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第7話

 村へ戻り、盗賊団の壊滅という結果をガルシウスを含めた村の人たちへと伝えると、歓声が沸き上がった。


「英雄様だ!」

「セラフィナ様、ありがとうございます!」


 何人もの人たちが私たちの前へとやってきては、頭を下げて感謝の言葉を述べていく。


 でもこれって私がギフトを探すためにやっただけなんだよね。ここまで感謝されると少しむず痒い。


 そんな最中だった。捕えられていた盗賊団の一人が叫び声をあげた。


「バカな!! ボスがやられただと!? じゃあ……俺たちはどうなるんだ!? 《《あのお方》》が……俺たちを殺しに来る……!!」


 たしか私は行く前に静謐せいひつの結界石を設置していったはず。その効果を超えて叫びだすなんて、『あのお方』とやらに相当な恐怖を感じているように思う。


 たしかに静謐せいひつの結界石は強制的に冷静な状態を保つが、それはある一定の感情まで。つまりその感情を超えた分があふれ出てしまっているのだ。


 これで感情を抑えているのだから、この盗賊たちには安心感を与えてやらなければ自殺さえしかねない気がする。ギフトを調べる前に殺されるのも、自殺されるのも困る。


 アジトにいた盗賊たちは保護したけど、こっちも同じように保護しないとまずそうだなぁ。でもここにいる盗賊たちは直接、村を襲っていた実行班でもあるし、私が処理するって言って村の人たちが納得するかな。


