表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

エターナルトライアングル

作者: 滝翔


室内に盗聴機器の設置オッケ

双眼鏡オッケ お夜食もオッケ

私の名前は稲熱練子いもちねりこ 一般主婦です

今日は待ちに待ったご褒美デー

今いるビルの屋上の向かい側の高層マンション

その一室に帰ってくる男性二人が私のターゲット


「来た来た来たぁ!!!! 今宵もアンビリーバブルでグレートフルな営みを期待してまぁす!!!!」


そう私は腐女子でストーカー

腐女子の母とストーカーだった父との間に産まれたサラブレッド

そしてターゲットは和馬かずまさんと あのマンションに住む年下の孝行たかゆきさん


『いやぁ呑んだ呑んだぁ…… あそこの居酒屋良かったなぁ?!』


『えぇ…… 先輩お先にお風呂どうぞ』


『おぉ悪いな…… 何なら一緒に入るか?』


『ハァ…… 仕方無いっすねぇ……』



「孝行キュン…… 人の言いなりにはならないって性格なのにぃ

和馬さんの前だとまるで人懐っこいドーベルマンだわ……♡

お風呂はさすがに覘けない…… あぁ二人狭い個室で一体何をしているのかしら……

テーブルの上にある赤蝮にはまだを手を付けていないわよ

どうか一回二回で果てて就寝しませんよう 神様お願いします……!!」



双眼鏡を両手で挟んでただ只管祈る時間が続く

焦らされるのは好きだけど それは結果的に功を奏す展開が約束されていればの前提

無駄な時間になるかはあの二人の今日の成り行き次第

本当なら私もその場で透明人間になり 上手く事が進むようアシストしたい


『ふぅ……』


「ふぅ?!!! ふうって行って出て来た?!!!

今日の竿役は和馬さんだったの?! って違うわ…… もう終わってしまったと言うの?!!!」


双眼鏡を持つ手がベトベトになっても汗を拭う暇など許されない

しかし杞憂は孝行キュンの言葉で解決するのか


『良いお風呂でしたね…… たまにしか入らないので気持ち良かったです』


『でもやっぱ狭かったなぁハハァ…… さすがにお前が上に乗ってもお湯が行き渡らなかっただろ?』


『えぇまぁ…… アレも背中に当たってたんで困りましたよ』



「してない……?! まだしてないわよね……?!!!」



グレーな会話が私を苦しめて悶えさせる

胸に手を当てて必死に動悸を抑えることでしかこの場をやり過ごせない

例えるなら一つ一つの所作に魅了させられる古典芸能の様


『ビール飲みますか先輩?』


『いや…… 孝行…… 今日は溜ってんだ 早速始めよう』



「さぁさぁやって参りましたレディースアンドジェントルメン!!!!

和馬さんが赤蝮ドリンクに手を付けましたよぉ?! 世の中の穢れた紳士淑女の皆さん!!!!

今宵はどんな男同士のバトルが展開されて行くのかぁ?!!!」



たまに屋上に人が来るも それどころじゃない私は二人に釘付け状態だ

和馬さん達はリビングから隣の寝室へ


「ハゥ~アゥ~ハゥ~~♡♡♡」


おっとここで寝室が暗くなってしまった

私は鞄から暗視スコープを双眼鏡に取り付ける

尚ここからの実況は そういう行為を〝メムメム〟と言いますのでご安心を


『疲れてるだろう……? お前が先でも良いんだぜ?』


『大丈夫です 今日は定時上がりだったので疲れません 来て下さい……』


『……じゃぁ遠慮無く』



「あぁ~~!!!! 今二人がドッキングしましたぁ~~!!!!

そのままランデブー飛行に移りますよNASA!!!?

キスをしながら互いにシャツを脱ぎ捨て合っています!!!! アメリカンです!!!!

