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学園

 朝の修羅場を乗り切り、何とか取り繕った今、大広間の長ーーいテーブルで、ホテルの様な朝食を頂いております。


「レナルド様、、お目覚めになられて本当に良かった!!」

 また、ホロロっと泣きそうな執事さん。


「あの、体は大丈夫なんですが、記憶がちょっと曖昧でして、色々と教えて頂きたいのですが。」


 名前も此処の世界の事も、分からなければ暮らすのは難しい。言葉は日本語ではなさそうだけど、意思疎通出来てるから良いとして、服や建物から昔のヨーロッパっぽいけど、もしかしたら【魔法が使える】とか【冒険者】ならやってみたいかも…!!


「そんな…!!レナルド様!!まさか、旦那様や奥様の事は憶えていらっしゃいますよね!?」


 私が首を横に振ると驚愕の表情を浮かべ、

「そんな…小さな頃からお世話させて頂いておりました、私めのことも忘れてしまわれたのですか〜!?」


(ハ○ーポ○ターのド○ーかよッ!!)というツッコミを頭の中で入れつつ、しょんぼりする執事さんに質問を続ける。


「すみません。全く思い出せないのです。名前も、場所も。ここは何処ですか?」


 自分を忘れられて相当悲しいみたいで、泣きじゃくる執事さん。


「ひっく、、ひっく、、、分かりました。

 レナルド様は、旦那様のブルシュバル侯シルヴァン御長男、レナルド・オクレール様です。レナルド様のお母様はレナルド様がお生まれになった後、5年ほどでお亡くなりになられて、旦那様はその2年後今の奥様アルメル・アランブール様とご結婚されました。その後お生まれになったご令妹様は、」


 そこまで話したところで、バンッと広間の扉が開く。


「お兄様!目覚めてしまったのですね。あ~あ、ざ・ん・ね・んでなりませんわ!」


 ブロンドの髪に、くりりとした綺麗な瞳。お人形の様な可愛らしい女の子が部屋に入ってきた。この子が妹なのだろう。


 唯、めちゃくちゃ嫌われてるー!!


「お嬢様!なんてこと言うんですか!さぁ、ご挨拶を。」

 お付きのメイドさんが窘める。


「お、おはようございます。」

 私はぎこちなく挨拶する。


「なっ!どうなさったのです!?逆に気持ち悪いですわよ!」


 どうやら、相当いつもと違うらしい。唯、めっちゃ嫌われてるー!![2回目]

 この人(自分)何したらこんなに嫌われるんだよ!


「いつもは、“やぁおはよう。今日も可愛い妹よ”とか、“ご機嫌いかがかな?マイレディ”とか気色の悪い挨拶するじゃない!!」


 どんな挨拶だよ!!


「レナルド様は、落馬により少々記憶が曖昧なんだそうです。ご理解くださいませ、お嬢様。」

 執事さんが説明してくれる。


「ふ~ん。でも、嘘かもしれないわよ!また女の人に手を出して、咎められるのを回避する為に記憶が無いフリしてるんじゃないの?」


「そんな事を言うんではありません!!アメリー!」


 ブロンドの髪をゆるく巻き、広がりはあれど、柄は比較的地味なドレスを纏った、とても綺麗な女性が現れた。


 ちょっと、(前世の)お母さんに似てる…気がする。


「「奥様!」」


 メイドさんも執事さんも一斉に頭を下げる。

 この女性が妹アメリーのお母さんであり、この人(自分)の義理母って事だろう。


「レナルド。体調はいかがかしら?」


「はい。ご心配いただき、ありがとうございます。体は何とも無いのですが、記憶が少々曖昧でして、今皆さんにお聞きしていた所です。」


「そう、それは大変。でも、私の選んだ服を着ているのね。好みでは無いと思っていたのに。よく似合っているわ。」


 何だろう?少し言葉に棘があるような…。


「いえ。新しく仕立てて頂いたと聞きました。ありがとうございます。お、お母様。」


 出来るだけ失礼の無いようにしなければ!


「お母様ッ私も仕立てて頂きたいです〜!!」


 ムスッとした顔をして、話を聞いていたアメリーがお母様にねだる。


「はいはい、今度一緒に仕立てに行きましょうね!」

「やった〜!」


 仲睦まじい。いいなー懐かしい感じ。


 キュッと私を見たアメリーは

「ふんっ!!」


 兄妹仲は冷え切っている…。


「奥様、お時間が。」

 お付きの侍女が促す。

「そうね。では、お大事になさって。アメリーも行きますよ。」


 女性陣は颯爽と広間を去っていった。


 はぁ。緊張した〜!!

 執事さんを見ると、同じように緊張してたみたい。ホッとした表情を浮かべてる。


「あの、お名前伺っても良いですか?」

 執事さんと呼ぶには言い難いし、これからお世話になるだろうし。


「そうですね。わたくしは、ブノワ・バトンと申します。レナルド様からはブノワと呼んで頂いておりました。」


「ブノワ、さん。よろしくお願いいたします。」


「呼び捨てをして下さい!!レナルド様は、このオクレール家の跡継ぎなのですから、威厳を保って頂かねばなりません!!」


 そっか。跡継ぎ…。威厳ねぇ。


「分かりました、ブノワ。では、家以外の事を教えて下さい。」


「かしこまりました。ではお食事の後、書庫へ行きましょうか。」

「書庫、ですか?」

「はい。旦那様がお集めになられた書物は、歴史・地理・文学まで、国内外の情報は網羅出来るかと。」

「凄いですね!では、案内お願いします。」


 それは助かる!“文字が読めれば”だけど…。


 >>>>>>>


「此方でございます。」


 お城みたいな館内を歩き、連れて来てもらったのは、大きな茶色の扉の前。

 ギギィと重い音を立て、観音開きの扉を押し開けるブノワの後に続き部屋の中へ。


 鼻をくすぐる独特の香りは、何処の世界も同じみたいだ。

 ずらりと並ぶ本棚にはぎっしりと本が詰まっている。


「此方の本はこの国の歴史、此れは王都に関するものです。」

 ブノワは大まかに見繕ってくれた本を、部屋の中央にある机に置き、椅子を引いてくれる。


「ありがとうございます。」

「レナルド様、、、いえ、少しづつ慣れていただければよいのです。」

 また少し、しょんぼりするブノワ。

 何か悪い事したかな…?