 私が村を見渡すと、ガルシウスが目に入った。そうだな、彼に聞くのがちょうどいいかもしれない。


「ガルシウス、聞いても良いか? あの盗賊たちについてだ」

「盗賊? 構わないがどうしたんだ? たしかに一部の盗賊はずいぶんと取り乱しているようだが……」

「ああ、アジトにいた盗賊たちが言っていたのだが、命を狙われているようなことを言っていたのだ」

「命を? どういうことだ?」

「奈落の瞳、という単語がよく出てきてな。なにか知っているか?」


 奈落の瞳、という単語がでるとガルシウスが顔をしかめた。


「知っているのか?」

「ああ、奈落の瞳と言うのは裏で暗躍あんやくしていると噂の闇の組織だ。しかしなぜこんな村を? もっと大きな街や、なんなら王都でもうわさされていると聞いたが」


 たしかに、わざわざ辺境の村で暗躍する意味が分からない。辺境の村にそれだけの価値があるのだろうか。


 困ったように眉を寄せているガルシウスを横目に村を見渡してみるが、どう頑張っても価値があるようには見えない。


「心当たりもない、か」

「そうだな。さすがに俺もこの辺境の村を襲う意味がよく分からないな。しかし奈落の瞳、か……」


 盗賊の被害が去ったというのにガルシウスの顔色が晴れない。それもたぶん奈落の瞳という組織のせいなんだろう。


 でも私も奈落の瞳がどういう組織なのか知らない以上、手の打ちようもない。そんなことを考えていると、意を決したようにガルシウスが顔をあげる。


「セラフィナさん……やっぱり俺たちだけじゃ不安だ。この村に残ってもらえないか?」


 村に残るのは無理だ。私の目的とかけ離れてしまう。そもそも村に残ってたら結局、家にいたころと変わらず引きこもりみたいなものじゃないか。


「残念だが、それはできない」

「……そう……か」


 ガルシウスが肩を落とす。だけど気が早い。この村に残っていては私の目的は達成できないが、ギフトを調べていないこの村を放置することもできない。


 まだ調べ切れていないギフトのためにも私はこの村を守らなきゃいけないのだ。私は空間をつなげた先の倉庫から一つのアーティファクトを取り出す。


「そう、気を落とすな、ガルシウス。私が居るのは無理だが、こいつを使っておこう」

「? なんだ、この苗は?」

「世界樹の庇護ひご。私の作ったアーティファクトの一つだ。これを使う」


 私は世界樹の庇護ひごを持って村の中心まで行き地面へと置いた。すると、苗はまたたく間に大木へと成長し、村全体を守るようにおおった。


 突如あらわれた大木に、村の人たちが口々に戸惑いの声をあげる。しかし大木の目の前にいる私を見るやいなや、戸惑いから一転、興味へと変わり集まってきた。


「す……すごい……! これはいったい……」


 ガルシウスが呟くので、


「魔物や自然災害、そして外部からの攻撃から守る結界を含んだ大木。それが世界樹の庇護ひごだ」

「な……なんだと……? そんなことができるのか?」


 大木の周りに集まってきた村の人たちも、枝葉からこぼれる青い光をみて感嘆の声を漏らしている。

 まるで水面を空に浮かべたような幻想的な景色が村を支配した。


「は、ははは……もう凄すぎてなにがなんだか分からないな」


 村人も、ガルシウスもみんな呆けてしまっているが、この大木にも弱点がある。これに頼りっきりというのは困るのだ。


「ガルシウス、呆けているんじゃない。この世界樹の庇護ひごは万能ではない。燃えたり、中から攻撃されると効果はなくなる。だからお前はこの大木を守れ」

「そう……か。そうなんだな。わかった、任せてくれ」


 そう言うとガルシウスは目に強い意志を灯し、私に力強く頷いた。これなら村は大丈夫だろう。


 あとは盗賊たちだ。


「この盗賊たちだが、ここにいると奈落の瞳とやらをおびき寄せかねないだろう。どうだ、ガルシウス。私に盗賊を預けてはくれないか?」

「わざわざ危険を背負うってのか? 本当に良いのか?」

「ああ、問題ない。気にするな」

「それなら俺たちの手にも余るだろうしお願いできるだろうか。なにからなにまで本当にすまないな」


 まあ全て私のギフトのためなんだけどね。だからそこまで感謝する必要はないと思うけど、言う必要もないので素直に感謝を受け取ることにした。


 ともあれ、これで村の方も安心だし、盗賊は私が保護できるし、これで心残りなく冒険者ギルドへ行ける。


 そうと決まればさっそく出発。私は一刻も早く魔道具を見たい。そしてギフトを鑑定しまくるのだ。


 盗賊たちが囚われていた檻をすべて魔法で浮かせると、周囲から驚きの声が上がった。私はそれを無視してルナとセシルに声をかける。


「さあ、ルナ、セシル。行くぞ」

「え? セラフィナさん本当に良いんですか?」

「せっかくセラフィナ様のすばらしさを説くまたとない機会なのに、もう行くのですか!?」


 私のすばらしさを説いてどうするつもりなんだ。ホムンクルスたちのように私を神格化する人たちを作ろうとしているのか?


 そんなことする必要は全くないんだけど。ともかくルナがそんな余計なことをやっているならさっさと行くに限る。


「うるさい、早く行くぞ。ルナがそういうことをするから早く行くんだ」

「そ、そんな……!」


 私が盗賊たちが囚われた檻を動かしながら、さっさと村の外の方へと歩いていくと残念そうな声を出しつつも、ルナがついてきた。


 村人たちも私たちが行ってしまうのを、かなり惜しんでいるようだが仕方ない。私には、目的があるんだ。すまない!


 群がる村人たちを押しのけ、私たちは村を出て、ギルドがある街へと向かうのだった。







 村から離れたところでクラリスを呼び、盗賊たちを家に送ってからすこし経ったころ。セシルがポツリと呟くように私に話しかけてきた。


「ところでセラフィナさん、本当によかったんでしょうか?」

「なにがだ?」

「いえ、あの村であれば皆さんセラフィナさんに感謝していましたし……ギフトを教えてくれと言えば喜んで教えてくれたんじゃないかなって」


 私は振り返ってセシルを下からジーっと睨みつける。

 なんでもっと早く言わないんだ。


「セラフィナさん? 勘違いしているかもしれませんが、私は本当に良いんですか? って聞いたんですよ? 私はちゃんと忠告しましたからね?」


 ……そう言えばそんな気もする。私のせいか、私がちゃんと聞いてなかったからか!?

 くそ、なんで気づかなかったんだ。そもそも結界で守る必要もなかったんじゃないか!?


「もう、本当にちゃんと聞かないと駄目ですよ? でもそんな抜けたところも可愛いですねっ!」


 セシルのその言葉に足取りが重くなるのを感じた。

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