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累計がPV10,000を超えました。

これも偏に皆さんのおかげです。

いつもありがとう

そしてこれからもよろしく。


 ティターニア家の居間で、倉庫のリフォームやあれこれについてゾーイに相談する。


「竈? 材料さえありゃオラが作るばい」


「本当ですか? 助かります」


 テーブルの上に、昼間フィオに書いてもらった見取り図を広げる。


「竈はこの屋敷の厨房のと同じにしてもらえると助かります」


「数はどれくらい必要と?」


「後で増やせますか?」


「そりゃ別に構わんばい」


「ではとりあえずここに三つで」


 わたしは見取り図にペンで丸を描いて場所を指定する。後で増やせるのなら、今は必要な分だけにして時間を節約したい。


「了解した」


「それと、他にも作ってほしいものがあるんですけど」


「なんね?」


「荷物を運ぶ台車と、露店で使う屋台です」


「図面はあると?」


「いえ、まだですけど」


「急ぐんならオラが適当に作るばってん。そうでなかとなら竈ん後でよろしかと?」


「えっと、先に竈をお願いします。その間に図面を用意しますので」


 竈がなければ仕込みができない。ゾーイにはまず竈を作ってもらって、その間にフィオに台車と屋台の図面を引いてもらおう。


「そんならよか。竈はすぐにでも着手してよかか?」


「明日材料を手配しますので、明後日からお願いします」


「わかった」


 ゾーイと打ち合わせをして、この日は終了した。





 翌日。


 わたしは朝から商業区にいた。


 同行者はエッダとゾーイ。エッダはいつもの通り付き添いだが、ゾーイはこれから倉庫の改築資材を買い付けに行くので、アドバイスをもらうために同行してもらった。


「とりあえず竈の材料を買いに行きましょうか」


「それじゃ左官屋んところに行こう」


「左官屋ですか」


「そこなら竈ば作るとに必要な材料が手に入る」


「わかりました。では行きましょう」


 こうしてゾーイを先頭に、わたしたちは左官屋へと向かう。王都の商業区でいくつもの工房に出入りしていたゾーイは、土地勘に一日の長がある。実際彼女は迷うことなくすいすいと入り組んだ道を歩いた。


「着いたばい」


 ゾーイに案内された左官屋で、竈制作に必要なレンガやセメントを購入する。三つ分となると相当な量なので、倉庫の場所を伝えて明日朝一番に配達してもらうことにした。


「これで竈の件は良し」


「ついでに材木屋行くばい」


「図面もまだなのに、先に資材を買って大丈夫ですかね?」


「問題なか。どれくらいん資材が必要か、だいたい理解しいる。それに余ったとしたっちゃ大した問題やなかと」


「なるほど」


 彼女がそう言うのなら、大丈夫なのだろう。わたしは左官や大工仕事は門外漢なので、ゾーイを全面的に信頼することにした。


 次いで案内された材木屋でも、同じように資材を倉庫に配達してもらう段取りをつける。これで明日には竈制作に入れるし、その間に台車と屋台の図面が引ける。


 いつになく順調な流れに、わたしは浮足立ちそうになるのをぐっと堪える。


 好事魔多し。調子の良い時ほど、気を引き締めなければならない。


 そう言えば、ずっと何かを忘れているような……。


 だがわたしの懸念をよそに、倉庫の改築と台車や屋台の製作は順調に終わった。今日は近日中の開店を控え、竈の試運転を兼ねてコロッケと石鹸の仕込みにやって来た。


「さて、いっちょやってみますか」


 袖をまくって準備にかかるわたしに、フィオが問う。


「そう言えば、なんでコロッケの材料は同じ商業区の店に発注したんや? ティターニア家で都合してもらった方が手間が無いやろ」


 ティターニア家の台所を預かるドゥーイを通して食材を仕入れれば、確かに手間は減る。だがわたしはあえてそうしなかった。なぜそんな手間を、とフィオが疑問に思うのも当然だが、そこには考えた末の結論があるのだ。


「ティターニア家は貴族です。なので口に入るものも当然身分に合ったものになります。わたしたちが普段何気なく口にしている肉や野菜は、本当なら庶民では手に入らない高級なものなんですよ」


「そうか。材料が高級やと経費がかかるからか」


「それもありますが、コロッケにあんな高級な食材は必要ないんですよ。元々が庶民のお惣菜なんですから、その辺の市場で売ってる肉や野菜で充分なんです」


 言い方は悪いが、たかがコロッケである。高級な芋や肉を使えばさらに美味しくなるかもしれないが、普通の芋や肉でも十分美味しい。庶民の舌にはそれで充分というか、むしろチープなほど良いのだ。


 高級レストランの手の込んだクロケットより、商店街の肉屋のコロッケの方がわたしは好きだ。そして個人的には揚げたてもいいが、お弁当に入った冷めたコロッケも好きだ。


「つまり、どうやってもコロッケは美味しい」


「お、おう、なんかようわからんが、とにかく任せるわ……」


 軽く引いているフィオは置いといて、わたしはコロッケを作る。今回出た廃油と芋の皮と卵の殻は、次回石鹸を作るための材料となる。ゴミを利用しているので石鹸の材料費はほぼゼロだ。素晴らしい!


 ゾーイの作ってくれた竈は、実に使いやすかった。おかげでコロッケが大量にできたし、石鹸の材料も手に入った。これで明日の準備は整った。


「では明日いよいよ開店ですね」


「ついにか! 売って売って売りまくるで!」


 フィオは気合十分で、明日が待ちきれないといった感じだが、ふとテーブルに載った大量のコロッケを見て言う。


「ところで、このコロッケどないするんや? 今日売らへんのやったら、持って帰ってみんなで食べるんか?」


「いいえ、持って帰りませんよ」


「ほな捨てるんか? もったいない……」


「そんなことしませんよ。これは、もっと有効活用するんです」


「有効活用?」


 小首を傾げるフィオに向かって、わたしはにやりと笑って言う。


「宣伝をするのです」


次回更新は活動報告にて告知します。

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