いつも生真面目な和馬さんのあられもないお姿……♡

そんな逞しい肉体美を弱々しい手で包んでいる孝行キュン♡

これはもはや芸術よ芸術…… 私室の机の引き出しの中でジオラマを造り上げ

二人だけの国に閉じ込めて一生愛でていたい!!!!」



ここで私は刺激が強すぎる為 双眼鏡をタイルに置き

盗聴だけでイメージを掻き立てるクリエイションタイムへと移行する


『先輩…… 今日は何を焦ってるんですか……?』


『今は話し掛けんな……』


『酒も控えめで…… 心配しましたよ……』


『しゃべんなっつってんだろうが……』


ーー薔薇がぁ♪ 薔薇がぁ♪ 今咲き誇るぅ~~♪

永久とわに摘み取れない決意さだめと訊いて~~♪

重な~り合ぁうのもまたぁ♪ 見守っていく時ぃ~うぃうぃ♪


『はいはい…… じゃぁ今日は任せますよ』


『ハァハァ……』


こっちの感情の波が如何様に起伏しようとも二人のメムメムは止まらにゃい


『お前の眉…… 綺麗だよなぁ?』


『あぁハハ…… 今頃気付いたんですかぁ?』



「些細な所に気付ける和馬さん…… あぁ和馬さん これは手抜きを知らない超大作……

あの一室は現在地球上唯一の腐界 地球よ聞け!!!!

今あの場は地球の大地を綺麗にしている唯一の生き物達よ!!!!」



メムメムを聴きながら私は天を仰ぐ

思えば始まりは小学校の時に鉛筆の音を聞いたあの瞬間からだった

落した男子の鉛筆を拾って上げる隣の席のだんすぃ…… それがファーストインパクト

同時に視界では鉛筆の先端が床に衝突する現象 これがセカンドインパクト

二つの事象は瞬時に私の脳裏に最適解が表示されて素早く処理される

そう〝攻め〟か〝受け〟かの簡単な二択

この日を境に私はエンペラータ○ムが発現したのだ

万物全てのカップリング100%可能な特質能力


私が明後日・明明後日しあさって・刺さって潜って一週間の方角に行っていた一方その頃

和馬さんと孝行キュンはフィニッシュに入っていた


『もう限界です…… 稲熱いもち先輩……』


『っ……!!』


BL好きに於いて致命的な欠陥がある 私はクライマックスが見れないのだ

お仕置き回も途中でリタイア 理由は身体が弱っている事に起因し

発狂したい気持ちを許してはくれない だが


ーー味の無いポテチに調味料が染みております…… 今日もご馳走様でした……


高カロリーのオカズを食し

散らばってる全てを回収した私は自宅へと帰ろうとする

勿論夜道は危険なので 盗聴はやむなく断念

しようかと思えば気になる会話が入って


『今日はもう遅いですし…… 奥さん心配するんじゃぁ?』


『そうだな…… すまなかったな孝行…… 毎回突き合わせちまって』


『先輩が奥さん想いなのも知ってます 流産は辛いですよ……』


『子宮が弱って性交渉もクソも無くなっちまってなぁ……

そのショックで女性に対してのみEDとはよぉ 笑える……』


『……奥さんはその メンタル的に大丈夫ですか?』


『身体が弱ってるからなぁ あまり気分が昂ぶる様な事は避けて下さいって言われているよ

それの所為か家では随分大人しくなっちまったなぁ……』


『……また相手しますよ 奥さんには内緒でお願いしますね』


『いや…… 俺もそろそろ前を向かなきゃな 我慢するものは我慢しねぇとよ』


『……俺!!!! ……稲熱さんとは本気で考えてますから 本気で愛してます!!』


『孝行…… ありがとうなぁ』



「もう結婚しろよお前らぁ!!!!」



路上で一人叫ぶ一般主婦

先に家に到着して 余韻に浸りながらヨダレを垂らし 晩ご飯の用意をする


「ただいまぁ……」


「お帰りなさい和馬さん 今日も飲みに行ってたの?」


「あぁ…… でも今日は早めに帰って来たよ コレをお前に渡したくて」


「えっ……?」


渡されたのは花束とケーキ


「今日は結婚記念日だったろ? ……もしかして忘れてたのか?」


「そんな訳ないでしょ ありがとう和馬さん♡」


「今日は何処にも行かないから…… 流産の時みたいに一人にさせないぜ」


「……うん♪」



ーーがっつり結婚記念日忘れてましたぁぁぁ!!!!

二人のメムメムに他の全てが消去され 脳死して楽しんでましたぁ!!!!

そして出来る事なら花束やケーキよりも二人の録画ビデオ下さい……!!!!


切実に……



ご愛読ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