 置かれた中から、一冊を手に取りパラパラッとめくる。

 文字は…読める!!良かった〜!!転生しても、この体が覚えたことは出来るってことかな…?


 ここで、ブノワに一つの疑問を投げかけてみる。頭おかしくなったと思われるか、それとも記憶障害で押し通せるか…!?


「あの、、魔法とかって使えたりしますか?」

「はい?」

「えっと、あの、ゆ、夢で見たから、ちょっと聞いてみただけです。」

「そうでしたか。使えたら良いですね〜」


 口振りから無いらしい。ちょっとがっかり。でもまぁ、魔物とか戦うリスクが無いって事だよね。


「此方は地図になります。」


 クルクルっと丸められた紙を机に広げるブノワ。


「ここが我が国ヴェルクードで、その南に位置する隣国ルミクレア、古くから女帝が治める国です。

 西側が海に面したブリエラメル、海洋貿易で栄えた国です。

 南東の隣国ソルモント、ここは山が多く鉱物資源で我が国と貿易をしております。

 国境は狭いですが、北東に位置するエトロワールここは観光地としても有名ですが、貧富の差が激しく、盗賊も多くいるとか。」


 ふ~ん。周りは国に囲まれているんだ。島国の日本とは違うよね。それにしても、ブノワ詳しい。。。


「こうしてレナルド様にお教えするのは、何年ぶりでしょうか…あんなに小さかったのに、大きくなられて…」

 またホロロっと泣きそう。小さい頃から面倒を見てきたんだろうな。


「他にも教えて頂けますか?ブノワ。この本は…?」


 比較的新しそうな一冊の本を手に取る。


「そちらは、レナルド様が通ってらっしゃる、サンクテール学園の入学説明本ですね~。懐かしいです。もうすぐ入学して1年ですかぁ。」

「学園とは?」

「学園の事もお忘れに!?」

「はい…。」


 申し訳なくなってくる…。この人(自分)の友達もいただろうに…。


「しょうがないです。落馬の衝撃が大きかったのでしょう。レナルド様も、じきに思い出されましょう。」

「そう、ですね……。(中身違う人でごめんなさい~)」


「学園の方には療養中と説明しております故、体調が整い次第、復学出来ますよ。」


「そうですか。もしかして同級生とか、分かりますか?」


「ええ、勿論!学園には、我が国の王太子でいらっしゃいます、アルフレッド・ヴェルディエ殿下、

 西の゙地メーヴェルトを治めるメーヴェルト侯爵の御子息ジル・セリーヌ様、

 南の国境近くの地リュネールを治めるリュネール伯爵の御子息レオナール・クレマン様、

 東に位置する山に囲まれた地を治めるヴァリルヴォン伯爵の御子息アベル・グリエット様、あと…」

「ま、待って下さい!!」


 この調子でカタカナいっぱい聞かされても、覚えらんない!!顔が分かると覚えやすいんだけど、写真…は無いよね。ん~っと…


「会うことはできますか?」

「では、学園に行かれてはいかがですか?」


 そうだよね!!もう行ったほうが早い!!


 にしても、貴族ばっかり行く学園だろうな〜。平民は行けない時代感なんだろうか。よくあるよね!平民の聖女様に転生して、王子とイチャコラするやつ。

 って、私男だった…。一度はやってみたかったな〜現実で出来ない事を異世界でやるのは、夢に見た光景だったのに…。


「連れて行ってくれますか?ブノワ。」

「かしこまりました。」


 >>>>>>>


「ここが…学園…」


 大きな鉄製の門がお出迎え。

 その奥にはヨーロピアンな庭園が広がっている。歩みを進めると、門と言うより建物の様な入り口にたどり着いた。


「ここからは、わたくしは入館が許可されておりませんので、レナルド様お一人でお進み下さい。」


 マジかよー!わかんない所に一人ぼっちは、一番怖いよー!!


「はい…。行ってきます…。」

「いってらっしゃいませ!!」


 意を決し大きく深呼吸して、建物を通り抜けると、


「すっご…」


 大きなお城の様な建物が立ち並んでいて、各棟に学生らしき姿が見える。


「本当に異世界だ…」


 見たこと無い。アニメが好きで色々見てきたけど、分からない。私の知らないアニメ…かな?ゲームや漫画なら、本当に知らない。どうしよう。攻略方法が分からないと、帰れないよね…。そもそも、帰る場所はあるのかな…。


「レナルド様よ!」

「えっ!!レナルド様お見えになったの?」

「きゃ〜!!レナルド様♡」


 なんだ、なんだ!?女の子達がキャーキャー言ってる。よく見れば、棟の上方の窓からも身を乗り出し、キャーキャー言ってる。


「手、振らねぇーのか?」

「久し振りだね!体大丈夫?」

「体治ったようだな。レナルドにしては珍しく2週間も寝込むなんてな。」


 …このイケメン達は誰!?

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