揺れる

申し訳ございません。

予約投稿したつもりが出来ていませんでした。。。

お詫びとして本日もう1話投稿するよう今から執筆します。目標としては本日22時です!

荷はすべて、村の広場に並べられた。

塩、小麦粉、干し肉、米――いずれも、手に入らなくなりかけていたものばかりだった。


 


誰かが、そっと呟いた。


「……ありがてぇなあ」


 


その言葉が、冷たい空気をかすかに揺らす。


 


やがて炊き出しの準備が始まると、空気は一気に賑やかになった。

子どもたちが薪を集め、大人たちが寸胴鍋を運び出す。

煙が立ちのぼる頃には、炊ける米の匂いが、広場全体を優しく包んでいた。


 


「……久しぶりだな、こんな匂い」


 


義昌は、ぽつりと呟いた。

信じがたいほど穏やかな光景だった。

これが、たった一通の手紙から始まったとは、今でも思えない。


 


けれど――確かに届いたのだ。

想いも、米も、そして希望も。


 


夜が更けていく中で、広場には静かな笑い声がこだました。

竹筒の酒を回す者、焚き火のそばで子どもに歌を教える者。

小さな宴は、まるで遠い昔の祭りのように、ささやかであたたかかった。


 


「……火はついた。でも、油断はできねぇな」


 


後ろから、低くしわがれた声がした。

振り返れば、腕を組んだ権六が立っていた。


 


「皆が一斉に動いたのは確かだ。けどな、腹が満たされりゃ、また考えも変わる。

 殿、火は広がった。でも……まだ揺らいでる者もいる。そこを見誤っちゃならねぇ」


 


義昌は、ゆっくりと頷いた。

わかっている。


 


団結の火が灯った今こそ、

真に必要なのは――「秩序」と「次の手」だ。


 


「……炊き出しが終わったら、もう一度集めよう。

 次に備える。村の火を、絶やさぬようにな」


 


その声を、遠くで聞いていた者がいた。慎吾だ。


 


彼は詰所の影に身を隠すように立ち、目を伏せていた。

義昌の声が、まぶしかった。けれど、その背を――心のどこかで、追えない自分がいる。


 


村には米が届いた。

塩も、干し肉も、小麦粉も。

真里姫の名が記された木箱が、広場の隅に積まれている。


 


それでも――慎吾は、なお思っていた。


> 「こんなもんじゃ足りねぇ。

>  笑ってる奴らの背中に火がついたところで、

>  冬の前には、また崩れる。帳簿がそう言ってる」


 


妹の命は、まだ武田の手の中にある。

彼らに成果を示さなければ、次はない。

このまま何もせずにいたら、妹は――確実に殺される。


 


懐の内側、布に巻いて忍ばせた一冊。

あの男――仁兵衛に盗らせた、義昌の帳簿。


 


(これを届ける。これがあれば、武田は俺を捨てない)

(そして妹も、まだ……間に合う)


 


足は重かった。

誰かに見られている気がして、胸の奥がざらついた。


 


(……でも、仕方ねぇだろ)


 


誰かを救えるとしたら、それはもう“この方法”しかない。


 


慎吾は、そっと踵を返した。

炊き出しの残り香と、焚き火の明かりを背にして、村をあとにする。


 


それが――

すべての火種を焼き払う扉になるとも知らずに。


---



最後までお読みいただきありがとうございます!

この物語は毎週金曜日に更新をします!


コメントやブクマが何よりの励みになりますので、よければ一言でも感想をいただけたら嬉しいです!

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